酒井貴弘 | Artist Interview by Co Agency

Oct. 01. 2024

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Oct. 21. 2024

ヒーコのアーティストエージェンシー『Co Agency』に新たに加わったアーティストに、所属を決めた理由や今後の展望についてインタビュー。今回はフォトグラファーとして多方面で活躍する酒井貴弘氏に話を伺いました。SNS時代ならではの写真活動を通して、広告やカルチャー誌など幅広い分野で才能を発揮している酒井氏。彼がどのような人物で、これからどのような未来を描いているのか、その魅力に迫ります。

Takahiro Sakai

Photographer

長野県出身、関東を拠点に活動。ソーシャルメディア時代ならではのアマチュア写真活動から2019年にフォトグラファーとして独立。人物写真を主軸に広告や漫画誌、カルチャー誌、写真集、映像など分断のない領域で活動の幅を広げている。SNSでのフォロワー数は、延べ18万に及ぶ。近作は、NGT48・本間日向1st写真集「ずっと、会いたかった」、西垣匠1st写真集「匠-sho-」、私が撮りたかった女優展vol.3参加など。2024年4月よりCo Agencyに所属。

ーー 写真を始めるまでに、フィリピンと韓国に住んでいたり、グラフィックデザインや映像制作会社に在籍したりしていたそうですが、写真以外の経験が今に活きていると感じることはありますか?

もともとは、グラフィックデザインの学校へ通うために上京しました。2年ぐらい勉強したけれど、結局デザインの仕事に就かず、海外に行ったり、映像の仕事をしたり、起業してみたり…。本当にいろいろなことをしていましたね。

自分は写真館から商業写真の世界に入ったので、アシスタント経験がなく、仕事をどう進めれば良いのか全然分かりませんでした。初めてのことが多かったんです。普通なら「怖いな、やれるのかな」と不安に感じるところですが、さまざまなことに無鉄砲に飛び込んできた経験があるので、新たなチャレンジへの抵抗感はありませんでした。

フリーランスになったタイミングでは長男もまだ生後半年くらいで、普通なら尻込みするような状態でも、20代でいろいろな経験をしていたから「まあ、やってみるか!」で行動できたんです。その行動力と度胸は、フリーランスになってからも活きているなと感じます。やってみないと分からないから、恐怖心よりも好奇心が勝るのかもしれませんね。チャレンジ精神というか、攻めの姿勢が身に付いたのだと思います。

あとは、グラフィックデザインや映像制作などのクリエイティブな現場にいた経験が、想像もしていなかったところで今に活きていると感じます。

ーー SNSで注目を集めてフリーランスとして独立、そこから以前のマネジメントオフィスへの所属も早かったように思います。明確なキャリアプランを描き始めたのはいつ頃ですか?

当時、明確なキャリアプランがあったわけではありません。ただ、“趣味で写真を撮ってるから、誰かに写真を見てほしい”とか“フォロワーを増やしたい”という目的ではなく、この先フリーランスとして独立できる道が見えるかもしれないという思いでSNSを始めました。

30代になってようやく、「これで頑張っていきたい」と思える仕事に出会えたんです。20代でいろいろチャレンジして、どれも続かなかった自分にとって、まさに背水の陣という感じです。それもあり、目標をもってSNSの更新を頑張りました。SNSを2年ほど続け、ある程度仕事につながるようになってきたタイミングでフリーランスになりました。

すぐにマネジメントオフィスに入ったのは、たまたま現場で知り合ったヘアメイクさんが前の事務所の代表で、一緒にやってみる?と誘われたのがきっかけです。SNSだけではなく、商業として身を成すためにはどうすればいいか、今後やりたいことにつなげるためにはどうしたらいいか、常にキャリアプランや目標を考えながら活動をしてきました。

ーー Instagramに毎日投稿していましたが、何か理由があったのでしょうか。

これだけは絶対やったほうが良いということを、やり続けられるかどうかが大事だと思っていました。それで、1日2投稿を必ず365日毎日やると決めて、結果的にそれを2年間続けました。

才能があったとしても、やらなかったら数字にはつながらない。やるかやらないかの差は大きいと思います。

そして、なぜ続けられたかというと、背水の陣だからです。もうこれしかない!と思っていましたから(笑)。

ーー 独立後は、カルチャー誌や漫画誌など、フォトグラファーとして王道の道を進む酒井さん。どんなきっかけがあったのでしょう

マンガ誌やグラビア、写真誌に進むきっかけとなった最初の仕事が、NGT48の本間日陽さんの写真集です。以前のマネジメント事務所の代表と出版社の方が知り合いで紹介してもらったのですが、作品を見せて挨拶をしたタイミングで偶然その企画があり、運よくご本人に選んでもらえました。それが一番大きかったですね。

同じ頃に「私が撮りたかった女優展」で山田杏奈さんを撮らせてもらい、同時期に2つの実績を作ることができて、そこから広がっていった感じです。

NGT48 本間日陽1st写真集「ずっと、会いたかった」
私が撮りたかった女優展vol.3 より

ーー その2つの仕事からつながって、今があるのですね。

そうですね。ただ、それはベースにSNSでの活動があったからだと思っています。本間日陽さんご自身が、僕のSNSを見て「こういう世界観で撮ってほしい」と選んでくれたんです。そういう意味では、SNSをコツコツやっていて良かったと思っています。

「私が撮りたかった女優展」は、プロデューサーに直接会って「やらせてください」とアピールしたのですが、そのときにもSNSの写真が決め手となったようですから。いろいろなご縁があるタイミングで、自分がしてきた活動がうまくはまっていった感じですね。

ーー その人の魅力を引き出すため、撮影時に意識していることはありますか?

