GC magazine|Cores of the Artist

Jan. 08. 2026

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さまざまな雑誌やメディア、広告などで活躍するフォトグラファーたち。彼らはどのようにして写真と向き合い、撮り続けているのでしょうか? 活動を続ける上での「中核」となる価値観について、詳しくお話を伺います。

今回は、東京工芸大学 写真学科の卒業生を中心に構成されたアートコレクティブ・GC magazineの荏原陸さん、黒瀧倫太郎さん、鈴木冬生さんにインタビュー。メンバーに共通するGC magazineへの価値観、アートコレクティブとしての活動がそれぞれに及ぼす影響などについて、詳しくお話を伺いました。

GC magazine

Artist

若手を中心としたアーティストコレクティブ。「写真の錯綜と当惑」というトピックを扱い、zineの制作、写真を軸としたインスタレーションを展開し、展覧会を開催している。主な展示に「爆業Drive~GOの彼方へ~」Koma gallery(東京、2023年)、「KILLER”G”2nd Running alone pushin”G”Big high ACE」PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA(愛知、2024年)、「HOT RODDERS “G”4th Drifting with you 『私の恋∞瞬間∞『螺旋』∞』」COPYCENTER GALLERY(東京、2024年)、「魁*タギッテルステイト」see you gallery(東京、2025年)、EASTEAST_TOKYO「TURN OFF THE 5 PARADIGM LIGHTS」(科学技術館, 2025)などがある。

“写真”は、GC magazineの共通言語

―― 発足時からのメンバーである荏原さん、黒瀧さん、鈴木さん、そしてリーダーの伊藤颯さんは、みなさん東京工芸大学 写真学科の在学時に出会われたそうですね。そもそも、みなさんが写真をはじめられた経緯や、興味をもたれたきっかけはなんだったのでしょう。

荏原

僕は学生時代はずっとサッカーに打ち込んでいて、写真とは無縁だったのですが、高校生の頃に将来について考えた際「手に職があったほうがいいのではないか」と思い、なんとなく間口が広そうという安易な理由で、写真を選んだことがきっかけでした。

鈴木

僕は、両親がもともと写真館を営んでいたので、写真というものが小さい頃から身近にあったことが影響しています。かといって、子どもの頃からカメラにふれさせてもらったとか、写真について教えてもらったというわけでもないのですが……。高校生のときに進路を考える際、自然と写真を学ぶという選択肢が生まれて、そのまま進んだ感じですね。

黒瀧

僕も鈴木と同じで、両親が写真館に勤めていたので、写真が身近な環境で育ちました。僕の親はしょっちゅう僕を被写体にしてくるタイプで、それがすごくストレスだったんですけど(笑)。時々、レリーズボタンを渡されてシャッターを自分で切らされるようなこともあって、マシンとしてのカメラにすごく興味があったんですよね。それで「撮るのって楽しいかも」と思い、父と同じ大学に進みました。ちなみに、僕の父と鈴木の母は大学時代の知人なんですよ。ちょっと運命的ですよね。

―― そうだったのですね! 卒業後まもなく、リーダーの伊藤さんの声かけからGC magazineを発足されたということでしたが、メンバーのみなさんそれぞれのキャリアも、写真やアートに関連するものですか?

鈴木

初期メンバーの僕らはざっくりと写真業界に属していますけど、今はメンバーが16人くらいに増えていて、いろんな分野の人がいますね。ビデオグラファーもいれば、立体造形のアーティストや、自動車整備士なんかもいたり。作品によって、映像をつくる担当のメンバー、衣装を製作するメンバーなどが入ったりするので、ほんとうにバラバラです。ちなみに僕は、ふだんは個人で写真作品を製作したり、ギャラリーの運営をしたりしています。

荏原

僕もフリーのフォトグラファーとして活動しています。スタジオに勤務していた時代もあるので、その経験を活かして、雑誌やCMのライティングをつくる仕事なんかもしています。

黒瀧

僕は紆余曲折あって、今はプロップスタイリングや美術製作、設営など、撮影とはちょっと離れた仕事をしています。

「HOT RODDERS “G”4th Drifting with you 『私の恋∞瞬間∞『螺旋』∞』」より

―― みなさんが、あくまで“写真”というジャンルにこだわって活動される理由はなんでしょうか?

黒瀧

もともと写真から生まれた集団ですし、写真というのがメンバーの共通言語になっているからだと思います。とはいえ、僕たちは写真を撮って印刷して、それを展示する──というようなわかりやすい写真作品を発表しているわけではないので、観た人からは「これって“写真”なの?」と言われたりしますね。

―― 活動の主題として掲げられている「写真の錯綜と当惑」とは、活動を始められた当初からあったものでしょうか。その主題からブレないようにするために、どのようにメンバー間で価値観を擦り合わせていますか?

鈴木

最初から掲げていたものというわけではありませんでしたが、活動初期に少しずつ作品をつくっていく上で、自分たちの活動を包括できる言葉があったほうがわかりやすいだろうと生まれた言葉です。

とはいえ、その主題からブレないようにとは考えていないというか、むしろブレること自体がテーマとなっているかも。「写真の錯綜と当惑」っていうのは「イメージだけで語れる限界」だとか「写真は多くの意味をもっていて、どれを拠り所にすればいいかわからない」という、僕たちが共通してもっていた認識をあらわしていて、極端にいえば「“写真”のわからなさ」をテーマにしているので、写真を起点にしつつ、そこからブレること自体がGC magazineらしさになっているかもしれないと思います。

