いま、ヒーコがみつめるもの、これまでとこれから

Sep. 18. 2024

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現在のクリエイティブプロダクション事業をスタートしてから、5年の節目を越えたヒーコに、2024年、大きな変化が訪れました。今回の記事では、代表の黒田明臣が、創業からこれまでの軌跡を振り返るとともにこれからのヒーコの展望を語っていきます。

ヒーコのはじまり

いまのヒーコが生まれる前の日常

振り返るほど大きな何かを成し遂げた会社ではありませんが、良い機会なのでこれまでのターニングポイントから時系列で振り返ってみますと、株式会社XICOが、法人として生まれたのはちょうど10年前の2014年でした。そこからメディアとしてのヒーコを2017年にスタートして、クリエイティブ制作事業を開始したのは2019年です。

ヒーコのターニングポイント

メディア立ち上げにあたって写真雑誌の学習

2014年、ヒーコの設立当時の事業は、写真など全く関係ありませんでした。

私は元々、フリーランスのソフトウェアエンジニアとして様々な企業へ出向しているようなキャリアでした。エンジニアとしての経験と個人事業主としての働き方を活かし、エンジニアを派遣する会社(SES事業)としてヒーコを立ち上げたのがはじまりです。

特定派遣の許認可を取得し、一人会社として従業員を雇わず、フリーランスのエンジニアとして活動しながら、私の友人でもあるソフトウェアエンジニアをいくつかの会社に派遣していたことがスタートです。

それとほぼ同時期に写真に対する興味関心が高まり、アマチュアフォトグラファーとして活動を始めました。

ありがたいことに2017年には、フォトグラファーとしての活動が仕事につながるようになってきたため、ウェブメディアで情報発信をするようになりました。コンテンツは、友人たちを募って寄稿していただいたりしていたのですが、これが今のヒーコの前身です。当時は、フリーランスのエンジニアとして活動しながらフォトグラファーやメディアの制作・運用もやって、〝三足のわらじ〟とか言っていましたね。正確にはSESもやっていたので、四足くらい履いていましたが(笑)。

2019年には、メディアのUU数が12万/月くらいまで伸びていました。おかげさまで、フォトグラファーとしての仕事も活況でしたから、事業として取り組むことを真剣に考え始めていた頃です。そこで、当時アシスタントをしてくれていたスタッフを従業員として雇い入れ、自分にも役員報酬を支払うようにし、組織的な経営をスタートしました。当時、フリーランスエンジニアとして活動していた株式会社ディー・エヌ・エーとの契約を終了し、株式会社アマナの新規事業開発に携わりながら、並行してヒーコの事業を伸ばしていきました。

フォトグラファー時代に開催していたセミナー

私自身、経営者としての才能も野心も低いと実感しており、いくつものわらじを履き続ける中で従業員を雇うことには当時かなりの抵抗がありました。とはいえ、組織化すると自ら決めた時、商業フォトグラファーとしてのキャリアは40歳までに閉じようと考えて、ヒーコでは極力経営に専念してきました。そもそも、株式会社アマナとヒーコの二事業を並行して進めながら、さらにフォトグラファーとしてのキャリアまで築いていける才能もバイタリティもないだろうと、自分自身を評価していたからです。

あれから5年が経ち、優秀な従業員に恵まれた今、会社として理想的な形がようやくできてきたところです。この5年間、私は株式会社アマナで新規事業立ち上げやマーケティング、営業組織や事業戦略などいくつかの部門のアドバイザーやビジネスデザインに携わらせてもらいました。長らくお世話になりましたが、2023年末に退職し、現在はヒーコの事業に専念しています。

ソーシャルメディアからマスメディアまで広範囲に活動

ヒーコはこれまで、ソーシャルメディアでの企業のマーケティング活動やブランディング活動を、コンテンツ提供という形で支援してきました。企業のブランドをより多くのユーザーやステークホルダーに向けて魅力的に伝えることが、私たちの役割です。

当初は主にソーシャルメディアにフォーカスしていましたが、意外なことに、マスメディアやアナログ媒体での制作需要も高く、より広範なメディアでのプロデュースやディレクションを担うようになっていました。いわゆるクロスセルで拡がっていったような状態です。ヒーコには営業組織がないので、そのような形で仕事の幅が広がっていくことに、感謝しかありませんでした。

結果として、クライアントにとってヒーコは単なる発注先ではなく、同社のデザイン部門のような立ち位置で、幅広い業務を依頼されることが増えています。例えば、SNSのブランディングをお任せいただきながら、新製品のキービジュアルやカタログを丸々ご相談いただいたり、イベントのプロデュースをご依頼いただいたりといった具合です。もちろん、その逆のパターンも見られます。

これは、もともと私がITベンチャーでソフトウェアエンジニアと言いながら「何でも屋」として新規事業開発などに携わる際に学んできたプロジェクトマネジメントと言われる領域が、広告業界におけるプロデュース & ディレクションと相性が良かったのだろうと考えています。事業化した2019年から、ディレクションに特化していくというビジョンを描いており、当初より、従業員も全員ディレクターというロールを名乗っていました。少人数ながらあらゆることをシステム化で効率化したため、達成実現できたビジョンです。

