加賀翔 |CREATOR CANVAS

Oct. 09. 2025

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「クリエイターキャンバス」は、ビジネス構造を可視化するフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」の手法に着想を得て生まれた、月刊『コマーシャル・フォト』との共同企画。クリエイターを俯瞰視点でみつめなおすことで、その人らしさを浮き彫りにする新しいインタビュー特集です。

7つの視点から、気鋭のクリエイターたちの活動や価値観を深掘りし、その独自性を浮かび上がらせることで、その人の魅力や使命を体系的に解き明かしていきます。

今回は、お笑いコンビ「かが屋」の加賀翔さんにインタビュー。お笑い芸人として、ライブ、ラジオ、TV番組などで活躍するかたわら、フォトグラファーとしても注目を集める加賀さんのクリエイターキャンバスに迫ります。

Sho Kaga

Comedian / Photographer

1993年生まれ、岡山県出身。マセキ芸能社所属。2015年より賀屋壮也とともにお笑いコンビ「かが屋」を結成。2019年・2022年に「キングオブコント」決勝進出。写真撮影が趣味・特技であり、2024年には初の写真集「まあるいふたり」を発売。2025年6月には、歌手・中森明菜を撮影した写真展「43rd ANNIVERSARY AKINA NAKAMORI PHOTO EXHIBITION」を開催した。

Takahiro Sakai

Photographer

長野県出身、関東を拠点に活動。ソーシャルメディア時代ならではのアマチュア写真活動から2019年にフォトグラファーとして独立。人物写真を主軸に広告や漫画誌、カルチャー誌、写真集、映像など分断のない領域で活動の幅を広げている。SNSでのフォロワー数は、延べ18万に及ぶ。近作は、NGT48・本間日向1st写真集「ずっと、会いたかった」、西垣匠1st写真集「匠-sho-」、私が撮りたかった女優展vol.3参加など。2024年4月よりCo Agencyに所属。

1.活動 / アクティビティ

酒井

今回は「クリエイターキャンバス」の第5回です。まさか、お笑い芸人の加賀さんにお話伺えるとは! お笑いの話、写真の話、どちらもすごく興味があります。

加賀

僕も酒井さんとお話してみたかったので、うれしいです! よろしくお願いします。

酒井

加賀さんは、お笑い芸人としては、今年で10周年だとか。

加賀

そうなんです。でも、実はカメラ歴も同じく10年なんですよ。初めてカメラを買ったのがちょうど10年前で。

酒井

そうだったんですか。写真はどのような経緯で始められたんですか?

加賀

写真に関しては、仕事にしたいと考えていたわけではなくて、単なる趣味で始めたんですよ。上京してからコンビニでアルバイトしていたんですが、そこの店長に競馬に誘われたことがあって。僕が「ギャンブルとか興味ないんで……」と言ったら、店長は「カメラで馬を撮るのも楽しいぞ!」と言って、Canonの一眼レフを貸してくれたんです。それで勧められるがままに撮ってみたら、ほんとうに楽しくて。「写真撮るの好きかも」って思ったんです。

その後、すぐにカメラのキタムラに行って、とりあえずAPS-C機を買ってみようと思ったんですが、店員さんに「どうせAPS-C機を買ったら欲しくなると思うから、最初からフルサイズを買った方がいい」と勧められて、NikonのD800を買いました。レンズやPCもまとめて購入したので、結局50万円くらいになって……。泣きべそかきながらローンを組みました(笑)

酒井

アルバイト時代に50万円のローンって、結構な重荷ですよね……。でも、結果としては、アルバイト先の店長がカメラと出合わせてくれたわけだ。

加賀

そうなんです。しかも、相方の賀屋と僕を出会わせてくれたのもその店長で。いろいろなきっかけをくれた方ですね。

酒井

すごい! 素敵な出会いですね。

加賀

それから、「せっかくカメラを買ったんだから、たくさん持ち歩こう」と思って、365日、毎日カメラを持ち歩くようになりました。その後少しずつ、ライブの撮影やチラシづくりなどを頼まれるようになって、お笑い芸人としてのキャラクター性が今ひとつ確立しなかった自分が「カメラ芸人」として認知されるようになっていったんですけど。

