清水貴栄 |CREATOR CANVAS

Oct. 22. 2026

Takaharu Shimizu

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「クリエイターキャンバス」は、ビジネス構造を可視化するフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」の手法に着想を得て生まれた、月刊『コマーシャル・フォト』との共同企画。クリエイターを俯瞰視点で見つめなおすことで、その人らしさを浮き彫りにするインタビュー特集です。

聞き手となるのは、フォトグラファーの酒井貴弘さん。酒井さんのインタビューを通じて、7つの視点から気鋭のクリエイターたちの活動や価値観を深掘りし、その独自性を浮かび上がらせることで、その人の魅力や使命を体系的に解き明かしていきます。

今回は、アートディレクター・映像作家・コラージュ作家としてマルチに活躍する、清水貴栄さんにインタビュー。テレビ東京系列の乳幼児向け子ども番組『シナぷしゅ』のアートディレクターであり、大人気キャラクター“ぷしゅぷしゅ”の生みの親でもある清水さんのクリエイターキャンバスに迫ります。

Takaharu Shimizu

Takaharu Shimizu

Art Director / Film Director

1987年長野県松本市生まれ。武蔵野美術大学を卒業後、2022年にデザインと映像の会社Let’s go inc を東京に設立。こども番組のデザインや、コラージュを使ったアニメーションミュージックビデオ、人形劇を取り入れたTVCMの映像演出など、人の気持ちが前向きになる作品づくりを得意とする。

Takahiro Sakai

Photographer


長野県出身、関東を拠点に活動。ソーシャルメディア時代ならではのアマチュア写真活動から2019年にフォトグラファーとして独立。人物写真を主軸に広告や漫画誌、カルチャー誌、写真集、映像など分断のない領域で活動の幅を広げている。SNSでのフォロワー数は、延べ18万に及ぶ。
近作は、NGT48・本間日向1st写真集「ずっと、会いたかった」、西垣匠1st写真集「匠-sho-」、私が撮りたかった女優展vol.3参加など。

1.活動 / アクティビティ

酒井

今回は「クリエイターキャンバス」の第10回です。お相手は、アートディレクター、映像ディレクターとして活躍する清水貴栄さん。なんと僕たち、同い年で、出身も同じ長野県松本市なんですよね。それもあって、ずっとお話してみたいと思っていたんです。

清水

僕も酒井さんのご活躍は以前から拝見していましたが、まさか同郷とは思いませんでした。すごくうれしいです! よろしくお願いします。

酒井

清水さんといえば、やはり我が子たちも大好きな子ども向け番組『シナぷしゅ』が思い浮かびますが……。この番組には、立ち上げ時点から関わっていらっしゃるんですよね。どのような経緯で、アートディレクターを担当することになったんですか?

Takaharu Shimizu
アートディレクターを務める子ども番組『シナぷしゅ』のぬいぐるみ、劇場版特典グッズ、著作『ぷしゅぷしゅ へんしんなん~だ?(あなあきしかけえほん)』(大泉書店) photo by Takahiro Sakai
清水

大学卒業後、クリエイティブカンパニーのDRAWING AND MANUALに入社して、10年ほど働いていたんですが、その時期にNHKのお仕事をたくさん請けていたんです。Eテレの教育番組のために映像もいくつかつくっていて、そのうちの一つに『おかあさんといっしょ』の『たいこムーン』という曲があるのですが、テレビ東京のプロデューサーの方がその映像を観てくださったそうで、「新しく『シナぷしゅ』という子ども向け番組を始めるので、アニメをつくってもらえませんか」と声をかけてもらいました。

はじめはアートディレクターではなくアニメーターとしての依頼だったのですが、まだ番組ロゴやキャラクターも決まっていない頃だったので、「アートディレクションもやらせてもらえませんか」と、僕のほうから提案させてもらいました。以来『シナぷしゅ』では、番組キャラクターの“ぷしゅぷしゅ”のデザインのほかに、番組のオープニングやエンディング、番組内のコーナー、絵本、映画など、さまざまな領域のクリエイティブを担当しています。

