はじめまして。グラフィックデザイナーのKoyuki (@koyoox) です。
始める前はそうでもなかったのですが、2012年にインスタグラムを始めてから、それ以前と比べて私の写真は「ミニマル」と形容されることが多くなりました。
おそらく、私が写真に対して一番の楽しみを見出すのが「構図」を決めるときだから、だと思っています。本業のグラフィックデザインに通じるところがあるからかもしれませんし、インスタグラムを始めた当時の、iPhoneのペタンとした描写にマッチしているのも理由だったように思います。
写真を撮る上で大事なポイントはたくさんあると思いますが、この記事では私が思う、構図のお話ができればと思っています。
構図を考える
1. 被写体の位置
私が構図を決める上でなんとなく意識していることを整理してみました。
中央
被写体が素直に中央に配置される「日の丸構図」です。被写体に十分なパワーがある場合は、オシャレで凝った構図は避けて素直に中央に配置するのが、最も印象に残る写真になると思っています。個人的には、人物をメインで撮る時に日の丸構図を使用することが多いかもしれません。
左下、右下
スクロールしていて見過ごされる可能性のある位置ですが、だからこそ、現れた被写体に気づいた時に、ささやかな驚きがあると思って配置することが多いです。
左上、右上
上からスクロールした際、被写体が最初に現れ、背景や余白が続くので、余韻を感じる配置です。
2. 運動性
平面的な視点の中に、単調にならないように、どう動きを持たせるかということも意識しています。
建物の柄、シェイプ
何気ない場所でも、狭い視野・広い視野を使い分けて、周りを観察することで、建物の幾何学性を見つけることができます。幾何学性が生む「リズム」を発見し、そこに被写体を関与させることで唐突感をうまく出せた時は、撮った写真に対して嬉しく感じます。
複数の被写体
複数の対象をメインの被写体として扱うと、それだけで運動性が生まれ、ストーリー性も生まれると思っています。個人的に今後もっと撮りたい内容です。
3. トリミング
画角の中に残すもの、外すものを決める時、周りの環境が伝わる要素は最低限のみに留めています。私の写真は、ストーリーを伝えたり、綺麗なものを閉じ込めたりしているより、日常の中に隠れているグラフィックポスターをスマホで捉えるエクササイズのようなイメージで撮っているので、要素が少なく、抽象度が高い方が合っているように感じます。
トリミング前・後の写真も少し載せてみようと思います。
きっかけ
撮るものが自然とミニマルになる理由として、私の職業もそうですが、Scott Hansenの影響が大きいかもしれません。Tychoという名前でかっこいい音楽を作りつつ、グラフィックデザイナー/フォトグラファーという肩書きを持っている、学生時代の私達の憧れの塊のような人なのですが、当時の彼のブログに度々インスタグラムの話題が取りあげられていました。
その中で、トリミングについて触れている記事があり、その記事の記憶がずっと強く残っています。簡単に抜粋・翻訳してみました。
一眼で撮る際、解像度が低くなるのを避けるため、トリミングすることはまずありませんでした。しかし、小さい画面で見るインスタグラム上だと、解像度がそこまで気にならないので、iPhoneで撮った写真をトリミングをするようになりました。
解像度を気にしなくなることで「自由」になり、古い写真であってもトリミングすることで、a new favourite photoができあがることがしばしありました。
ISO50 ‘The Importance of A Good Crop’
検索してみたら記事が残っていたので、興味がある方は上のリンクから是非。
今と比べるとスマートフォンカメラの画質がそこまで良くない時代の話ですが、当時の私には「そんな写真の楽しみ方があるのか」と強く印象に残りました。
ちなみにTychoはここから聴けます。
被写体・テーマについて
構図についてお話しましたが、最終的には、被写体との掛け算ですし、撮り手が面白い、魅力的、と感じていることが何よりも大事なように思います。
川内倫子さんの作品を尊敬しているのですが、川内さんの写真はずっとプリミティブで、純粋で、構図も直感的に決めているのでは、と想像しています。逆に石元泰博さんなどは、バッチリ決まった構図が近代的、デザイン的で、張り詰めた緊張感が生む美しさを感じます。
私自身が写真を撮る場合は、一緒にいる人とその場の環境を組み合わせることで、どう「違和感を生めるか」ということをテーマの一つにしていて、「面白い」と褒めて頂けた時が1番嬉しいです。機材の描写力や精度に制限されることなく、視点とアイデア次第で良い写真を撮ろうと心がけています。
また、一緒にいる友人たちに写真に入ってもらうことが多いですが、最近は顔を写さないことで抽象性を高くしています。そうすることで、被写体に視点が集まりすぎることを避けて、アイデアが主役に見えるバランスで撮ることができます。
アイデアはその場所を観察することで偶発的に生まれることが多いです。旅行などでたまたま訪れる場所以外でも、毎日の生活のなかで、面白い写真が撮れそうな場所がないか、特徴的な影が落ちる時間帯は無いか、常に頭の片隅で考えて、観察しています。
例えばこれは早朝の二子玉川駅で、長い影が落ちていたので、逆さに反転させたら不思議な写真になって面白いだろうなと思って撮りました。
この写真は、建物内でたまたま通りがかった何気ないドアですが、一緒に行動していた人数が多かったので、いつもと違う写真が撮れないかなと思い、全員に映ってもらいました。
この場所では、斜めの建築が印象的だったので、それを利用して写真のなかで唐突感を作れたら面白い絵になると思い、一緒にいた友達に、顔を斜めの建築に隠して映ってもらった写真です。
最後に
撮り手の視点・体験を共有できるのが写真だと思います。構図ひとつに対しての判断の仕方も、撮り手の好みによって左右されます。私のように、撮った後の編集段階で構図を最終的に詰める場合は、何に対して面白いと感じているのか、撮り手の意図を受け手にとってより分かりやすくさせる行為のように思います。そういった好みや、感情が、見る人にも伝わることで、最終的に共鳴ができたときに、ひっかかりを感じてもらえるのかなと思っています。
読んでいただきありがとうございました。