ヒーコのアーティストエージェンシー『Co Agency』に新たに加わったアーティストに、所属を決めた理由や今後の展望についてインタビュー。今回は、雑誌や広告、映画やテレビ番組、ミュージックビデオなどで活躍するメイクアップアーティスト・小夏氏にインタビューしました。さまざまな俳優やモデル、アーティストから信頼を置かれる小夏氏のヘアメイクのインスピレーションの源や、キャリアスタートから抱き続ける夢について、詳しく伺いました。
広告・雑誌・映画・MV・CM・舞台・ファッションショー・イベント全般のヘアメイクを担当。
ーー まだ専門学生だった頃に地元・福岡から上京し、10代のうちからメイクアップアーティストとしてのキャリアをスタートさせた小夏さん。東京に拠点を移したきっかけは何でしたか?
私が高校卒業後に通っていたのは、プロのメイクアップアーティストからマンツーマンで技術を教わることができるという、少し変わった専門学校でした。福岡県内と東京に分校があったのですが、東京校に「どうしても教わりたい!」と思った先生がいたので、思い切って在学中に上京することにしたんです。もともと「いずれは東京で活動したい」と考えていたこともあり、卒業後もそのまま都内に留まりました。
ーー 専門学校を離れると、すぐにメイクアップアーティストとして活躍の場を広げていましたよね。どのようにキャリアをスタートされたのでしょう?
自分でも想像していたより早くキャリアスタートできた理由は、ヒーコの代表でもある黒田明臣さんとの出会いが大きいです。上京したばかりの頃、東京に一人も知り合いがいない状態だったのですが、黒田さんが「一緒に作品をつくれるヘアメイクを探している」とSNSに投稿されているのを目にして「これはチャンスかもしれない」と連絡してみました。その後お返事をくださった黒田さんに、学生時代の作品などを見てもらったあと、撮影の場に呼んでもらうことができました。それが商業案件だったので、経験が少ない状態だったのにいきなりキャリアがスタートしました。そこから、少しずつお仕事をいただくようになって、人脈も広がっていきました。
ーー かなり早いデビューでしたが、すぐに商業に通用する実力を発揮できたのは、プロから教わった学生時代の経験が活きたからでしょうか。
もちろんプロのメイクアップアーティストから直々に学べた影響もありますが、学生時代に積極的に作品づくりをしていたことも大きいと思います。福岡にいるときは、月に20〜30作品ほど生み出していました。当時はモデルをしてくれる友達やフォトグラファーの知人も多く、さまざまな方と作品づくりをしていたので、自然とノウハウが身についていきましたね。作品は厳選しながら毎月3つほどInstagramに投稿していたのですが、黒田さんをはじめ、上京してから依頼をくださる方のほとんどは私のInstagramの投稿を見てくださっていたので、結果としてキャリアアップにもつながっていたのかもしれません。
ーー メイクアップアーティストになることを決意されたのはいつでしたか?
実は、高校2年生になるまではまったく違う未来を描いていたんです。国外の貧困問題に関心があったので、卒業後は大学に進み社会学を勉強する予定でした。考えが変わったのは、高校の授業でタイに2週間ほど滞在した際、スラム街に住む少女たちと出会ったとき。道に捨てられた雑誌などからファッションやメイクの知識を得ていた彼女たちは、「今一番何がしたい?」と尋ねると、みんな「おしゃれがしたい」と答えたんです。そのとき「この子たちが自由におしゃれをしたり、メイクを楽しめるようになったらいいのに」と心から思ったのですが、彼女たちにそんな日常を与えるためには、国の政治そのものを変えないといけない。自分には、それを手助けできるだけの頭脳や力はないだろうと打ちのめされたんです。
それから「メイクアップアーティストになりたい」という新たな夢が生まれました。技術さえあれば「おしゃれをしたい」と思う人にメイクをすることはできるし、もしコスメをプロデュースできるようなアーティストになれたら、貧困層の女性たちに雇用の機会を与えることができるかもしれない。自分のもつ能力を活かしてどう彼女たちを支援できるか考えたときにメイクアップアーティストという選択肢が生まれた、という感じですね。
ーー 現在では、雑誌や広告、テレビ番組や映画、CMなど、さまざまな案件でのヘアメイクを手がける小夏さん。スチールとムービーでのヘアメイクには、どのような違いがありますか?
