みなさんお久しぶりです。相沢亮(@aizawa0192)です。
今回のテーマは、「月と都市風景の魅力的な写し方」についてです。
帰り道にふと空を見上げた時に輝く綺麗な月。私たちにとっては非常に身近な存在なので、ありふれた被写体と思うかもしれません。
しかし、月は上手に使うことで、たくさんの素敵な効果を作品にもたらしてくれます。日によって様々な姿を見せてくれる月を、街とともに素敵に撮る方法について解説していきたいと思いますのでぜひ読んでみてください。
月がいつどの方角にでるかを把握する
月の出、月の入り時間
月という被写体に向き合う前に、まずは月について簡単に知っておきましょう。
街と月を綺麗に撮る上で欠かせない要素が月の出(月の入り)の時間です。月の出、月の入り時間は、日々変わります。例えば夏なら、ある日の月の出の時間が朝の5時の場合、翌日は5時50分という風に、日によって40分から50分の違いがあります。
季節だけではなく場所によっても変わるので、月を撮影するときは、以下の国立天文台のサイトを参照してみてください。日本全国の日々の月の出入り時間、満月の日等が載っています。
夕景や夜景を撮影するときは、月が出ている時間を把握する必要があるので、僕もこのサイトをよく利用しています。
サイトには月の出(月の入り)の時間だけでなく、太陽の位置と月が同じ方向にある場合は新月、反対の位置にある場合が満月になる理論なども詳しく説明されています。このあたりはすごく面白くて話し始めると止まらなくなりそうなので、今回はここまでにしておきます。
月が見える方角で撮れる写真が変わる
月がどの方角に見えるかは、太陽の動きと月の満ち欠けをあわせて考えると理解しやすいです。まず抑えたいのは、月が太陽と真反対に位置する日が満月で、同じ方向に位置する日が新月ということ。
そのため、満月の日は(太陽と反対方向にあるため)、月は太陽が沈む夕暮れ時に東の方角から昇り始め、明け方に西の方角に沈んでいきます。反対に、新月の日は(太陽と同じ方向にあるため)、月は太陽と同じ方向に同じように動いており見えません。
こうした知識をもっておくと便利なのですが、「何を言っているかわからない!」という方も大丈夫です。
月の出の方角については、こちらのサイトで簡単に参照できます。
(月の出・月の入り時刻方角マップ)
月と東京タワーやスカイツリー等を絡めた撮影を行う際は、こうしたサイトで月の方角を把握してから場所を決める必要があります。
ただし、せっかく地図上で撮影地を決めても、月の方角に高い建物がある場合は視界が遮られてしまうので注意しましょう。展望台などの見晴らしの良い場所を除き、下見はやはり、重要です。
月と街の撮影に適した時間帯を知る
明るい月と夜景を撮る時に気を付けたいこと
望遠で満月を切り取ってみました
クレーターまで映すことができています。このように月優先の設定で夜景を撮った場合、街はとにかく暗く、黒潰れに写ります。
月は高い位置にあればあるほど(南中)明るくなるため、月が高い位置にあるときは、夜景に露出を合わせれば白飛び、月に露出を合わせれば夜景が黒潰れになってしまうのです。
ではどうすればよいか。おすすめは、月の出、月の入り付近の時間帯、つまり月が比較的低い位置にある時間帯を狙うことです。個人的には満月の場合、月の出から40分前後が狙い目だと思います。(月の出が18時30分なら19時くらいまで)
合成なしの一発撮りの場合、明暗差を最小限にすることで黒潰れや白飛びを回避できます。明るい月を可能な限り回避して、街の明るさと合う時間帯を狙うという考え方です。
上記の「月の出、月の入り時間」の項目で記した月が顔を出している時間を参照の上、狙ってみましょう。
上の作例は、月の出から30分以内に撮影した写真です。月や街のディティールを潰さずに写すことができました。(この点については、下にまた詳しく述べております)
ピンクの空、ビーナスベルトに浮かぶ満月の撮影時間帯
空気が澄んでいる等条件が良ければ、ビーナスベルトに浮かぶ満月を撮影することが可能です。
ビーナスベルトとは、空が淡いピンク色に染まる大気現象のことで、日の出、日の入りの太陽の位置とは反対側の方向に見ることができます。このビーナスベルト、なんと日の出直前(月が徐々に沈む頃)または日没直後(月が出だす頃)のわずか20分間しか見ることができないという非常にレアな代物です。
もしビーナスベルトに浮かぶ黄色い満月を撮影したい方がいれば、前者の日の出直前(月が徐々に沈む頃)を狙ってみてください。
何故日没直後ではダメか?というと、日没直後に見える月は地平線に近いので色が赤く見え、大気が屈折しているのでどこか輪郭がぼんやりとして見えるんです。この状態も素敵ですが、はっきりとした黄色の満月とビーナスベルトを狙いたい場合は、やはり日の出直前がベターでしょう。
