Nobuko Baba 展示との対話「ニュージーランド」|Dialogue in see you gallery

Mar. 06. 2026

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東京・恵比寿の「see you gallery」での、写真家・Nobuko Babaさんによる個展「ニュージーランド」。

会場に展示されたのは、ニュージーランド南島を巡る8日間の旅のなかで撮影されたフィルム写真たち。Babaさん自らキャンピングカーを運転し訪れたという各地の写真からは、ロードトリップならではの高揚感が伝わってきます。

今回はBabaさんに、これまでのキャリアや、「ニュージーランド」の制作背景、展示や写真集へのこだわりなどについて、詳しくお話を伺いました。

Nobuko Baba

Photographer

1992年大阪生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、アシスタントを経て独立。2018年よりSIGNOに所属。人物や風景を中心に、被写体との距離感を大切にした静かで温度のある表現が特徴。国内外で撮影・展示を行う。主な展示に「Frenchfries with mayonnaise」(zakura、2019年)、「Point to Point」(Experiment、2024年)がある。

キャリアの原点は、NYのファッションスナップ

―― 写真学科を卒業し、フリーのアシスタントとして経験を積みながら、フォトグラファーとしての活動を開始されたというBabaさん。フォトグラファーという職業は、かねてから志していたものだったのでしょうか? 写真をはじめたきっかけについても教えてください。

小学生の頃から“なりたい職業”に“写真を撮る人”を挙げるほど、フォトグラファーの仕事に憧れていました。ただ、きっかけなどはとくになく、自分でもなぜフォトグラファーになりたいと思い始めたのかはわからないんです(笑)。いつの間にか写真を撮るという行為に惹かれていて、進学先にも写真学科を選んでいました。自分のカメラをもち、ちゃんと写真を撮るようになったのも、大学に進んでからでしたね。

―― フォトグラファーとしてのキャリアは、アメリカ・ニューヨークでのストリートスナップからスタートされたそうですね。

アメリカへ発ったのも、単純な憧れからでした。もともと暖かい地が好きなので、はじめは観光ビザでLAに滞在しようと考えていたんです。ところが、ちょっとニューヨークに移動してみたら、すごく刺激的に感じて。結局その後はLAに戻らず、ビザが切れるまでほとんどニューヨークで過ごしました。

滞在中、ニューヨークではファッションウィークが開催されていたのですが、たまたま知り合った方が期間中のすべてのスケジュールを把握されていて。それを共有していただいて、ファッションウィークに訪れている方のスナップ撮影をはじめました。その写真をInstagramに投稿したのが、キャリアの原点といえるかもしれません。日本に帰国後は、その投稿をポートフォリオ代わりにして営業したりしていたので。

―― Babaさんの作品といえばフィルム写真のイメージが強いですが、当時からフィルムカメラを愛用されていたのでしょうか?

「Frenchfries with mayonnaise」より

大学に入ってから初めて購入したのはフィルムカメラだったのですが、フィルムは当時も今もパーソナルワークにしか使用していなくて、クライアントワークはデジタル一択です。ファッションスナップからスタートしたこともあり、初期はファッションのお仕事がほとんどだったのですが、やはりデジタルでないと難しいということもあって。

今回の「ニュージーランド」でもそうですが、海外へ行くときには自分のなかで「撮るぞ!」と決めていることもあり、いつも大量のフィルムを持っていって、フィルムカメラでたくさん撮影しています。荷物がすごい量になるので大変なんですが(笑)

―― フィルム写真では、プリントもご自身の手でされているとか。手焼きプリントには時間がかかるというイメージですが、大変ではないですか?

暗室での作業が好きなので、あまり大変とは感じないですね。在学中によく学校の暗室を利用していたので、手焼きプリントには慣れているということもありますし、私が完璧主義とは真逆というか──あまり細かいことを気にしないタイプだというのもあるかもしれません。事前に想像していたのと違う色味になったとしても「これはこれで味があるな」と納得したりするので、あまり気負わずに楽しめているんだと思います。

8日間のロードトリップの軌跡を写した「ニュージーランド」

―― 2022年にイギリス・ロンドンに留学されたことが、Babaさんのフォトグラファーとしての大きな転機となったそうですね。具体的にはどのような変化がありましたか?