酒井

『シナぷしゅ』やEテレの影響で子ども向け作品のイメージが強いですが、TVCMや広告、アーティストのMVなど、幅広い分野で活動されていますよね。

清水

そうですね。とくに、今年は音楽関係の仕事が多かったかも。『クレヨンしんちゃん』の劇場版の主題歌にもなっていたTOMOOさんの『大人になったら』や、ジャズミュージシャンの鈴木瑶子さんの『Where I Belong』など、アーティストさんのアートワークや、長谷川白紙さんとハハとヘアピンズによる『蜜の主』をはじめ、MVも何本かつくらせてもらいました。

Takaharu Shimizu
監督を務めた、長谷川白紙、ハハとヘアピンズ『蜜の主』MV
酒井

さらに最近では、松本市観光アンバサダーとして、さまざまな活動をされているそうですね。

清水

松本市からお仕事をいただくことも多いですね。松本城保全を目的としたクラウドファンディングの返礼品となったレトルトカレー「26夜CURRY」のパッケージや、市内の宿泊施設「HOTEL NEW STATION」が「旧開智学校」をイメージして開発したレトルトハヤシライス「matsumoto KAICHI 884」のパッケージデザインを担当したり、冬の大型観光イベント「松本かっちん」のプロモーション用ポスターのデザインを任せてもらったり……。

酒井

同じ松本市出身のクリエイターとして、うらやましい限りですよ。地元からお仕事をもらえるだなんて!

清水

酒井さん、プロフィールに「長野県出身」としか書いていらっしゃらないでしょう。もっと松本市出身をアピールしたほうが、絶対にいいですよ!(笑)

酒井

たしかに……。ちなみに清水さんは、どういった経緯で松本市観光アンバサダーになられたんですか?

清水

監督として映画『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』をつくった翌年、「松本市文化芸術表彰」の奨励賞をいただいたんです。さらにその翌年、松本市が観光大使制度の見直しを行ったことによって「松本市観光アンバサダー」という制度が新たに生まれたのですが、おそらく賞をいただいたことがきっかけとなって、松本市から「観光アンバサダーになりませんか」と声をかけていただいて。そこからお仕事のお話もいただくようになりました。

Takaharu Shimizu
表紙デザインを担当した松本市民芸術館広報誌『Catwalk/ねこあるき』
酒井

清水さんって、ものすごく多才ですよね。グラフィックデザイン、キャラクターデザイン、アニメーションに実写映像、さらには映画監督まで!

清水

というより、おそらく僕は飽き性なんですよ。飽きっぽいから、ついいろいろなことに挑戦したくなってしまうんだと思います。

2. 専門性・特性 / スペシャリティ

Takaharu Shimizu
コラージュ作品 copyright Takaharu Shimizu
酒井

マルチに活動されている清水さんですが、肩書きはどうされているんですか?

清水

名刺には特定の肩書きはないので、会う人によって名乗り方を変えています。アートディレクターであったり、映像作家であったり、デザイナーであったり。

酒井

肩書きよりも、つくるもののほうを重視されているんですね。僕は、個人的に、清水さんの手がけられたものにはそれぞれ“清水さんらしさ”が宿っているように思うのですが、ご自身では意識されていますか?

清水

とくに意識しているわけではないのですが、自分らしさが出ているとするなら、それぞれの仕事において、自分なりにできることだけをやっているから、なのかもしれません。もともと、ものすごく器用な人間というわけではないので。

酒井

とくにデザイン職に多いと思うのですが、さまざまなクライアントのオーダーに答えられるよう、あえて自分の色をもたないようにしている、という方もいるじゃないですか。清水さんは、そういうタイプではないですよね。

清水

たしかに、そうですね。それで言うと、「これはおそらく、どうしても僕に頼みたいと思って声をかけてくれた案件じゃないな」と感じたときには、「ほかに適した方がいると思います」と断ってしまうこともあります。実際、酒井さんがおっしゃるように、どんなお仕事でも上手に対応できる、柔軟なタイプのクリエイターも世の中にはたくさんいるわけで、そういう方に依頼したほうが、お互いにとっていいだろうな、と。

酒井

それは僕もわかります。フォトグラファーにも、ジャンル問わず“なんでも撮れる”という器用なタイプがいますが、残念ながら僕はそうじゃないので、なるべく「酒井さんに頼みたい」と思われている仕事を優先して、そうでないお仕事はほかに適した方に振ったほうが、それぞれにとってメリットがあると思ってしまいます。

ちなみに、清水さんがクライアントワークにおいて、とくに大事にしていることは何ですか?

