背中で語る熱量と論理、プロフェッショナルの哲学 – 岩田量自 | Director Interview of XICO

May. 12. 2026

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2021年よりクリエイティブパートナーとしてヒーコに関わり始め、2022年に正式入社した岩田さん。現在は、プロデューサーとディレクターを兼務しながら、7名のチームを率いるプレイングマネージャーを務めています。

建築設計からフォトグラファーへとキャリアを重ねた岩田さんは、ヒーコにジョイン後、正解のない案件に向き合い続けます。

失敗から学び、次に活かす。「壁しかない」と語る環境の中で、どのように成長してきたのでしょうか。現場主義を貫く理由と、ヒーコで働くリアルをお聞きしました。

Ryoji Iwata

Director / Photographer / Planner

iPhoneで撮影することに魅了され写真の世界に入り込み、2017年にはApple社の“Shot on iPhone”キャンペーンに採用され世界25ヶ国のビルボード広告として掲載される。設計事務所での実務経験を経て、株式会社ヒーコに参画。
現在はプロデュース、プランニング、ディレクションなど領域横断でプロジェクトに携わり、企画から実装まで一貫したクリエイティブづくりを行っている。

建築からフォトグラファーへ。Instagramが導いた新たなキャリア

― キャリアのスタートは建築業界だったそうですね。

はい。佐賀県の山間部で育ち、山梨県にある公立大学へ進学。都会への憧れが強く、大学卒業後に早稲田大学芸術学校へ進学してモダニズム建築を学び、その後、建築設計事務所で働き始めました。

その事務所は、建築家である所長と私の二人だけという本当に小さな組織でした。所長は図面を手描きする世代だったため、CAD図面を作成するのはすべて私の役目です。2級建築士として図面を描く、役所での事前相談や各種申請の提出、クライアントや現場監督との打ち合わせ、現場監理。所長から直接フィードバックをもらいながら、二人三脚で建物を作り上げていく日々でした。

― そこから写真の世界へ進んだきっかけは?

建築事務所に勤める前から、iPhoneで写真を撮っていました。当時は上京したてで、知人とエアコンのない古い一軒家でシェアハウスし、日中はアルバイト、夜は学校で建築を学ぶ日々を過ごしていました。当然お金もないので、iPhoneを手に、東京の街をひたすら歩きながら写真を撮っていました。

転機となったのは2011年、Instagramに出会ったことです。スマートフォンでもきれいな写真が撮れることに感動したこと、撮影した写真をアップしたら反応を得られることに楽しさを感じてInstagramに写真をアップし続けていたら、おすすめユーザーに選ばれたことをきっかけにフォロワーが急増しました。

自分の作品が、アプリを介して多くの人に届く。このことに面白さを感じて、写真の方がより自分に向いているかもしれないと思い始めました。その後、知人に誘われて、写真関連の仕事をフリーランス的な立ち位置で手伝うようになり、仕事の軸足を、建築から写真へと移していきました。

ヒーコに入社したきっかけを教えてください。

コロナ禍に入ってフリーランスとしての仕事が激減し、時間だけはたくさんありました。今後の身の振り方を考えていたところ、共通の知人から代表の黒田を紹介されました。「ヒーコのメディアを手伝ってみない?」と声をかけられ、業務委託という形で関わり始めました。

最初はヒーコのInstagramアカウントの運用や、メディアのコンテンツ制作などを手伝っていました。「この人にインタビューしたら面白そう」「こういう切り口の記事ならバズるかもしれない」といった企画を立て、記事完成までのディレクションを行う仕事です。

一緒に仕事をする中で、黒田とは不思議と思考の波長が合うなと感じていました。彼が何を求めているのか、言葉にしなくてもあうんの呼吸でわかる瞬間がある。「いっそ、うちに来ない?」と誘われた時、迷いはありませんでした。こうして2022年1月、正式にヒーコにジョインしました。黒田とのシンパシー、そして「この人と一緒なら面白いことができる」という直感が、決め手でした。

担当した案件の一例 IPSA Content Creation 2025 Summer

Dir=Akiomi Kuroda(XICO),Ryoji Iwata(XICO),Hirokazu Masuya (XICO)

「壁しかない」環境で掴んだ成長

入社後、ギャップや困難を感じることはありましたか?

正直、「壁しかない」という感覚でした。ヒーコの仕事はパッケージ化されたものを売るのではなく、クライアントごとにオーダーメイドで解決策を提案するスタイルです。毎回が新しい挑戦であり、一筋縄ではいきません。

例えば、「新しいスマートフォンのカメラ機能を、どうすれば写真好きの層に響かせられるか?」というお題に対して、オンラインギャラリーの構築から、インフルエンサーのアサイン、SNSでの拡散施策まで、ゼロから設計図を描かなければなりません。建築の仕事で「図面を描く」ことには慣れていましたが、使う筋肉が全く違う。最初は黒田の背中を見ながら、見よう見まねで必死に食らいつくしかありませんでした。

あうんの呼吸で、黒田が何を求めているかが分かる瞬間はあるものの、レビューとフィードバックを日々受けるたびに黒田と自分のギャップが明確になり、自分の未熟さを思い知らされました。同時に、黒田からのフィードバックが確かに自分の糧になっていることを実感しているので、成長の度合いを確かめるためにも、レビューとフィードバックのラリーを日々続けています。

どのようにその壁を乗り越えてきたのですか?

