プロフィール
1959年生れ。少年時代に目にした多くの報道写真から写真に興味を持ち、下積みを経て広告写真のカメラマンとして活動を始める。スタジオで30年を過ごした後、3DCGの世界へ転職。その後、東日本大震災をきっかけに風景やドキュメントを表現する写真家に回帰。表現をしない表現者、一種のプロセッサーとしての役割となる写真家を目指し写真家として活動中。
7つのキーワード
被写体
目に見える全てが自分にとっての被写体です。見えるものを撮る。見えるから撮る。そこに尽きます。STILL LIFE(静物)でも風景でも人でも、見えるからこそ気持ちが動くし、会話をすればさらに興味がわくし共感も持てます。
被写体に対して、「自分の外側にあるもの」という感覚が自分にはありません。いかにその空間・人に馴染み溶け込めるか、常に自分ごととして捉えて撮影しています。
機材
ボディはCanon 1DxMk2、レンズは主にZEISSの50mmMacroと100mmMacroと25mm、SIGMAの35mmと14-24mmを使用しています。Canonは他の機材と比較してになりますが、写真らしく自然に写るので好きです。機動力と信頼性、バッテリー管理の問題もありますね。ロケが多く、1回のロケで2000枚くらい撮影する時もあるので、絶対的に信頼できる事が重要です。レンズはそれぞれ驚くほど違いが出るので、かなりの試行錯誤をして選んだものたちです。とても気に入ってます。
PCはMac Book ProとMac Pro、モニターはEIZO-CG276を使用しています。これらは自分にとっての心臓なので欠かせない大切なものです。
撮影に欠かせない機材が車です。必要な時に必要なタイミングで必要な場所に移動する。移動の最中にアイディアもわいてきます。今の車は20年選手で25万km走りました。今でも気に入っているまさに相棒ですね。次の相棒を探さなければ、という想いもありますが、月に3000km走った時もありますし、被災地にも何度も向かった相棒なので愛は尽きません。
理由
スタジオカメラマンとして長い間従事してきましたが、ある時車に関わる仕事がしたくて、写真の世界から3DCGの世界に移りました。写真に対する気持ちが離れていた時でしたね。その後3DCGディレクターをしている時に東日本大震災が起きて、岩手にある小さな漁師町にボランティアで行きました。向かった当初は焼け跡と瓦礫の山。でも、ある程度片付いた時、港で見たのは素晴らしい海と山、そしてどこまでも透き通った空。そこに太陽の光が差し込み、今までに見たことのない絶景が広がっていました。そこから風景の素晴らしさに気づいて、またカメラを手にするようになりました。
でも、結果として一度キャリアを変えたことで、データの処理や人との接し方、仕事への向き合い方など、当時の経験と知識は、今の写真に活かされて、自分の売りのひとつになっています。昔はテクニックや自分のエゴをいかに通すか考えることもありましたが、今では相手の要望を汲み取り、フラットな気持ちで向き合えています。そしてその写真で、誰かが褒めてくれる、喜んでくれる、その反応が自分の原動力でもあります。その誰かは、クライアントであったり、メーカーの方であったり、時には岩手(被災した)の漁師さんだったり。自分の写真を必要としてくれる方たちがいるので、今写真を続けることができています。
理想
かつての諸先輩方から厳しく言われて今も気にかけているのは「言葉のいらない写真家」です。「写真に説明書きは付かないんだよ!説明しなくても伝えられる写真を撮れ!」と、耳が痛くなるほど言われました。
そのためには技術だけで撮ってもコンセプトだけで撮っても辿りつきません。制作者としてのエゴと魂胆と企画と表現のバランスを探りながら撮影しています。多分それは広告カメラマンが長いから考えることで、作家としての写真家を目指してはいないからできることだと思います。初期に憧れた報道写真にも通じる最高度の技術を駆使しつつ、一見事実を只撮影していて、でもその写真で人の心を連れて行く事がカッコいいと思います。
発信
仕事で撮る写真は、発信される場所と道筋が規定されているから写真と発信することは、イコールではないと思っています。自分にとっては写真が先でSNSが後からきたので尚更そう感じるのかもしれません。
ただ、仕事の写真じゃない、例えばサーフィンしている時にGoProで上手く撮影できたら自慢したくなるし、反応ももらえますよね。実際にあった話ですが、震災当時避難所の食材が尽きかけた時があったんです。その事態を写真付きで投稿したらあっという間にフードバンクの方につながり、食材が届いて難を逃れたこともありました。SNSのように完成されたプラットフォームを誰でも利用できて、そこにあげた写真に対して反応がもらえたり、メッセージを届けることができたり。その環境があること、また仕事と関係ない写真を見てもらってそのように反応がもらえることは素晴らしいと思います。
仕事
この歳で独立したので「なんでもやります!」と言いたいのですが、日々仕事をする中で「自分の中の基準」が誰の基準よりも厳しいことを実感しています。それをクリアするのは結構難しいことも多いです。だから、自分が自然にすんなり受け入れられる仕事を続けていきたいですね。
未来
たくさんお金を稼いで、20年選手の車を買い換えたいです(笑)。というのはさておき、いつも考えるのは「後悔したくない」ですね。後悔が付きまとうような仕事をしないでいられるうちは、クライアントにとっても役に立つ人でいられると思っています。
小山一成氏 作品ギャラリー
2020年 株式会社proble(フォブル)設立