コーポレートアイデンティティの再定義

2024年、ヒーコはこれまでの細く長い歴史において、最も大きなリニューアルを実施することになりました。今の事業にシフトする以前のメディア事業を見直し、制作会社として破壊的創造を実施するため、ロゴのリニューアルを皮切りに、ヒーコの価値を再解釈する試みです。

現在、多くのステークホルダーの皆さまのおかげで、制作事業がかつてないほどに盛況ですが、現状に甘んじることなく、さらなるステップアップを目指すにあたり、一度、実態に合わせ、クリエイティブプロダクションとしての価値を高めることにフォーカスしました。

ヒーコを支える三つの骨子

今回、ロゴのリニューアルを中核に再定義したヒーコの骨子は、三つのプロセスに分解できます。

ここで皆さんにご紹介したいのが、ゴールデン・サークルと呼ばれるパターンです。2009年にTEDカンファレンスで行われたサイモン・シネックの「How Great Leaders Inspire Action」で提唱されたものです。優れたコミュニケーションプロセスの一つとして名高いゴールデン・サークルになぞらえて、「Why」「How」「What」の順に、三つのプロセスを表現してみましょう。

Why: なぜそれをするのか信じるもの、信念。 How: どのように実現するのか。 What: なにを行うのか。

ヒーコが信念とするもの

Why: As a creative company, our belief is in designing to communicate and engineering to create.

こちらは、MITメディアラボの教授にしてデザイナー、建築家として活動するネリ・オックスマンが提唱した「創造性のクエン酸回路」という図です。私たち生物の細胞の中でエネルギーを生み出しているサイクルになぞらえ、アート、サイエンス、デザイン、エンジニアリングと四つの象限にわけながら、それぞれがダイナミックに循環することでクリエイティビティにつながっている事を示した図として、ヒーコでも引用しています。

当社に限らず、様々なクリエイションに関わる領域でプロットできる概念だと思いますが、ヒーコの理解はこうです。

この図の上段にあたるアートやサイエンスは認知(Perception)の領域であり、情報的価値の高い領域。下段にあるデザインとエンジニアリングの象限は、それぞれ上段にある二つの認知的価値を実用化(Production)する領域です。エンジニアリングはサイエンスを実用化し、デザインはアート的思考の実用化と言えるでしょう。

また、サイエンスは自然的情報を知識へと変容し、エンジニアリングはそれらの知恵を礎に実用化できます。デザインはそれらを社会に伝えることができて、アートがそこから形成された社会を認知し、新たな関心をもって科学へと循環していく。このようなサイクルがあらゆる創造的活動において適用できると我々は考えています。

私たちが接するクリエイティブ領域においても、自己相似的にこのサイクルが循環し、入れ子構造のように存在していると考えています。この四つの象限を上下で分けると、記載にある通り、「プロダクション(制作)」と「パーセプション(定義)」という二つの関係が見えてきます。さらに左右で分けると、左側が「カルチャー(文化)」、右側が「ネイチャー(自然)」を表しています。アートは人間特有の文化的な創造物であり、サイエンスは物理法則などの自然界の事象を探求するものだとわかります。


ヒーコでは、この図における「デザイン」と「エンジニアリング」、つまりプロダクション部分を主な事業領域と定義しています。デザインとは設計であり、エンジニアリングとは社会実装です。
また、企業のマーケティングやブランディング活動は総じてコミュニケーション活動であり、私たちが日々提供しているものはクリエイション(写真、映像、文章)です。つまり、私たちは、クリエイティブプロダクションとしてコミュニケーションをデザインし、クリエイションを社会実装しているとも言えるわけです。これが、私たちが信じているクリエイティビティの価値です。

共に、創る

How we drive: Co-creation.

私たちが提供している価値は、主にコンテンツと呼ばれる写真、映像、文章といったものの総合的な組み合わせです。時にはイベントなどもありますが、基本的にはコンテンツプロダクションであると言ってよいでしょう。

ヒーコが特徴的な点は、クライアントの目線に立ってパートナー視点で課題を探り、仮説を立て、ゴールを設計することです。これをコ・クリエイション、共創としています。

一方で、ヒーコのクリエイティブリソースは内製化せずに、ファブレス経営というものを実践しています。ファブレス経営とは、自社に工場機能をもたないということですが、ヒーコでは、クリエイターの皆さまとのネットワークと、インハウスによる顧客目線のプロデュース & ディレクションを徹底することで、パートナーとのコ・クリエイションも実現しています。ヒーコは、四方八方がコ・クリエイションな会社なのです。

プロデュースとディレクションのプロフェッショナルへ

What we do: Experts in produce, direction and creation.

