こんにちは!鈴木 啓太|urban (@urbansoul00) です。普段はオールドレンズやフィルムカメラで撮影をしております。
今回はオールドレンズに焦点を当てる記事として、コストパフォーマンスの高いオールドレンズを中心に撮影した写真と合わせて紹介していきたいと思います!秋は日差しも柔らかくなり、オールドレンズ的な描写が映える時期です。ここでオススメするオールドレンズを手に入れ、新たな表現方法を身につけていきましょう!
※ここではオールドレンズを「フィルムカメラ時代のレンズ」と定義して話を進めていきます。
1.オールドレンズ の特徴と魅力
現行レンズとの描写の違い
オールドレンズの魅力のひとつには現行レンズにはない描写があります。それらは、レンズ銅鏡内の製造品質に起因するものや、レンズに光を通すことで表れる「収差」補正の技術的な問題からくるものがほとんどです。フィルム時代は害悪なものとして扱われてきたオールドレンズ的描写=フレア、ゴースト、ぐるぐるボケ、バルブルボケですが、デジタルカメラの進化とともにこれら描写を積極的に写真に取り入れていく手法が、新しい表現として確立されていきました。
現行レンズの様なコントラストの高いスッキリとした描写には程遠いものが多いですが、昨今のフィルムブームからなるローファイかつアナログ的手法がデジタル界隈にも押し寄せてきており、オールドレンズの人気に拍車をかけていると考えています。
なぜオールドレンズを使って撮影するのか
筆者がオールドレンズを使用する一番の理由は、現行レンズを使った撮影よりも「表現を多様化することができる」ためです。ありのままを写す描写力や解像力については現行レンズには及びません。オールドレンズは、各種収差等を写真に取り入れることで、現行レンズとは違った表現が可能です。一方で、構造物や建築物、風景などをできる限り高解像度でシャープに撮る必要があるといった場合に、オールドレンズを選択することはありません。
ポートレートやスナップなど、オールドレンズ独特の柔らかさ、コントラストの低さ、色、収差等の表現が必要な場合にオールドレンズを選択しています。自分が写真でどのような表現をしたいかを考え、現行レンズ、オールドレンズを選択することが重要だと考えています。
2.コスパ最強焦点距離別オススメのオールドレンズ
焦点距離別コストパフォーマンスに優れたレンズの紹介
さてここからは、筆者がオススメするコストパフォーマンスに優れたオールドレンズを紹介します。
KMZ/ MC MIR-24M 35mm F2(中古市場価格帯:2.5~3万円)
ロシアが誇る光学機械工場KMZ(正式名称クラスノゴルクス機械工場)が製造した広角レンズ。グリーンの美しいコーティングが成されており、見るからに良く写りそうなレンズですがその描写は独特です。スナップに適した画角ですが、35㎜とは思えない程浅い被写界深度を持ち、花やポートレートにも使いやすいレンズです。ボケはあまり類を見ないタイプで、中心はバブルボケの要素を含み、周辺に行くにつれてボケが次第に半月型に崩壊していきます。
逆光下ではシャワー状のゴーストが出ますがコントラストを維持できる逆光耐性もあり、広角オールドレンズを探している方にはおすすめできる1本です。欠点は市場にそこまで多く流れていないこと。広角域のオールドレンズは高価なものが多く、特徴的な描写を持つものが少ないレンズセレクトが難しい画角です。非常にオススメなレンズですので、根気よく探して見つけたらぜひ購入してみるのが良いでしょう!