ヒーコには、ミスをした時に報告書を作成する仕組みがあります。これは始末書のような懲罰的なものではなく、事象・経緯・原因・再発防止策を言語化し、チームで共有するためのものです。

例えば、スケジュールの確認漏れで進行が遅れたとします。その時、「ごめんなさい、次から気をつけます」で終わらせず、「なぜ確認が漏れたのか?」「ツールに問題があったのか?」「フローに欠陥があったのか?」「次はどういう仕組みにすれば防げるか?」を徹底的に深掘りします。

失敗をただの失敗で終わらせず、入れ墨のように心に刻んで糧にする。同じミスは二度としない。このサイクルを回し続けることでしか、成長はありません。厳しい環境ですが、私は「給食は残さず食べるまで帰れない」という昭和スタイルの教育を受けてきた世代なので(笑)、途中で投げ出さず、目の前の壁を一つ一つ「きっちり片付ける」マインドで乗り越えてきました。この精神的タフネスを持ち合わせていたことが、今に繋がっていると思います。

仕事のやりがいや、達成感を感じる瞬間は?

自分がプロデューサーとして、ヒーコよりも規模が大きい大手エージェンシーを競合相手に挑んだコンペを受注できた時は、大きな達成感がありました。勝因は、ヒーコならではの提案スタイルにあると思っています。予算と目的からプロデュースを設計し、クリエイティブディレクション、制作、そしてどう届けるかのメディアプランまでを一気通貫で担うのは、単なる制作会社にはできないアプローチです。

そのコンペでも、私たちは単に「良い写真や動画を作ります」という提案はしませんでした。まず徹底的に顧客の競合調査を行い、マーケティング視点からクライアントの課題を洗い出しました。「ターゲット層は今、SNSで何を見ているのか?」「競合他社はどういうアプローチで失敗しているのか?」そこまで掘り下げた上で、「だから、今回はこういうクリエイティブが必要なんです」というロジックを組み立てました。

普通の制作会社ではやらないレベルまで踏み込んで提案する。結果、私たちの熱量とロジックが評価され、受注につながりました。自分たちで考えた企画が認められ、実際に形になり、世に出て反響を呼ぶ。その過程すべてに関われるのが、この仕事の醍醐味です。

岩田さんは、入社からわずか数ヶ月で取締役に就任されています。

2022年1月に入社し、4月には取締役に就任しました。当時、前任の役員が急遽退職することになり、ヒーコは取締役設置会社として一定数の役員を置く必要がありました。そんな中、黒田から「期待しているから、やってみないか」と声をかけてもらったんです。

正直、入社してまだ数ヶ月。会社のことも完全には理解できていない状況でしたが、当時は社員数が4〜5人という小さな組織だったこともあり、私がそのポジションを引き受けることになりました。「自分なんかが務まるのか」という不安もありましたが、「やれるんだったら、やる」という覚悟で引き受けました。

ただし、取締役という肩書きはありますが、経営戦略を専業で担っているわけではありません。年に数回開かれる取締役会で会社の方向性を共有してもらい、それを現場にどう落とし込むかを考える役割です。現在は経営判断に関わりつつも、実務においてはマネージャーとして部下を持ち、現場で汗をかくプレイングマネージャーのスタイルをとっています。

取締役になったからといって、他の社員と業務内容が大きく変わるわけではありません。自分が一番現場を知り、一番手を動かし、実務で結果を出し続ける。その背中を見せることでしか、信頼は得られないと思っています。そのスタンスは、取締役になった今も変わりません。

担当した案件の一例 Welcome to Canon ID Photo Contest

P=Akiomi Kuroda(XICO),Dir=Ryoji Iwata(XICO),Yuki Otaka(XICO),PMO=Mizuki Aoi(XICO)
D=Tomona Ito(XICO),Ph=Etsuko Aimu,Takeru Kohara,Yuma Yamashita

マネジメントの哲学「背中で語る・きちんと見る」

ヒーコの社風を一言で表すと?

「ドライ&ウェット」ですね。仕事中はサバサバしていてプロフェッショナルですが、人間関係は良好でウェットな部分もあります。

例えば、強制的な飲み会は一切ありません。でも、写真好き同士で「あの美術館の展示、面白そうだから行こうよ」と声をかけ合ったり、月一回有志で「湯会」と称してサウナと食事に行ったりしています。「最近どう?」なんて他愛もない話をすることで、仕事上のコミュニケーションも円滑になります。

また、毎週実施している実務者定例会では、業務進捗だけでなく、「最近ハマっていること」や「週末に行った場所」などのプライベートなトピックも共有し、お互いの人となりを理解する時間を設けています。誰が何に興味を持っているかを知ることは、実はクリエイティブな発想を広げる上でも重要なんです。風通しが良く、相談しやすい環境が、ヒーコのクリエイティビティを支えていると感じています。

マネジメントにおいて大切にしていることは何ですか?