Takaharu Shimizu
デザインを担当した、発売40周年を迎えた栗山米菓のロングセラー商品「星たべよ」の新キャラクター「ほしほし」
清水

基本的には、声をかけてくださるクライアントの方のほうにも「こういうものをつくりたい」という要望があるわけですよね。お仕事である以上、そこは必ずクリアしなくてはならないけれど、その上で、自分の持ち味をどのぐらいのバランスで出していくか、ということは、常に考えていますね。

時代の雰囲気を鑑みて「こういうものが流行っているな」と意識したり、「この表現は古いかな」と調整したりすることも、時として必要になります。クライアントの要望、時代の流行り廃り、そして自分がそのとき興味のあることややりたいこと──。いつもそういった複合的な要素を配合して、うまく割りながらつくるようにしています。

酒井

自分がすごく良いと思う表現があったとしても、それを押し通すことはない、ということですか?

清水

そうですね。デザイン案を見せるときにも、2〜3パターン用意しておくことが多いし「これ、めちゃくちゃいいでしょう!」とアピールすることも、あまりないかなぁ。むしろ、いつも迷いながらつくっているし「この部分をどうするか、迷ってます」とか、クライアントの方にも正直に相談してしまっています。

酒井

“ぷしゅぷしゅ”をプロデューサーの方に提案した際にも、ほかに2つのパターンを用意されていたそうですね。

清水

そうそう。しかも、今のぷしゅぷしゅの案は、子ども向け番組としては“ハズした”ほうだったんですよ。ほかの2つの案のほうが、当てにいっていた、というか。

当初は、今のぷしゅぷしゅのトレードマークになっているほっぺもなくて、ちょっとオバケのようにも見える、シュールなキャラクターだったんです。そこに、プロデューサーのアイデアで、別の案に採用していた丸いほっぺをつけてみることになって、今の姿に落ち着きました。

清水貴栄
photo by Takahiro Sakai
酒井

そうだったんだ! 清水さんは、クライアントのアイデアも柔軟に受け入れながらものづくりをしているんですね。

清水

もちろんです。でも、例えばクライアントの方から「ここをこういうふうに変えてください」というリクエストをいただいたとして、その意図は必ず確認するようにしています。「なぜそうしたいのか」が把握できないと、そのあともエンドレスに修正が続く……ということになりかねませんからね。疑問が湧いたときにはなるべく打ち合わせをさせてもらい、先方の意見をじっくり聞くことにしています。その結果、いただいた修正案より、より良い修正案を提案できることもあります。

僕は武蔵野美術大学の非常勤講師もしているのですが、生徒たちにも「自分と異なる意見こそ聞いたほうがいい」と伝えています。授業のなかではあえてグループワークをしてもらっているのですが、若いクリエイター同士だから、だいたいの場合意見のぶつかり合いが起こるんですよ。でも授業の最後には、第三者への発表の機会を設けているので、その締め切りに向かってみんなで協力していかないといけない。だから、自分と合わない意見にもきちんと耳を傾けて、吸収しながらやっていくべきだ、と。

酒井

社会に出たあとって、そういうふうに、自分と価値観のちがう人とも仕事をしていくことになりますもんね。その予行練習ができるという意味でも、学生にとって、とてもいい授業だと思いますよ。

清水さんのそういった“他者を受け入れる”姿勢というのは、どのように培われたものなんですか?