ちなみに、こちらが日没直後の写真です。
一方、日の出直前のビーナスベルトが見える時間帯は、月は地平線より少し離れた位置にあります。
そのため満月は黄色に光輝いており、徐々にピンク色に染まる空を眺めながら、常にはっきりとした月の存在を確認することができます。
下が日の出直前の写真です。
ビーナスベルトも満月も綺麗にうつっていますよね。上記の理由から、ビーナスベルトに浮かぶ満月を撮影したいときは、朝日が出る前の月の入り時間付近を狙うことをおすすめしています。
ただし、満月でない場合は、この限りでないです。満月の1日前や2日前は、月の出が約40分から50分ずれるため、ビーナスベルトが見える時間帯に月が黄色に光輝いています。
以下の作例は、満月の2日前に撮影した写真です。日没後のビーナスベルトと月を撮影することができました。
どんな状態の月とビーナスベルトを撮影したいかによって撮影の時間帯が変わってくるので、ご自身の希望に照らし合わせて考えてみてください。
朝焼けや夕焼けと月を撮るときのポイント
月は、マジックアワーのオレンジ色の空に浮かぶこともあります。この景色は太陽と月の方角が比較的近い時に見ることのできる景色です。新月付近の三日月の時ですね。
月が夕日と近い位置にあるために月が見えないとき(月が出ているけど白飛びしている状態)もありますので、夕日と月の方角が被る日(新月の日から2日以内)は、撮影の時間帯に注意しましょう。三日月と夕焼け、朝焼けなどを狙うなら、太陽が見えていない時間帯が良いと思います。
街を入れずに月と夕焼けのグラデーションのみを写してみました。整理され、ミニマルな雰囲気で撮ることができます。
焦点距離による表現と設定
望遠レンズで主役と月を切り取ってみる
※Lightroomで明るさ・露出補正済み
この日は東京タワーの方角に月が出る日でした。焦点距離300mm(35mm換算)で東京タワーの上部と月を切り取った作例です。ピントは、東京タワーに合わせています。
撮影場所が展望台で三脚が使えない状況下でしたが、以下の3つの理由で三脚を使わずとも撮影することができました。
- 撮影時間が月の出から16分後(この日の月の出が17時29分、撮影時間が17時45分)
- 日没後20分以内(日の入り時間 17時25分)だったため、空に少し明るさが残っていた
- 手すりにカメラを固定することでシャッタースピードを確保できた
三脚無しの状況下かつ、望遠レンズを使った撮影なので、ブレないために個人的にギリギリのシャッタスピード1/10に設定し、ISOで明るさを確保し撮影に臨みました。
ここまでシャッタースピードを確保できた1番の理由は、やはり日没から間もない太陽光がかすかに残るブルーアワーの時間だったことが大きいのかなと思います。東京タワーの真上を通過するタイミングでも撮影しました。
上記と同じで月の出が17時25分、撮影時間が17時53分です。
月が白飛びしないように調節して撮影し、Lightroomで全体の明るさを調節、月の明るさのみを抑えています。これ以上月が高い位置に来ると撮影が難しい状況になるかなと感じました。
夜景を広く写し、アクセントに月を加えてみる
焦点距離を166mm(35mm換算)と先ほどの作例よりかは、少し引き気味に撮っています。
また、この作例も月の出から間もない時間帯に撮影しています。(撮影日の月の出が17時54分、撮影時間が18時14分)月と街を撮る時の焦点距離は、35mm換算で約130mm以上を確保するようにしました。
月という被写体は、当たり前ですが、もの凄い遠い位置にあります。そのため月をできる限り大きく見せ、クレーターまで認識できるように写すためには、自分から近いビルなどの被写体にピントを合わせ、遠近感を無くすように写すことが理想です。
街全体と月を写す時のポイントは、自分が離れた位置から被写体を撮ること。フルサイズ機で望遠レンズがない方は、カメラ機の機能の「APS-C」モードを使うこともおすすめです。
まとめ「大切な4つのポイント」
月と街の撮影方法について解説していきましたが、いかがでしたでしょうか。
特に大切なポイントは、以下4つです。
- 月の出、月の入り時間、方角の把握
- 月の出、月の入り約30分前後での撮影
- 焦点距離を130mm(35mm換算)で月を大きく写すこと
- 月と街のそれぞれの露出を気をつけること
天気さえ良ければ、月は毎日見ることがで、日によってその姿を変える非常に面白い被写体です。撮影のタイミングを見極めて、すぐにでも挑戦してみてください!