「HOT RODDERS “G”4th Drifting with you 『私の恋∞瞬間∞『螺旋』∞』」より

アートコレクティブで作品をつくるメリットとは

―― 最近では、真夏の鈴鹿サーキットを車を手押しして一周するパフォーマンスと、その過程を記録した映像・写真を軸に構成した「TURN OFF THE 5 PARADIGM LIGHTS」を発表され、話題を集めていました。写真作品をフィジカルに拡張する発想がとてもGC magazineらしいと感じましたが、ふだん作品のアイデア出しは、どのように行っているのでしょう。

鈴木

アイデアはリーダーの伊藤がもってきてくれることが多いのですが、そこからみんなで具体的な形に進化させていくのは、ほとんど雑談ベースで行っています。「こういうことやったらおもしろいよね」とか「こんなのどう?」など、半分冗談を言い合っているような感じですね(笑)

基本的には僕たち4人が中心となってアイデア出しを行って、そこから製作に必要なメンバーに協力を要請するような形で、製作を行っています。

―― アイデア出しや製作中に、メンバー間で意見が割れてしまうことはないのでしょうか?

「TURN OFF THE 5 PARADIGM LIGHTS」より
黒瀧

大きいところでは、あまりないと思います。作品のテーマや表現の方法などは、みんなで話し合ったなかで「いいじゃん!」とまとまったことが採用されているので。

とはいえ、展示の設営中に「そこよりこっちに置いた方がよくない?」と言い合うような、細かいぶつかり合いはありますよ(笑)。やっぱりメンバーそれぞれに好みやクセはありますから。そんなときは「まあ、これもGC magazineらしいか」という妥協点に落ち着くことが多いです。それぞれの個性や好みより「どんなふうにしたらGC magazineらしさが出るか」のほうが重要なので、そこが落としどころとなっています。

鈴木

消去法で決めたり、妥協点に落ち着かせたりといったことは少なくないですが、それを悪いこととは思っていなくて。たとえば自分ひとりで作品をつくっていたら、責任は100%自分だけにあるけれど、コレクティブだとメンバー全員が責任を負う一方で、全員が少しだけ無責任になれる。だからこそ「自分ひとりだったら絶対つくらないだろうな」と思うものがつくれるし、より新鮮なことができるようになっていると思うんです。僕としては、これは集団で作品をつくることならではのメリットじゃないかと思いますね。

個人の活動と集団での活動、その相互作用

「KILLER”G”3rd Running alone pushin”G”Big high ACE」より

―― みなさんは個人でのお仕事や活動で忙しくされている一方で、GC magazineとしてもかなり積極的に作品づくりや展示をされていますが、大変ではないですか?

鈴木

正直、ヤバいです(笑)! どうしても自分の仕事との兼ね合いで、GC magazineの活動に参加できなくなることもありますし、それでトラブルに発展することもあります。

でも、今年はGC magazineとしてのターニングポイントになっていると思っていて。新・写真新人賞「夜明け前」の第1回を受賞できたり、少しずつ知名度が上がってきて、展示などに声をかけてもらえることが多くなってきましたし「大変でも、とりあえず今はがんばらないと」と思っています。

―― やはり両立には苦労されているのですね。GC magazineでの活動は、みなさんの個人活動にどのような影響を与えていると思われますか?

鈴木

一人でものづくりをするとつい完璧を求めすぎてしまいますが、GC magazineでの製作は「完璧じゃなくても、それ相応の良さがある」ということを教えてくれるので、メンタル面にかなりポジティブな影響を与えてくれています。

黒瀧

僕はGC magazineでの活動がダイレクトに今の(美術や設営などの)仕事につながっているので、かなり相互作用が働いていると思いますね。

もともと僕らは毎月ZINEを発行するという名目でスタートしたコレクティブだったのですが、展示を開催するうちに、ただZINEに使った写真作品を展示するのではなく、“写真を使ったインスタレーション”を発表するようになっていって。そのなかで、メンバーが徐々に空間構成のクオリティを上げていくことができたんです。

僕は、実際にGC magazineのインスタレーションを観てくださった人から「この空間がつくれるなら、設営の仕事もできるよね?」という感じで声をかけてもらえたことが、今の仕事につながっています。GC magazineでの活動が個人の仕事につながって、個人の仕事で培った技術がまたGC magazineでの活動に還元されて──というように、いい循環を生み出せているのではと思いますね。

荏原

もともとGC magazineは写真からスタートしたコレクティブですが、今やみんなさまざまな分野で活躍するようになったので、黒瀧が話したように、個人での活動とGC magazineでの活動と、お互いにいい影響を与え合えるようになったと思います。漫画「NARUTO」に例えていえば、“影分身の術”みたいな(笑)。GC magazineという人格が分身して、それぞれのジャンルで修行を重ねて、またひとつの人格に戻ったときにこれまで以上の力を発揮できるようになる、というイメージですね。

「TURN OFF THE 5 PARADIGM LIGHTS」より

―― 今後もメンバーが増えたり、展示の機会がさらに多くなったりといったこともあるかと思いますが、アートコレクティブとしてGC magazineを継続させていくために、どのようなことが必要だと思われますか?

黒瀧

うーん、難しい質問ですね……。でもあえていうなら、「執着を捨てること」かな? ネガティブな意味ではなくて。

鈴木

我を出しすぎず、ちがう選択肢をとるっていうのが、集団で活動する上では必要になってくるよね。その結果、自分からは生まれなかったような斬新なものがつくり出せるということがほとんどなので。

あとは、人が増えても組織化しすぎないこと。それぞれの役割はゆるく設けているけど、あまりカッチリしすぎていると、会社みたいになってしまう。それはちょっと自分たちの思う形とはちがうと思うので、そのバランスも大切にしながら活動していきたいですね。

by GC magazine

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