清水

DRAWING AND MANUALに在籍していた頃、NHK Eテレの『Q〜こどものための哲学』という番組の制作に関わったんですが、番組を立ち上げる際に、哲学対話がどういうものなのかを学ぶため、ワークショップに参加しました。そこで、人の話を聞いて理解し、自分の価値観と相手の価値観をすり合わせていくということの大切さを、身をもって知ることができたんです。

それ以来、場の空気を乱すような人に出会っても「おっ、おもしろい人がいるな」と感じるようになって(笑)。「嫌だな」ではなく、「自分とちがう感覚をもっているんだな」と思えるようになりました。

酒井

素晴らしい! 僕もそういうマインドを持てるようになりたいなぁ。

3. 使命 / ミッション

Takaharu Shimizu
photo by Takahiro Sakai
酒井

今後、活動のなかで成し遂げたいと思うことや、目標などはありますか?

清水

独立する前、30歳を迎える頃につくった“未来年表”があるのですが、その内容を実現していきたいですね。ずいぶん前につくったものなので、今とは感覚がちがう部分もあるのですが。

酒井

(実際に未来年表を見せてもらいながら)「独立」、「第二子誕生」、「法人化する」……。結構、ここまでの年表は、実際に叶えてきていますね?

清水

そうなんですよ。で、現在の僕は39歳。39歳の表には「長野に別荘を買う」と書いてありますが、これはまだ実現できていないですね。松本に帰るたびに「何かいいところないですか」と人に聞いてみたりしているんですけど……。

酒井

この先の年表を見ていくと、「バンドを組む」「フジロックに出る」「朝ドラの主題歌になる」と、僕らの予期せぬ方向に向かっていって、最終的には50代で移住して終わっていますが(笑)。おもしろいなぁ。

清水

バンドは、演者側じゃなくて、プロデューサーとして端っこにいるだけでもいいんですが、実現したいんです!

あとは、やっぱり将来的には松本に戻りたい気持ちがありますね。本当は、東京と松本にそれぞれ拠点を持てたらいいんだけれど、なかなか難しくて。もし酒井さんも松本の拠点が欲しくなったら、一緒につくりましょうよ。

酒井

僕もずっと松本で何かやりたいな、と思っていたんですよ! 社交辞令でなく、本当に、一緒につくりたいです。

清水

本当ですか! うれしいなぁ。

Takaharu Shimizu
代表を務めるレッツゴー株式会社のオフィス兼スタジオ photo by Shinya Rachi
清水

僕、大学を卒業した後、本当は松本に戻ろうと思っていたんですよ。でも、松本には、東京のようなクリエイティブ系の会社は多くないので、どうしても難しくて。だから、ゆくゆくは、松本にクリエイティブ系の人が集まるような場をつくってみたいと思っているんです。そこまで資金があるわけではないし、会社のような大きなものをつくれるかはわからないけれど、人が集まって、何かが生まれるような場がつくれたら、と。

酒井

素晴らしいですね。僕も、自分たちの世代が成長過程でサブカルチャーを摂取していた「松本PARCO」という“場”がなくなったことで、今の若者が音楽やファッション、アートなどにふれる機会も少なくなってしまったのでは、と思っていて。せっかくこういう仕事をしているのだから、何か松本の若者たちに還元できる場をつくりたいと考えていました。アトリエなのか、カフェなのか、ショップなのか、どんな形がベストかはわからないけれど、清水さんと一緒なら、グッと可能性が広がるような気がします。

清水

この件については、また別の機会を設けて打ち合わせしましょう!

Takaharu Shimizu
アートワークを制作した関ゆうかの『alphabets』

4. 顧客 / クライアント

酒井

お仕事をいただくルートとしては、どのようなものが多いですか?

清水

ケースによってさまざまですね。例えば、先ほどお話したTOMOOさんの『大人になったら』のアートワークは、TOMOOさんのマネージャーさんからご連絡をいただいて決まったのですが、僕の作品をInstagramで見てくださったことがきっかけだったそうです。

鈴木瑶子さんの『Where I Belong』は、アートワークに使われている写真を撮影したフォトグラファーが、古くからお付き合いのある方で、彼がつなげてくれたお仕事でした。「アナログ感のあるデザインにしたい」というアイデアがアーティストご本人から出ていたので、コラージュが得意な僕のことを思い出して、指名してくれたようです。

それから、以前『コマーシャル・フォト』の別冊付録『CM・映像ディレクターズファイル』に掲載していただいたので、そこから連絡をいただいたこともありましたよ。

酒井

どこからどんな仕事が来るかはわからない、という感じなんですね。

5. 接点 / チャネル

酒井

例えば依頼が少し落ち着いているときなどに、自分から営業をしたり、仕事につながるような活動に力を入れることはありますか?