RICOH/ XR RIKENON 50mm F2(中古市場価格帯:0.5~0.7万円)
2本目のレンズはオールドレンズ的な描写が豊富な50㎜ラインからの紹介です。1978年RICOHから発売されたフィルムカメラの標準レンズとして、市場に登場したRIKENONですが、オールドレンズ界隈では有名な富岡光学が製造しておりその性能はピカイチ。1万円以下と言う低価格ながら、ライカの高解像度標準レンズに肉薄するほどの解像力を秘めていることで話題のレンズです。ややぐるぐるボケの傾向があり、描画線は太く諧調で見せるよりも解像力で見せるタイプのレンズ。現行の高解像度レンズに近しい描写をしますが、コントラストがやや低めで色乗りも薄味ですので、オールドレンズを使いたいけど解像度とボケ感も欲しい!という方にオススメの1本です。前期型(Ⅰ型:最短撮影距離0.45m)と後期型(Ⅱ型:型名にLが記載)のレンズが富岡光学製ですので、こちらを狙って購入するようにしましょう。市場にも多く買いやすいレンズです。
Carl Zeiss/Sonnar T* 135mm F2.8(中古市場価格帯:1.5~2万円)
3本目は皆さんご存じ老舗レンズメーカーCarlZeissからリリースされているYASHICA/CONTAXマウントの望遠レンズの紹介です。こちらもRIKENON同様解像力の高いレンズですが、コントラストが高くとても色乗りが良いレンズと言えるでしょう。比較的明るい望遠レンズと言う特徴から、安価な割に大きなボケを得られるため、遠距離から全身を入れた撮影やバストアップ、背景を大きくぼかした花の撮影など多くの用途に利用できます。
一方、オールドレンズ的描写は鳴りを潜め、逆光下における緩いフレアがみられる程度ですので派手な描写を求める方には少し物足りないかもしれません。中望遠としては85㎜のレンズが使いやすいですが、近年のオールドレンズブームにより軒並み金額が上がっているのが現状です。135㎜の望遠レンズはどれも1万円前後で購入できる割に、抜群の性能を誇るレンズが多いですので、非常にコストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。オールドレンズ的描写よりも被写体をしっかり撮影したいという方向けの一本です。
3.オールドレンズ 購入前の注意点
マウントに注意
さてここからはオールドレンズの購入に際し、気をつけるべきポイントを紹介していきます。まずひとつ目はレンズマウントに注意すること。オールドレンズの母艦となるボディは、フランジバックと呼ばれるレンズマウント面から映像素子までの距離が短いミラーレスカメラが便利です。ミラーレスカメラであれば、ほとんどのオールドレンズが装着できると考えていただいてOK。
しかし、なんでも装着できてしまう反面、障害となるのがマウントアダプターの複雑さです。マウントアダプターとはオールドレンズとカメラを接続するために必須なパーツであり、その種類も多種多様。M39やM42など数字で表示されているマウントも多く、混乱しがちです。更には同じレンズのバージョンによって、微妙にマウントが異なるなど混乱するポイントが多く、まずは1つのマウントに絞ってレンズを集めていくのが良いでしょう。
minolta MC/MDマウントや、YASHICA/CONTAXマウントなど、現代のレンズ接続形式と同じバヨネットマウントを採用しているものを購入すると失敗はしにくいでしょう。現行レンズと同じ方法で接続できるという安心感もあります。購入に関しては、近くに中古カメラ店があれば是非利用しましょう。店員さんに接続方法やマウントアダプターについて質問できるため、失敗がなくなるというメリットがあります。
カビや曇り、絞りの具合をチェック
オールドレンズは製造から100年近くたっているものもあり、カビや曇りと言った問題はつきものです。特にメルカリ・ヤフオクなどの出品物はあくまで出品者の判断で評価されており、しかるべき方法で確認すると曇りやカビが見つかるなどは日常茶飯事。ですので、マウントアダプターだけでなく、少なくとも最初の1本となるオールドレンズは中古カメラ店で購入するのをオススメします。また、同様に絞り環が動かない、ヘリコイド(ピントを合わせる部分)が硬くて動かない等もよく見られる症状で、メルカリ・ヤフオクでは詳細な説明がないものも多く、ジャンク品をつかまされるリスクも高いということを念頭に置いておきましょう。筆者はこれらフリマサイトも使いますが、ちゃんとしたオールドレンズを購入するには相当な知識と目利き、そして想定外の品をつかまされてもくじけぬ心が必要になります。