「Point to Point」より

イギリスにはワーキングホリデーで2年ほど滞在したのですが、イギリス国内だけでなく、ヨーロッパの各国を巡りながら写真を撮っていました。そのあいだに趣味で山登りをはじめたのですが、そこから自分の撮る写真のテイストが少しずつ変わっていったんです。自然やアウトドアフィールドをもっと撮りたいと思いましたし、それまではファッションばかり撮っていたこともあって「もっとドキュメンタリーチックな撮影も増やしていきたい」という想いが芽生えはじめました。

―― 今回の撮影地にニュージーランドを選ばれたのも、その理由からでしょうか?

そうですね。やはりニュージーランドは自然に恵まれているイメージがあるので、イギリスで山登りをはじめてから「行ってみたい」とずっと思っていました。それで今回、自分でキャンピングカーを運転しながらニュージーランド南島の各地をめぐるというロードトリップを敢行したのですが、ものすごく楽しかったです!

―― Babaさんが生き生きと旅を楽しまれている様子が、写真からも伝わってくるようでした。具体的には、どのような場所を巡ったのですか?

ニュージーランド南島の最大都市・クライストチャーチからスタートして、ぐるっとまわってまたクライストチャーチまで戻ってくるという計画で、その間にハイキングスポットを巡っていきました。「マウント・クック」や「レイク・ワナカ」といった有名どころをその都度の目的地に設定していたのですが、実際には道中のほうが楽しくて。運転もまったく苦じゃなかったですし、目的地ごとに宿泊するキャンプ場も、場所によってまったく違う風景を見せてくれるので、とてもおもしろかったですね。

―― たしかに、今回の「ニュージーランド」展でも、移動中に撮られた写真が多く展示されている印象でした。

もちろん目的地でも撮影はしていたんですけど、実際にセレクトを終えてみたら、道中の写真のほうが多かったですね。自分でもふり返ってみて「このときに一番テンションが上がっていたんだな」と感じました。今回は“キャンピングカーで旅する”というのが醍醐味だったので、ロードトリップをしているということにワクワクしていたのだと思います。思い出深い旅になりました。

―― 今回の展示名をシンプルな「ニュージーランド」とされたのには、どのような意図がありましたか。

これは、かっこいいタイトルをつけるのがなんとなく気恥ずかしかったからなんです。「これが私の撮ったニュージーランドです」というのを飾らずに伝えたくて、シンプルにカタカナの「ニュージーランド」としました。

すでに名だたる写真家の方々がニュージーランドを撮影しすばらしい作品を発表されているのを見てきたので、「私がニュージーランドを撮っても、どうせこの人たちには勝てない」と思ったこともあったのですが、あるときに「どんな場所を撮っても、結局私が撮れば“私の写真”になる」と気がついて。この展示では、私なりに、旅のなかで私が感じたことをそのまま届けようと思いました。

随所にこだわりを散りばめた展示と写真集

―― 今回の展示ではインクジェットプリントと手焼きプリントが織り交ぜられていましたが、展示方法や全体の構成はどのように決定されましたか?

基本的には自分だけでセレクトと構成をしたのですが、ほとんどを手焼きプリントで構成しつつも、「これは小さい写真じゃもったいないな」と思うものについては、大判のインクジェットプリントを採用しました。

具体的な展示方法については、会場の「see you gallery」がなかなかおもしろいつくりをしていたこともあり、設営当日にギャラリーディレクターのJ.K.Wangさんにアドバイスをいただきながら決めていきました。当初は写真をあまり散らばせず、作品をギュッと展示する予定だったのですが、もう少し空間のゆとりを活かした構成にしたり。メインスペースから物販スペースまでの通路のような小さい空間に、キャンピングカーの車内の写真を配置するというのも、設営当日に決めたことです。メインスペースに“外”の写真を配置して、この奥まったスペースにはもっと距離の近い“中”の写真を配置したらおもしろいかな、と。

―― プリント作品の上に額装された手焼きプリントが配置されている構成も、斬新で印象的でした。

構想中から「プリントに額装を重ねたらおもしろいかな」と漠然と考えていたのですが、設営の際に「道の写真に自転車で走る人の写真を重ねたら、より疾走感が出るかも」と思いついて、その場で試してみたんです。あれは個人的にふざけたポイントというか、遊び心を出した部分ですね。