酒井

バラエティ番組の「ラヴィット!」では、「かが屋の絵になる写真旅」というコーナーも持たれていますよね。

加賀

「ラヴィット!」で僕の写真をおもしろがってもらえるようになったのも、僕がお笑い芸人としての路線に悩んでいるとき、番組にカメラを持ち込んでみたのがきっかけなんですよ。先輩のきしたかのさんを撮った写真が「見たことのない芸」として評価してもらえて(笑)。さらにその後、放送を観てくださっていた歌手の中森明菜さんから「デビュー45周年記念の写真を加賀さんに撮って欲しい」と直々にご依頼いただいて、ほんとうに驚きましたし、感激しましたね。

酒井

それだけ加賀さんの写真は魅力的なんですよね。SNSを見ていると、加賀さんはめきめきと写真の腕を上げられていて、僕も「すごいなあ」と感心させられるというか。

加賀

ええっ、うれしい! 僕、写真というものがほんとうに好きなので、写真家の方や写真好きの方には嫌われたくないという気持ちがあるんです(笑)。だから酒井さんにそう言っていただけるのは、すごくうれしいですね。

でも僕自身は、自分の技術よりも「自分の立ち位置」に価値があると思っていて。まわりにお笑い芸人がたくさんいる僕だからこそ撮れるもの、というのに意味があると思っているんです。この立ち位置にいる僕だから捉えられるものを、できるだけスピーディーにSNSで発信することを大切にしているので、そこには根性を感じてもらえたらと思っています。

吉住さん、ルシファー吉岡さん(加賀さん撮影)
酒井

写真って、極端にいえば、シャッターを押せば誰でも撮れるものじゃないですか。だからこそ、僕も視点や立場が大事だと思っています。加賀さんの写真は、芸人さんがまわりにいるという環境はもちろん、「狙う」瞬間がユニークなのもおもしろくて、それが唯一無二の魅力になっているんじゃないかな。

現在は「お笑い」でも「写真」でも精力的に活動されてますが、今後の展望というか、「こういう仕事をしたい」という理想のようなものはありますか?

加賀

僕って、同業者に対する嫉妬心のようなものが薄いというか、誰かのいいネタやいい写真を見ても「すごい!」「めちゃくちゃいいな!」って、純粋に感動しちゃうんですよ。受け手のマインドが強いというか、まるでお客さんみたいに楽しんでしまう。昔はそんな自分に対して「カリスマ性がないな」と思ったりしていたんですけど、今は「このすごい人たちのことを、いちばん近くで観続けていたい」と思っています。そのためには、自分もお笑いや写真をがんばるしかないですからね。

あとは、僕は今32歳で、20代の若手とも40代の中堅の方とも一緒に活動しているような立場なんですけど。今、30代の芸人だからこそできることがあると思っていて、向こう10年はそれを大切にしたいと思っています。具体的にいえば、先輩たちの背中を見ながら、下の世代の変化や成長を見守っていくこと。もちろん、自分が表に立つことも目的ですけど、僕を媒介してほかの世代を見てもらえるような、そういう活動をしていきたいと思っています。

酒井

なんていうか、加賀さんってカメラの化身のようですね(笑)。 自分を媒介してほかの芸人さんたちを映し出そうという考え方は、カメラそのものみたいですよ。かっこいいなあ。

2. 専門性・特性 / スペシャリティ

「きしたかの」(加賀さん撮影)
酒井

俳優さんでカメラをやっているという方はよくお見かけしますけど、お笑い芸人さんで公言されている方は、あまり多くない印象です。加賀さんは、やはりそれをご自身ならではの専門性として、意識して押し出しているんでしょうか?

加賀

そうですね。でも、実は僕が最初にD800を買ったのは、小籔千豊さんの影響もあるんですよ。僕がカメラを始めるより前に、「アメトーーク!」の「カメラかじってる芸人」という回で、小藪さんが愛用機として紹介していて、そのときの小藪さんの本気度がかっこよくて。

だから僕は「いつか小藪さんのように、表立って『カメラ好き』と言えるようになるレベルまでがんばろう」と思ったんです。「そして小藪さんに会えたときには、憧れていたことを伝えよう」と。

酒井

そうだったんですね。もう加賀さんのカメラ好きもかなりのレベルですけど、小藪さんとはお話できたんですか?