一つは、背中で語ること。口先だけで「もっと頑張れ」と指示するのではなく、自分がまず手を動かし手本を見せることで口だけのリーダーと思われないようにしています。リーダーが真剣に働く姿を見せるのが、最も説得力があると思っています。

もう一つは、きちんと見ること。クオーターごとの1on1などを通じて、本人が気づいていない長所や課題をフィードバックします。「君はこういう作業が得意だね」「この場面ではもっと前に出たほうがいい」といった具体的なフィードバックを心がけています。

指導においては、できないことよりもやらないことを是正するようにしています。スキル不足でできないなら教えればいいですが、やろうとしない姿勢はチームの士気に関わります。人格否定は決してせず、理詰めで「なぜやる必要があるのか」「どうすればできるようになるか」を伝え、成長を支援するスタンスです。

担当した案件の一例 Ulike Japan Web Visual shooting

Dir=Ryoji Iwata(XICO),Hirokazu Masuya (XICO),Mizuki Aoi(XICO),Ph=Takuya Uchiyama (SIGNO),Masashi Yamada,Ramon Onizawa
DESK=Tomona Ito,HM=Mio (SIGNO),HS=Tetsuya Yamakata (SIGNO),S=Hanae Uwajima (SIGNO)

どのような人と一緒に働きたいですか?

ずばり、「飲み会の幹事ができる人」です。これには明確な理由があります。飲み会の幹事という仕事には、ディレクションに必要な要素がすべて詰まっているからです。

参加者の日程調整(スケジュール管理)、店選び(リサーチと提案)、アレルギーや好き嫌いへの配慮(リスク管理とホスピタリティ)、予算管理(コスト意識)、当日の進行や二次会の手配(現場対応力)。これらを完璧にこなせる人は、間違いなく仕事もできます。

また、特定の分野だけでなく幅広いことに興味を持てる知的好奇心と、困難な状況でも逃げ出さない精神的タフネスも重要と考えます。クリエイティブな仕事は華やかに見えますが、実際は地味で泥臭い作業の連続です。時には想定外の事態やトラブルにも直面します。

そんな時、体育会系の部活で理不尽さを乗り越えてきた経験がある人は、やはり強いと感じます。「つらい、辞めたい」ではなく、「どうすれば乗り越えられるか」を思考できる。目を背けずに解決策を模索できる精神力と実行力がある方に来てほしいですね。

今後、岩田さんが挑戦したいことは何ですか?

案件の規模も数も大きくなってきた今、目指したいのは、社内外双方に目を向けたプロデュースとディレクションです。顧客の課題解決を手がけながら、社内の人材も育てていくことが、これからの自分のテーマだと見据えています。そのためにも、制作を担える人材の採用と育成が急務だと感じています。

取締役としては、事業単位で責任を持ち、計画から実行まで完結できる体制を作りたいと考えています。2025年にオフィスを移転し、現在ヒーコは拡大フェーズに入りました。これまでは少人数の「個」の力で戦ってきましたが、これからはチームとしての組織力が問われるフェーズです。ヒーコが次のステージへ進んでいくことに、今一番ワクワクしています。

最後に、仕事に向き合うスタンスを教えてください。

私は「モチベーション」で仕事をしないようにしています。「今日はやる気があるから頑張る」「今日は気分が乗らないからやらない」というように、感情の波に左右されていてはプロフェッショナルとは言えません。常に一定のパフォーマンスを出し続けることが、プロの条件だと思っているからです。

「ワクワクする」といった感情的な高揚感も大切ですが、それ以上に「昨日より今日、今日より明日、少しでも前に進んでいるか」という事実を大切にしたい。

日々の成長は1ミリ単位で、自分では気づかないほど微々たるものかもしれません。毎日毎日、壁にぶつかりながらも、逃げずに向き合い続ける。そうやって振り返ってみれば、いつの間にか1メートル進んでいる。失敗から学び、次に活かす。その地道な繰り返しこそが、最も確実な成長の道だと信じています。そんな「成長の継続」に価値を置いて、これからもヒーコと共に歩んでいきたいです。

担当した案件の一例 Starbucks Message Gift Visual Creative

Dir=Ryoji Iwata(XICO),Hirokazu Masuya (XICO),P=Takanori Okura (amana inc.),Ph=Yosuke Suzuki,PS=Toshiya Suzuki (Book inc.)
HS=Satomi Suzuki (S-14),MU=ANNA (S-14),MO=SHANE MAKOTO (BARK in STYLe),Mito Yokota (Light Management),motoko (BARK in STYLe)

by Ryoji Iwata

背中で語る熱量と論理、プロフェッショナルの哲学 – 岩田量自 | Director Interview of XICO

背中で語る熱量と論理、プロフェッショナルの哲学 – 岩田量自 | Director Interview of XICO

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