近年、IT業界ではPMOと呼ばれるプロジェクト・マネジメント・オフィスが重要視されています。同様に、コンサル企業のSIer化など、仮説設計から実行までを担うプロジェクトマネジメントの重要性も高まってきています。

広告業界においては主に、プロデュースやディレクションといった名詞が多種多様に変化しながら構造上は近しいミッションを担う事が多いというのが、私が広告やクリエイションの領域に参入して感じたことです。

総合広告代理店を筆頭に、取り扱う商材や掲出場所はそれぞれ異なりますが、最大公約数的に業務範囲を要素分解すると、セールス、プロデュース、ディレクション、クリエイションの四つで構成されているというのが私の持論です。

そこでヒーコは、制作会社として事業化を行った2019年より、まずはディレクションに重きをおいた経営を続けてきました。次第にプロデュースも成長し、社内のメソドロジーもプロデュースとディレクションに特化し、厳しい基準とワークフローを設けています。

プロダクションの上流工程や下流工程を問わず、私たちはクリエイティブを担当する部門として、クライアントと同じ視点で共に創造していく立場にあります。プロジェクトの根幹となるプロデュースやディレクションといった業務は、当社のプロパーであるエキスパートが遂行していくことがコアとなります。つまり、私たちの根本的な提供価値は、プロデュースとディレクションにあるのです。

よく問われるのは、なぜこの小さな規模で、多種多様なプロジェクトを、専門性を問わず越境してプロジェクトマネジメントできるのかということです。写真や映像やイベントなど様々なディレクションとクリエイションを取り扱うことができるのは、プロデュースとディレクションの強化によるものだと私たちは考えています。

とはいえ、まだまだ先も上もあるので修練を重ねるのみですが、目指していた一定の形にはようやくなったなという5年間でした。

あらたな展開

コーポレートロゴのリニューアル

ここまで長々とお話してきたヒーコのこれまでとこれからを集約したのが新たなコーポレートロゴです。従来のベジェ曲線による計算可能な印象から直線と曲線が混在する手触りの感のあるロゴが特徴です。

私たちが、これから10年、20年とヒーコの信じる価値を世の中に提供していくにあたっての思いが込められています。

詳しくはこちらのコーポレートロゴのリニューアルページを見ていただければと思います。

ビジネスとクリエイティビティが交差するウェブマガジンをローンチ

今回、長年運用してきたフォトグラファーやデザイナーを対象としたウェブメディア(xico.media)を閉鎖し、新たに、クリエイティブプロダクションとしてのウェブマガジンをローンチします。

写真、映像、文章。

ビジネスとクリエイティビティが交差するデジタルメディアです。

広告、仕事、道具、技術、そしてライフスタイルを軸に。多様なテーマを多様な視点から見つめることで、新たなインサイトのきっかけを提供します。

メディアビジネスとして新たに事業化するというよりは、ヒーコのアイデンティティを形にするため、制作会社におけるウェブマガジンの姿を模索できたらと思い、始めるメディアです。


企業がマーケティングやブランディングを実行するうえで活用できる情報の発信や、クリエイターにとって仕事のきっかけとなることをミッションとした、ヒーコの新事業です。もちろん、既存の記事で新たなウェブマガジンのコンセプトにシナジーがあるものは、新メディアにもシフトしています。

アーティストエージェンシーの開始

ヒーコは、これまでクリエイターギルドという名目で、共存共栄をコンセプトとしたメディチイズムというプロジェクトを継続してきました。年間200近くのプロジェクトをディレクションしていくなかで、つながりのあるクリエイターの皆さまとの仕事を形式知化したり最適化したりしていく場として、メディチイズムは今も機能しています。

今回ローンチする Co Agency とは、いわゆるクリエイターのエージェンシーであり、顧客折衝や管理部門支援などを業界最安値で行う取り組みです。会社のリソースを考慮すると誰でもウェルカムというわけにはいきませんが、当社と親和性の高いフォトグラファーやヘアスタイリスト、メイクアップアーティストやプロデューサー、そしてディレクターの方と排他的な契約を交わし、専属のエージェントとして関係を強化して、共存共栄を図る取り組みです。

ヒーコはこれまで、顧客折衝、進行管理のほか、実績をもとにしたマーケティング施策などを、管理部門がシステマティックに遂行してきました。このノウハウを活かし、クリエイターが質の高い仕事に集中できるような支援を実行することで、クライアントワークにおける高いパフォーマンスを発揮します。

未来への展望

このほか、直近では、スタジオやギャラリーのローンチを予定しています。これまで同様、大規模な成長を追求するのではなく、質の高いクリエイションの提供を最優先に考えています。

私たちがこのように考えているのは、私たちの活動が、様々なステークホルダーの成長の機会となることこそが、私たちの真のミッションだと考えているためです。今後も身の丈に合った成長を意識しながら誠実にクリエイティブな仕事を続け、私たち自身がワクワクできるような活動をしていきます。

そして、最終的に一人でも多くの方に「ヒーコと出会えて良かった」と感じてもらえる企業に成長していきたいと願っています。

これからのヒーコの成長を楽しみに見守っていただけると嬉しいです。

株式会社XICO 代表取締役
黒田明臣

by Akiomi Kuroda

いま、ヒーコがみつめるもの、これまでとこれから

Sep 18. 2024

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