清水

ちょうど最近、仕事が落ち着いていたので、ホームページを整理しました。今までは、映像の仕事もグラフィックの仕事も、同じポートフォリオのページにバーッとまとめてしまっていたのですが、最近は『シナぷしゅ』を中心にキャラクターの仕事が増えていたので、新たにキャラクターだけのページを設けました。今後はよりキャラクターのお仕事も積極的に請けていきたいと思っているので、キャラクターづくりを“推している”ように見えたら、と思って。

Takaharu Shimizu
長谷川白紙、ハハとヘアピンズ『蜜の主』MVに登場するオリジナルキャラクター“しゅなうざ”と“柴子” photo by Takahiro Sakai

清水

あとは、昔一緒にお仕事した皆さんに、近況報告も兼ねて、メールを送ったりしました。僕のことを思い出していただくことで、また仕事につながっていくと思っているので。

実は、独立してから、こんなに仕事が落ち着いているのは久しぶりなんですよ。いつも何かの締め切りに追われていたから、突然生まれたこの余白をどう使おうかと思っているところです。

酒井

僕も、ちょうど最近仕事が落ち着いていたので、インディペンデントレーベルを立ち上げたり、本をつくって台湾まで売りに行ったり、個人的なプロジェクトを進めていました。そういったパーソナルワークや私生活に意識を向けるのって、余白が生まれない限りできないことじゃないですか?

清水

そう思います。「仕事が落ち着いてしまった。営業しないと!」と焦って営業をかけすぎると、結局は、先ほどお話したように“自分じゃなくてもいい仕事”まで請けることになって、疲弊してしまいますしね。だから、今は静かに自分のことに集中しながら、いただいたお仕事を真摯にやっていくべきなのかな、と思っています。

酒井

いいですね! きっとそこから新たに広がっていくお仕事もあるでしょうし、今後の展開が楽しみです。

6. 自己投資 / インベストメント

Takaharu Shimizu
photo by Takahiro Sakai
酒井

普段から意識して行っている自己投資はありますか?

清水

NHK Eテレの『未病息災を願います』という健康情報番組の制作にレギュラーで携わっているのですが、この番組からかなり影響を受けていまして、健康を意識するようになりました。近頃は、人間ドックを受けたり、歯医者で親知らずを抜いたり、身体のメンテナンスに力を入れています。

酒井

たしかに、僕たち、そろそろ身体が気になってくる年齢ですね。

清水

そうなんですよ。昨年、月刊誌『ランナーズ』を発行する株式会社アールビーズさんの50周年記念のキャラクターをつくらせてもらったのですが、それに感化されて、ランニング用品も一式買いました。僕は仕事柄、あまり身体を動かさないので、日常のルーティンになんとか運動を組み込まないと早死にしちゃうな、と思って。まあ、結局2〜3回しか走っていないんですけど……。

酒井

それはもったいない(笑)

Takaharu Shimizu
アールビーズ50周年コンセプトムービーより、清水さんがデザインしたキャラクター・ジョグジョグ
清水

僕がDRAWING AND MANUALにいた頃、会社がというより、業界自体がブラックだったので、若い頃は無茶な働き方をしていたんです。朝まで仕事をして、そのまま会社で少しだけ眠って、また仕事を始める、というような。さらに27歳で第一子が生まれると、朝まで仕事をしても、子どもを幼稚園へ送るために朝方家に帰って、また会社に戻って……という、めちゃくちゃに不健康な生活を送るようになってしまって。

だから、39歳の今も一応は元気にしているけれど、あの頃にどこかしらを壊してしまっていて、その影響が今にも出てくるのではないかという不安があり、健康に投資をしはじめたんです。