加賀

つい最近、ご挨拶できて。そのときに伝えることができました。うれしかったですね。

酒井

おお、すごい! いい話だ。

加賀

カメラマンとしての特性というと、やっぱり芸人を撮っていることだと思うんですけど。お世話になっているフォトグラファーの方に「もっと抽象的なものは撮らないんですか?」と言われて、「たしかに僕は『そこに芸人がいて、加賀は写真を撮っている』というような文脈の写真ばかり撮っている」と、ちょっと立ち止まったことがあったんです。数学的な魅力がないっていうのかな……。

だから、今年に入ってからは、風景だとかなんでもない日常の写真だとか、そういうものも撮り溜めるようになったんですけど、ポートレートとはぜんぜん次元が違うというか、なかなか難しいんですよね。それが今、カメラマンの自分の「壁」として立ちはだかっている感じがします。

酒井

その悩み、僕もわかります。僕もメインはポートレートですが、加賀さんと同じように、今年に入ってから、風景やなんでもないところも撮るようになったんですよ。僕は反対に「酒井さんの写真には文学的でなく、数学的な美しさがあるね」と言われたことがあって、それをマイナスに受け取ってしまったことがきっかけだったんですけど。

そのときの僕は実際に、計算しながら写真を撮っていたんですよね。人を撮っているんだけど、人そのものを撮っているわけではなくて、撮りたい絵に人を当て込んでしまっていた。そのことに思い至ってから「モデルさんと自分のあいだに作品がある」という撮り方にシフトしたら、途端に、ピントも合っていないような抽象的な写真も撮れるようになったんです。だから、そういうふうに立ち止まるときが、またひとつ写真が変化するタイミングなんじゃないかな、と思いますね。

加賀

そう言ってもらえると、めちゃくちゃ励みになります。僕はまだ答えを出せていないけど、日常のいろんなものをとにかくいっぱい撮って、あとで並べて見返したときに、何か新たな発見に出合えるんじゃないかと期待してます。

3. 使命 / ミッション

酒井

お笑いや写真で表現をしたいこととか、自分のなかでテーマにしていることはありますか?

加賀

あえていうなら「視覚的」なものを大切にすることですかね。

酒井

というと?

加賀

僕、物理的な意味で目がいいんですけど、父親がすごく怖い人だったこともあって、人の顔色を伺うのもクセになってるんです。臆病ゆえの目の良さがあるんですね。だから、それを最大限に活かしながらおもしろいものをつくっていきたいというのは、自分のなかでテーマになっているかもしれません。たとえば、お笑いのネタでいうと、ちょっと気まずい表情をつくったりだとか、視覚的なおもしろさはかなり意識していますね。

酒井

ネタづくりは、主に加賀さんがされているんですよね?

加賀

そうです。賀屋に「2人でつくってることにして」って頼まれて、そういうことにしている時期もありましたけど。

「かが屋」・賀屋壮也さん(加賀さん撮影)
酒井

(笑)。賀屋さんからは、ネタについて「もっとこうしたい」と意見されることはないんですか?

加賀

あんまりないですね。でも、賀屋ってわかりやすいんですよ。僕が持ってきたネタがおもしろくなかったら、あからさまに不機嫌になるんで(笑)。でも僕はそこで「いや、これはおもしろいだろ!」と意地になるタイプではないので、そうなったらどんどん新しいネタをつくっちゃいますね。

酒井

加賀さんって、写真を撮る量もすごいじゃないですか。ストイックですよね。

加賀

千本ノックしちゃうというか、量産型なんですよね。なんというか、完璧を目指すのではなくて、「ここまで持ってこれればいいだろう」という合格ラインを自分で引いて、そこで満足してしまっている部分があるんですよ。写真でも、お笑いのネタでもそうなんですけど。

でも最近は、そこで満足できないような新たな気持ちも芽生えてしまってて……。ちょっと自分でも、これからの自分がどうなるか、怖いですね。

酒井

おおっ。その感情が加賀さんにどんな変化をもたらすか、僕は楽しみですよ!

4.顧客 / クライアント

酒井

お笑いでのクライアントというと、劇場に来るお客さんや視聴者、番組のプロデューサーやディレクターになるのかなと思うんですが、写真の依頼はどんな方からきますか?