もちろん一概には言えませんが、スチールとムービーでもっとも大きく異なるのは、肌の質感づくりです。スチールではハイライトをしっかり入れて、肌に濡れ感をもたせることが多いのですが、ムービーで同じメイクをするとツヤが出過ぎているように見えてしまうので、マットに肌をつくり込みます。また、ムービーでは演者が動き続けるので、多少乱れても見栄えがするようなヘアづくりにも気をつけていますね。
キャリアスタートした当初はスチールの案件がほとんどでしたし、ムービーにおけるヘアメイクを誰かに教わることもできなかったので、こういった細かい知識や技術は、現場で経験を積みながら少しずつ培っていきました。とはいえ、撮り方や照明の組み方、スタイリングなどによって最適なメイクも変わりますし、ケースバイケースで、いまだに試行錯誤しています。
ーー メイクアップアーティストの方というと、大量のコスメやヘア用品など、毎日大量の荷物を持ち歩いているイメージがあります。大変ではないですか?
持っていく荷物の量も案件によって異なります。ひとつの案件で何人ものヘアメイクを担当する際は当然荷物も膨大になりますし、初めてご一緒する方の場合も、その方に合うメイクを模索するため多めに持って行くことになります。そんなときは、もちろん大変です(笑)。一方で、何度か担当させていただいた方とご一緒する際は、その方にどんな色が似合うかがわかっているので、荷物も少なくなりますね。とくに最近では、以前にご一緒した被写体の方ご自身から指名いただけることが増えたので、ヘアメイクにしては荷物は少なめかもしれません。
ーー クライアントや被写体の方から、ヘアメイクについての詳細な要望をもらうこともありますか?
クライアントの方からは、「こうしてほしいです」と細かい指示をいただくこともありますし、「小夏さんの好きなようにメイクしてみてください」と任せていただくこともあります。信頼してお任せいただくときには、例えば「このフォトグラファーの方の写真には、このハイライトが合っていたな。今回も同じブランドのものを使ってみよう」というふうに、自分で考えながらメイクしています。
被写体の方が俳優さんやモデルさんなど、いわゆる表に出る職業の方だった場合、メイクについて要望をいただくことはあまりありません。私はウェディングフォトなどのヘアメイクに入らせていただくこともあるのですが、一般の方からは「コンプレックスがあるから、隠して欲しい」と相談を受けることが多いです。私から見たら素敵なパーツでも、その人にとってはコンプレックスだったりするので「自分の顔で、好きなところとそうじゃないところはどこですか?」と、あらかじめじっくりカウンセリングをさせてもらっていますね。ご自身の顔のチャームポイントに気づいてもらえるような、自己肯定感の上がるメイクをしたいと常に思っています!
ーー 素晴らしいですね! 小夏さんが仕事でやりがいを感じるのは、やはり相手を素敵にメイクできたときでしょうか。
一般の方のヘアメイクをさせてもらうときには、やはりご本人に満足いただけることにやりがいを感じますが、商業のお仕事だと少し違うかもしれません。
最近は、女優さんやアイドルの女の子のヘアメイクをさせていただくことが多いのですが、それぞれのヘアメイクの考え方って全く違うんです。アイドルの方たちって、自分自身の「一番かわいい顔」をよく理解していて、メイクにしっかりとした「正解」があるんです。その方のイメージする正解に限りなく近づけたときは、数学の問題で正解を出したときのような達成感が得られます!
一方、女優さんには、メイクの正解というものはあまりありません。その役やシーンに合ったメイクを、私が自分なりに解釈して落とし込むしかないので、こちらは国語の問題の正解を出す感覚に近いでしょうか。でも、できあがった作品を見たときにメイクがぴったりハマっていると、やっぱりすごく達成感があるんです。どの現場でも、自分なりに満足のいくヘアメイクができたときには、やりがいを感じます。
ーー 最近ではプライベートサロンもオープンされ、ますます注目を集めている小夏さん。今後さらにチャレンジしたいことはありますか?
先ほどもお話したように「貧困層の女性たちに雇用の機会を与えること」が私のキャリアゴールだと考えているので、いずれはコスメをプロデュースしたり、ブランドを立ち上げたいと思っています。そのためには、自分自身のネームバリューを高めたり、協力してくれる仲間を見つけないといけません。簡単なことではないですし、時間もかかるとは思いますが、一歩ずつ進んでいきたいですね。
ーー 最後に、ヒーコに所属を決めた理由を教えてください!
私は、『Co Agency』に所属させていただくよりかなり前から、ずっとヒーコのお世話になっていました。請求書を作成して、各所に連絡して送付して……という作業が本当に苦手なので、主に請求処理をお願いしていたんです。今回新たに所属させていただくにあたり、新規の依頼の窓口となっていただいたり、私がとくに苦手とする価格交渉などもお任せできるようになったので、本当に安心ですし、ありがたいです! 苦手分野をサポートしてもらえるようになった分、これまで以上にお仕事をがんばりたいと思っています。