4.デジタルカメラであえてオールドレンズ を使用するメリット
フレア、ゴーストによる表現
オールドレンズは、表現の幅を広げることができるメリットがあると述べました。デジタルカメラに現行レンズの組み合わせでは「写りすぎる」と感じることもあるのではないでしょうか。特にポートレートにおいては、必ずしも解像力が必要とは限りません。フィルムユーザーも増えていることから、写りすぎないことを重視している方も多いと考えます。また、フレアやゴーストなど害悪なものとして捉えられてきたものが、デジタル技術の進歩で結果をすぐに確認できるようになり、それを表現のひとつとして扱えるようになりました。筆者は、フレアやゴーストを表現に取り入れる場合、「その場の光を目に見える形で取り込む」という意識のもと撮影しています。技術の進歩により現行レンズにフレアやゴーストが出にくくなったことで、逆に新しい表現として確立されたというのがオールドレンズの面白いところだと感じています。
独特なボケの表現
独特なボケの表現も、オールドレンズが持つ表現のメリットです。レンズ構成などにより様々なボケが表現できるのも面白いポイントなのではないでしょうか。代表的なものにぐるぐるボケやバブルボケといったものがありますが、これら描写は現行レンズではまず見られないもの。ぐるぐるボケは木々や小さい花などを背景に被写体を中心に添える事、バブルボケは木漏れ日などを後ろボケの要素に取り入れる事で、表現する事ができます。これらの描写もまた、カメラの進化で新しい表現方法として確立した(見直された)ものでもあります。
カメラがデジタル化されたことで、今までわからなかったピント部分の解像度、そしてそれによってもたらされるボケの描写などが鮮明にわかるようになりました。ボケ玉と揶揄されていたレンズが、デジタルカメラで使うと実はピント面はシャープだった!なんてことはざらです。デジタルカメラでトライアンドエラーを繰り返す撮影が即、できる様になったことも、ぐるぐるボケやバブルボケなどの独特な表現を見直すきっかけ、そして有効に活用できるきっかけになったのではと考えます。
フレアやゴースト、それにこれら独特なボケの表現は派手な描写をするものが多いため、多用は禁物。ポートレートのワンポイントとしてフレアやゴースト利用する、花などの被写体を強調するのにぐるぐるボケを取り入れるなど、アクセント的に活用しましょう。オールドレンズ的な表現を出せばいい、と言う考えから卒業できれば、晴れて中級者の仲間入りができるでしょう。
5.まとめ
オールドレンズは「低コストで自分の表現を拡張できる手段のひとつである」と考えています。オールドレンズであれば50mmの大口径レンズでさえ、1万円程度で買えてしまうことも多く、手軽に大きなボケなどの表現を手に入れる事ができてしまいます。現行レンズの表現に行き詰まった時やアナログな描写を写真に取り入れたいと思った時は是非、チャレンジしてみてください。また、購入時は失敗しない様、極力信頼できる中古カメラ店などで購入することもお忘れなく!今回紹介したレンズは秋葉原2ndBASEなど中古カメラ店でも数多く見ることができるものですので、実際に手に取ってその描写を確かめてみましょう。
遠方の方はオンラインショップを利用してみてください!きっと新たな表現の可能性に触れることができるはずです。安いからと言って沢山買って使わないなんて事は無いようにしましょう(笑)コレクション性もあるので、深い沼にハマらないようにだけお気をつけください!(まあそれはそれで楽しい世界でもあるのですが…笑)
他にももっとコスパの良いレンズ、違った焦点距離のレンズを知りたいと言う方は是非、筆者の著書である「ポートレートのためのオールドレンズ入門」もお忘れなく!50種類を超えるオールドレンズの紹介とその使い方、オールドレンズ的描写の解説、撮影方法から現像方法まで余すところなく記載しております。きっとまだ見ぬ表現の世界に足を踏み入れていただけることでしょう!
それではまたオールドレンズ、フィルムの記事でお会いしましょう!
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