加賀

僕の写真を見た芸人仲間の方だとか、タレントの方から直々に依頼をいただくこともありますし、雑誌の企画やテレビ番組で関わったスタッフさんから、その後にお声がけいただくことも多いですね。

お笑いの世界に入ってから、カメラマンさんもそうですけど、ヘアメイクさんだとかスタイリストさんだとか、そういった番組のスタッフロールに名前が載るような方々のことを、すごく身近に感じるようになりました。お客さんだけでなく、スタッフの方々にとってもいい現場にしないとダメだな、と思うようにもなって。ひとつの現場で関わった人が、次の仕事をくださることもあるし、自分にとって居心地のいい場所をつくるには、まわりの方々を意識しないといけないなと思うようになりました。

酒井

すばらしい。裏方の人たちからも信頼を得られるというのは、やっぱり加賀さんのお人柄あってこそと思いますよ。

5.接点 / チャネル

「もめんと」(加賀さん撮影)
酒井

お笑いの現場で出会った方以外で、加賀さんの写真を見た方から、ご依頼をもらうこともありますか?

加賀

ありますよ。 業界の方から、宣材写真の撮影やウェディングフォトを頼まれたり。ウェディングに関しては、もう相当な数を撮ったと思いますね。すごく楽しくて、大好きな仕事です。

でも、不思議なもので、そういう仕事も別の仕事につながったりするんですよ。たくさんの結婚式を撮影していたら、Web招待状アプリのCMの仕事をいただいたり、「ネタづくりや写真のレタッチでPCを見過ぎて目が痛い」と発信したら、目薬のCMの仕事をいただいたり(笑)。何が何につながるのか、わからないものですよね。

酒井

SNSなどの発信において、意識されていることはありますか?

加賀

ちょうどきのう、InstagramとXのアナリティクスを確認したんですけど……。僕のアカウントを見てくれている人って、3%がフォロワーで、97%がフォロワー以外なんですよ。僕を認識してフォローしてくれてる人よりも、フラッと写真だけ見にきただけの人が圧倒的に多くて。「あまり、僕自身の自我を出しすぎないほうがいいのでは?」なんて思いました。

酒井

たしかに、フォトグラファーのアカウントもそうなりがちかも。常に他人の写真を載せているわけだから、被写体の方をご存じの方が見にきていたりとか、アカウント主である自分のことを知らない人が、たくさん訪れてくれているんですよね。

僕はそこまで著名なわけではないけど、加賀さんはご自身もすごく影響力を持っているわけで、写真の出し方も難しいだろうなあと思ってしまいます。「これは載せよう。これはやめておこう」と考えるのも大変じゃないですか?

加賀

大変ですねえ。 僕は常に写真を撮っているけど、すべてがSNSに掲載するためというわけではなくて、スタッフさんにお渡ししているものとかもあるんですよ。でも、SNSに「きょうはこの番組の収録だったのに、あの出演者の方は載せないんですか?」とかコメントがきたりして。僕のファンと、出演者の方のファンがコメント欄でちょっと揉めちゃったこともありました。僕自身について何か書かれるのはいいけど、ほかの方の名前が出てくるのは、ちょっとよくないなと……。なかなか苦戦しているところです。

酒井

わあ、それは大変だ……。

加賀

でも、だからといってやめることはないですけどね。SNSもひとつのメディアだと思っているので、どうにかがんばって続けていきたいです。

6.自己投資 / インベストメント

酒井

加賀さんが、普段から意識して行っている自己投資はありますか?

加賀

お笑いの仕事と写真の仕事でごはんが食べられるようになって、最近ようやく少し余裕が出てきたんですよ。なので、今はなるべく自分のしたいことにはお金を惜しまないようにしていますね。大阪で後輩がライブするとなったら、なるべく足を運ぶようにしたり。あとはカメラや機材には、やっぱり結構投資してしまいます。これまでにも結構な額をつぎ込んできたと思いますけど、まだまだ欲しい!

あとは、散歩の時間も大切にしています。スマホは家に置いて行って、カメラだけ持って散歩すると、ゆっくり考える時間がつくれて良いんですよね。ただぶらぶら歩くより、カメラを持って撮影しながら歩くと、写真撮って歩いて、写真撮って歩いてっていう循環が生まれて、いい感じに頭を整理できるんです。最近は忙しくて、なかなかそういう時間をとれていないんですけど。

酒井

散歩しながら撮影、僕も大好きです。頭がひとつのことでいっぱいになってしまったときとか、散歩をするとスッキリしますよね。

反対に、意識して「しないようにしている」ことはありますか?