―― 今回は写真展の開催に合わせて、写真集「Point to Point」も発売されました。今回の「ニュージーランド」の作品と、2024年に開催された写真展「Point to Point」の作品が収録されたボリューミーな写真集となっていますが、セレクトや構成、デザインに至るまで、Babaさん自ら手がけられたそうですね。

ニュージーランドを訪れたのが11月で、展示まで3ヶ月しか期間がないなかで写真集もつくったので、それはもう……大変でした(笑)。とはいえ、あまりセレクトや構成などには悩まずに制作できました。というのも、「Point to Point」はイギリス留学中にヨーロッパを巡りながらつくった作品だったのですが、自分のなかに「ある地点から次の地点へ渡り歩く」という明確なコンセプトがあったので、それに沿う形で「ニュージーランド」の作品も含めながらまとめることができたんです。

セレクトした写真は、私がときめく瞬間をおさめたものばかり。なので、ボリュームはあるけれど「全部見て欲しい」と思うほど、すべてがお気に入りの写真です。表紙に採用している、アイスランドで撮影した馬の写真は、自分でもとくに好きな1枚です。

「Point to Point」より

―― ハードカバーで重厚感があるのも魅力的です。紙や印刷にも、Babaさんのこだわりが込められているのでしょうか。

そうですね。気合いを入れてハードカバーにしたのも、ややマットで色合いがしっかり出る紙を選んだのも、自分なりのこだわりです。前回制作した写真集「Frenchfries with mayonnaise」では、私がもっとも影響を受けた写真家であるウィリアム・エグルストンの写真集を参考にさせてもらったのですが、今回はもう少し自分の写真に合った紙を選びました。

ウィリアム・エグルストンは私にとって、スナップの価値観を変えてくれた存在。それまではポートレートばかり撮っていて、「スナップってよくわからないな」と思っていたけれど、学生の頃に授業で彼のドキュメンタリーを観てから「ゴミや食べ残しでも、彼が撮ることで、こんなに絵になるなんて」と感動したんです。そこから自分もスナップ撮影にのめりこんでいったので、彼の存在は大きいですね。

「Frenchfries with mayonnaise」より

作品に浸れる空間が、忙しない日々の癒やしとなるはず

―― web上でも作品を発表できるようになった現代において、実空間に写真作品を展示する価値や意義とは何だと思われますか?

仕事を続けていく上で、たくさんの方に知っていただくという意味でも、web上に作品を発表するということもとても重要だと思います。その上で、私が実空間に作品を展示する理由は「誰かにひとときの癒やしを提供できるから」。とくに東京にいると感じることですが、みんなすごく忙しくしていて、とても疲れているじゃないですか。そんなときにギャラリーを訪れて、スマホやパソコンを通さずに作品と対峙すれば、ふっとひと息つくことができると思うんです。

写真集も同じで、写真集を手に持って眺めているそのあいだは、作品だけに浸ることができます。ほかの情報には邪魔されず、自分の見たいと思う作品に対峙できるという、ささやかな癒やしの空間を提供できるということに、すごく価値を感じるんです。

―― これまで開催されてきた写真展は、いずれも海外の旅先で撮影されたスナップからなるものでした。今後はどのような場所を訪れたいと思われますか?

今後はもっと日本国内を旅したいと考えています。一昨年にイギリスから帰国した後、改めて「日本って最高だな!」と思ったんです。日本の文化は素晴らしいとしみじみ感じて、私たちのような若い世代がもっとフューチャーしないといけないと思いました。これまでは海外にばかり目を向けていたけれど、もっと国内でも旅をして、いろんな地域と工場や農場、そこで働く人たちの写真などを撮ってみたいですね。

Information

EXHIBITION

ニュージーランド
会期:2026年2月21日(土) – 3月8日(日)
営業時間:13:00 – 20:00 (会期中無休、入場無料)
会場:see you gallery
住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-15-7 2F
主催:see you gallery
SNS:instagram.com/seeyougallery/
お問い合わせ先:contact@seeyougallery.com
メール対応時間 10:00 – 19:00(弊社休日を除く)

by Nobuko Baba

Nobuko Baba 展示との対話「ニュージーランド」|Dialogue in see you gallery

Mar 06. 2026

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