酒井

実は、僕も、若い頃にグラフィックの仕事をしていたんですよ。なので、当時の地獄のような働き方というのは、容易に想像ができます。

清水

えっ、そうだったんですか! いやぁ、あの時代は酷かったですよね。さすがに今はDRAWING AND MANUALの社員たちも健康的な働き方をしているはずですので、ご安心を。

……でも、「何か自己投資はしているか」という質問に、せっかくならもう少しかっこよく答えたかったです。これじゃあ“健康おじさん”みたいじゃないですか。

酒井

いいじゃないですか! 「こういうインプットを意識的にしています」というのではなく、自分の心身に集中しながらも、たくさんのクリエイティブを生み出しているわけですから、そのナチュラルさがすごくかっこいいと思いますよ。

清水

ありがとうございます。仕事の時間と家族の時間でいっぱいいっぱいというのもあって、あまり意識的に何かを吸収しにいくことはできていないのですが、インプットというと、それぞれのお仕事から受けている影響が大きいと思います。

『未病息災を願います』でいうと、次回が歯周病の回なんですが、歯周病になると脳に悪影響が出るらしくて。それで僕も、まずは親知らずを抜いて、歯を整えようと思ったんですよ。酒井さんは、親知らず、抜いてますか?

酒井

歯医者で診てもらっているけれど、とくに悪さをしていないみたいだから、そのまま放置しちゃってますねぇ。……って、清水さん、また健康の話に戻っちゃってますよ!(笑)

清水

本当だ! せっかく軌道修正してくれてたのに、嬉々として自分から話してしまった。もう、こうなったら仕方ないですね。僕は健康おじさんです(笑)

7. 幸福 / ハピネス

Takaharu Shimizu
コラージュ作品 copyright Takaharu Shimizu
酒井

最後に、清水さんにとっての幸福とは何か、教えてください。

清水

「自分にしかできないことで、自分以外の誰かをポジティブにすること」、それに尽きます。もともと僕が美術の道に進んだのも、自分の描いた絵が他者から評価された幼い頃の経験がきっかけになっているので、自分が自分のつくったものに対してどう思うかよりも、見た人がどう思うか、喜んでもらえるかどうかというのがもっとも重要で、それはこれからも変わらないと思います。

それで言うと『シナぷしゅ』は、僕の幸福の最たるもの。僕にも子どもが2人いて、一応子育ては経験していますから、子どもを育てるおもしろさや大変さは、すごくわかるんです。そしてその大変さの大きな部分は、どこの家庭でも共通して“睡眠不足”なんじゃないかと思っていて。子どもが『シナぷしゅ』を観ているあいだだけ、寝不足気味の親御さんたちがちょっとでも休めたり、自分のことができていたらいいな、と思いますし、子どもたちも番組からいろいろな良い刺激を受けてくれていたら、いいことずくめですよね。

酒井

たしかに、『シナぷしゅ』を観ている家庭は、パパもママも、子どもたちも、番組を愛していますよね。

Takaharu Shimizu
photo by Takahiro Sakai
清水

『シナぷしゅ』の一作目の映画をつくったとき、僕も劇場に足を運んで、上映されているのを観に行ったんです。そうしたら、ぷしゅぷしゅの服を身に纏った子どもたちが、どんどん劇場に入ってきて。僕のつくったキャラクターの服を着た子どもたちが、僕の監督した映画を観てくれる。「ものづくりにおいて、これ以上どんな幸福があるというんだろう」と感動してしまいました。本当にいい仕事に恵まれたな、と思います。

酒井

我が家もいつも『シナぷしゅ』に助けられていますし、もはや現代の子育てインフラのようになっているように感じます。清水さんの「誰かの役に立ちたい」という想いが、多くの人を幸福にしていると思いますよ。

清水

うれしいです、ありがとうございます! これからも仕事の出会いに感謝しながら、誰かをポジティブにできるようなものをつくっていきたいです。

Takaharu Shimizu
photo by Takahiro Sakai
Takaharu Shimizu

by Takaharu Shimizu

清水貴栄 |CREATOR CANVAS

清水貴栄 |CREATOR CANVAS

Oct 22. 2026

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