加賀

まさにそれが最近悩んでいるところですね。というのも、僕、やりたいことが多すぎるんですよ。コントはもちろんだけど、写真も、俳句も、小説も、音楽も好きで、挑戦してみたいことも、勉強しなおしたいこともたくさんあって。

とはいえ、時間は有限だから、優先順位を決めなきゃいけないじゃないですか。だからこのあいだ、ホワイトボードに書き出して、「やること」「やらないこと」を絞ろうと思ったんです。でもそこに、“コント”、“写真”、“俳句”、“Youtube”……とか書き出しているうちに、「待てよ、Youtubeだけを『やること』に絞れば、結果的にやりたいことが全部できちゃうのでは?」と気づいて……。

酒井

結局ぜんぜん絞れてない!(笑)

加賀

振り出しに戻りました……。いろいろ手広くやっていると、ますますカリスマからは遠い存在になっちゃうなと思うんですけど。

酒井

加賀さんが多才な証拠だし、貪欲でいいじゃないですか。すごく「メラメラしてるな!」と感じるけれど、燃え尽きてしまうようなことはないんですか?

加賀

たぶん、燃え尽きるほどには、燃えてないんですよ。ハートのところで負けているというか、「やるぞ!」みたいな気持ちが足りてないんじゃないかな。お笑いの大会でも、やっぱり「絶対に勝つ!」みたいな闘争心に燃えている人が強いと思うんですけど、僕は一度に全力を注ぐよりも、コツコツと積み重ねていくほうが性に合っていて、そこが弱みかなと思います。

酒井

いやいや、むしろそれは加賀さんの強みだと思いますよ。燃え尽きるタイプだと、その後灰になっちゃうかもしれないですし。コツコツ積み重ねていくタイプだからこそ、写真とか俳句とか、これまでに続けてきたものが形になっているんですね。

7.幸福 / ハピネス

酒井

最後に、加賀さんの幸福について教えてください。ここまでお話を伺ってきて、やはり好きなことをやり続けることこそ、加賀さんの幸せなのかなとも感じましたが……。

加賀

そうですね。やっぱり、お笑いの現場にいることこそ、僕の幸せだと思います。もともと、僕、体育の授業とかで「見学」するのが大嫌いだったんですよ。みんなが楽しそうにプレーしているところに、自分も混ざれないとつまらない。でも、お笑いというコートのなかで、おもしろい人たちの最高のプレーを間近で観続けるためには、自分もそれなりに努力しなきゃいけないですよね。自分がサボることで、この最高の環境を失いたくないと思うから、そのために自分自身もお笑いを一生懸命続けていきたいと思います。

酒井

それはすごくわかります! 加賀さんにとってのお笑いが、僕にとっての写真かもしれない。

僕は写真をはじめたのが30代になってからで、20代の頃は何もうまくいかず、自分のことを社会不適合者だと思っていて。そんな自分が、写真に出合ってから、ようやく自分の足で、社会で歩けるようになった感じがしたんです。僕も写真が連れてきてくれた今の環境が好きだし、失わないために努力しようと思っています。

加賀

えっ、酒井さんが写真のお仕事をはじめたのって、そんなに最近だったんですか!? ちょっと、すごすぎる……聞きたくなかった(笑)

酒井

(笑)。そういうふうに、自分の仕事が新しい出合いを連れてきてくれたりするよなあと思うんですよ。加賀さんも、お笑いだけでなく、写真の仕事でもそう思うことがあるでしょう?

加賀

そうですね。やっぱり写真を通じて、芸人仲間との関係性も変わったと思いますし。今までは「現場以外ではなるべく会いたくない」と思って、街で芸人仲間を見かけても逃げたりしてたんですけど、今はすぐにカメラ向けちゃいます。むしろ向こうが「加賀に会うと撮られるから会いたくない」と言って逃げるくらい(笑)

芸人以外の方でも、写真をやっていなければこんなふうに話せていなかっただろうなあと思う方がたくさんいます。きょうこうやって酒井さんとお話できたのも、写真をやってきたおかげですしね。いろいろお話できて、ほんとうにうれしかったです。

酒井

こちらこそですよ! 加賀さんとの出会いも、カメラという相棒が連れてきてくれたものだと思っています。お互い、これからも写真を続けていきましょうね。

by Sho Kaga

加賀翔 |CREATOR CANVAS

Oct 09. 2025

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