本人がカメラの前で自分を自由に表現してくれたらいいな、と思って写真を撮っています。その為には本人が自分自身をカメラの前で肯定できることが重要だと思います。例えばスピーチをするとき、どんなに事前準備をしていても、会場の皆さんが怒った表情をしていたら話ができなくなりますよね。”肯定されてない”と思うと自分を表現するって難しいと思うんですよね。でも、その逆なら実力よりうまく話ができるかもしれない。写真も同じだと思っています。

ファンの方や事務所の方から「いつもと表情が違う」とか「この人の魅力を出してくれている」と言葉をいただくことがありますが、自分が大切にしている“写真を撮るときのポリシー“のようなものが、写真の魅力として現れているのだとしたら嬉しいなと思います。

例えば、透明感のある女優という方向で撮りたいと言われたら「それってどうやってやるんだろう?」「そもそもその表現ってその人に合っているのかな?」と考えます。その人に合わない表現はしたくないと思っているので、そこは結構気にしながらやっていますね。その人の今までのイメージと異なる雰囲気の写真を撮ることはありますが、その人に合わないとか、なんか違うよねっていう感覚は分かるので、そうならないように気を付けています。

ーー マスメディアとSNSには隔たりが多いと聞きますが、今もソーシャルメディアのプロジェクトなどへ参加していますか?

頻度は少ないですが、SNSの活動でつながっている仕事は受けていますし、最近は講演会やセミナーにも参加するようにしています。

一時期は、写真教室やトークショーもしていたのですが、商業の世界で撮影一本でやっているという状況を作りたかったので、2年ほど前に”SNSの活動をしている人”に見えるような仕事はすべてやめてみたんです。自分への覚悟という意味もあり、写真を撮る仕事だけに専念していました。

スペーシアX キービジュアル

おかげで最近は、SNSに関係のない活動が増えてきていて、逆に「SNSのフォロワーが多かったんですね」と言われるようになりました。

今は、SNSから仕事につながる場合もあるので、以前より隔たりはなくなってきている気がしています。うまくやれるなら両方やったほうが絶対に良いと思います。

活動や写真、人柄もそうですけど、商業と隔たりを感じさせないくらいに自分を磨いて、相乗効果が生まれたらいいですね。今後は、商業写真を撮ることに加えて、写真展やSNSで自身の活動の発信をもっと頑張っていきたいと考えています。

ーー 酒井さんのフォロワーは海外の方も多いですが、そのような強みはグローバルな仕事にもつながっていますか?また、今後の展望の展望があったら聞かせてください。

だいたい半分以上は、海外のフォロワーさんです。特に中国が多いですね。今度、中国でセミナーをしますが、それもInstagramのDMをもらったことがきっかけです。SNSには、まだまだ可能性があるなと思っています。

今後は、海外での撮影や写真展などグローバルな仕事を増やしていきたいです。

写真展「青の欠片」より

ーー フリーランスになって面倒だなと感じている業務はありますか?

難しいのは、時間管理です。フリーランスは、仕事のスケジュールや家族との時間が自分でコントロールできるだけに、そのバランスが難しいと感じています。

あとは、仕事の場所でしょうか。今はアトリエを借りていますが、自宅だと子どもの声がする等の問題はありますよね。それと、何かあったときに相談ができ、同じ目標をもつ仲間がいないと大変だろうなと思います。

そういう意味では、マネジメント事務所に入って良かったなと思っています。請求や交渉も面倒くさいですよね(笑)。

ーー マネジメント契約にメリットを感じられているわけですね。今回、ヒーコに所属を決めた理由は?

ヒーコはベースが広告業界ということもあり、そこにもっと踏み込んでいきたいと思っていたのがひとつめの理由です。互いに相乗効果があると良いなと思っています。

もうひとつは、ヒーコがマネジメントオフィスを立ち上げる中で、僕も中の人という立ち位置で話ながら一緒に進めてきたので、ゼロから作る楽しさや可能性を感じました。

今計画している新しいオフィスのギャラリー、広告業界への影響、今後つながっていくフォトグラファーやクリエイターとの掛け合わせとか、いろいろなことが広がるなと。

未来へのワクワク感があって一緒に作りたいと思いました。アイディアを出すのは好きですが、そこから構築して実践するプロデューサー的な作業をするのは苦手なので、一番いい感じにかかわらせてもらっているなと思っています。

「Co Agency」という事務所の名前の通り、コ・クリエイティブを打ち出しているのも新しくて良いですよね。共創は大事だし、フリーランスは個になりやすいので、自分以外と掛け算ができる環境は理想です。その理念に共感したというか、自分も一緒にやりたいと思いました。

メディアのほうも、僕がインタビューに行ったり、写真を撮らせてもらったりと、チャレンジできることがあるようなのでこれからますます楽しみです。そこからさらにリアルのギャラリーにつなげられたら良いですよね。

ワクワクする人生にしていきたいので、これからヒーコとの掛け算でもっと面白いことしていきたいなと思っています。

by Takahiro Sakai

酒井貴弘 | Artist Interview by Co Agency

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