こんにちは!オールドレンズやフィルムカメラでの撮影をしております。鈴木 啓太|urban(@urbansoul00)です。今回はフィルムカメラ記事です。皆さんご存じの最もメジャーなインスタントカメラ「写ルンです」について書かせていただくことになりました。
名前を聞いたことはあるけど、実際使ったことがない!と言うデジタル世代も沢山いると思います。今回はその独特な写りや人気の秘密などを踏まえ、2021年7月1日で35周年を迎えた「写ルンです」の今を追って行こうと思います!
写ルンですとは
カメラを嗜む方、それ以外の方にも知名度抜群のフィルムカメラ「写ルンです」ですが、そもそもフィルムカメラって何と言う方も多いはずです。まずここではフィルムカメラの代表ともいえる「写ルンです」とは何かをおさらいをしていきましょう。
「写ルンです」とは、今もカメラ業界をリードするFUJIFILMが1986年に世に送り出した「レンズ付きフィルムカメラ」商品です。当時は使い捨てカメラとも呼ばれ、旅行先のタバコ屋さんや駅の売店、自動販売機などでも購入することができました。
最盛期には世界で1億本以上を売り上げ、ISO1600フィルムが入った「写ルンです 1600 Hi・Speed」やモノクロフィルムが入った「写ルンです BLACK & WHITE」、水中写ルンですと呼ばれる「水に強い写ルンです New Waterproof」などなど数々のバリエーションを生産していました。
今では残念ながら「写ルンです シンプルエース(ISO400 27枚撮り)」のみとなってしまいましたが、オシャレな見た目と焦点距離32mmのプラスチックレンズ1枚からなるそのレトロな写りは、今もなお多くのカメラユーザやフィルムファンを虜にしています。
何度目かのブーム
今、女子高生や若いカメラユーザーの間で写ルンですを中心としたフィルムカメラブームが到来しています。なぜ、普段持ち歩いているスマートフォン等のカメラではなく、わざわざ写ルンですと言った不便なツールを使うのでしょうか。
ひとつは、スマホにはない独特のエモい写りを得られると言う事が挙げられます。確実にピントの合うスマホカメラよりも、撮影距離も固定化されていて、意図しないボケやブレなどが起こりやすい写ルンですは、デジタル世代にとって新鮮に感じるようです。
もうひとつは、便利な世の中において、敢えて不便さを体験する行為に重きを置いているのではと考えます。写真を撮るという行為をボタンひとつで終わらせるのではなく、フィルムを巻き上げ、ファインダーを覗き、構図を決めてシャッターを押す。
その被写体は、友達や自分の好きなものがほとんど。写真を撮るまでの所作を含めて、写真として(さらに記憶として)焼き付けるということに価値を見出しているのではないでしょうか。
結果はすぐ確認できないうえに、ちゃんと写っているのかもわからないといったドキドキの中で結果を待つというのは、スマホのアプリで写真をフィルム風に加工するのとは全く異なる体験であると言えます。
写ルンですは・現像・プリントやデータ化を経てようやく目に見える写真となります。フィルムならではのスローな工程は、スピードの速い現代社会の流れにはない「待つ楽しみ方」を新たな価値として提供しているのではないでしょうか。
写ルンですの今
さて、そんなスローライフもひとつのウリと言える写ルンですにもデジタル化の波が押し寄せているのはご存知でしょうか。
今ではお店に現像に出したフィルムを、自宅に居ながらLINE経由で受け取れるサービスも充実しています。こちらはデータにしてスマホに入れたいけど、CDをお店に取りに行くのが大変と言う人にうってつけのサービスです。
写ルンですは約1000円、現像とデータ化で約1500円(※現像店によって異なる)と1ショットあたり約100円と、決して安くはありません。高校生であればバイトやお小遣いで溜めたお金を使っての1枚ですから、スマホで気軽に撮るよりも1枚1枚の写真に思いが込められるのも納得です。
今の写ルンですブームはアナログへの回帰と言うよりも、「体験する価値」への魅力がより大きいのかもしれませんね。
スペック
さて、ここでは少し写ルンですのスペックを紹介しておきましょう。そんなの別に知らなくても大丈夫と言う方は読み飛ばしてもらっても構いません。上級者の方は知っていれば色々と応用が利くのではないでしょうか。
フィルム | ISO400 135フィルム |
撮影枚数 | 27枚 |
レンズ | 焦点距離=32mm F=10 プラスチックレンズ1枚 |
シャッタースピード | 1/140秒 |
撮影距離範囲 | 1m~無限遠 |
フラッシュ | 内蔵(有効撮影距離:1m~3m) |
重量 | 90g |
少しカメラをかじったことのある人であれば、F10&SS1/140秒かつレンズ1枚は結構びっくりするようなロースペックだと思います。ISO400ですと晴れの日の適正露出はF11&SS1/500秒くらいですので、ざっくりF10,1/140≒F11,1/125とそろえて考えると大体2段オーバーくらいがデフォルトだと考えていただいてもいいかもしれません。
これは晴れの日の日陰でもギリギリ適正露出が得られるようにもなっていると言えますので、晴れであれば基本的にどこで撮ってもきれいな写真が取れるということを意味しています。これから夏にかけての晴れの日であれば気にせずガンガン撮っていけるのも魅力のひとつかもしれませんね。
写ルンですはこう使おう
さてここでは、写ルンですの使い方と描写を見ていきましょう。普段デジタルカメラを使っている方からすると、ローファイな写りが何とも魅力的に感じられるはずです。
屋外編:しっかりと撮るために
写ルンですが最も力を発揮するのは天気の良い晴れの日の屋外です。その独特な写りを存分に発揮してくれます。フィルム一眼レフなど逆光の時は露出補正などで撮影するのが基本ですが、写ルンですにはその機能はありません。ですので、極力逆光以外で撮るのが基本になります。
逆光で撮りたい場合は、後述する日中シンクロを利用しましょう。ですが、ピーカン照りの場合は、普通にとってもかなりハイキーになっているので、そこまでフラッシュを焚く必要はなかったりもします。それよりも気を付けなければいけないのは手ブレです。SSが1/140しかない写ルンですはボディも90gと軽く、ちょっとしたことで手ブレを発生させてしまいます。写ルンですの手ブレは天候に関わらず発生します。片手でラフに取れるのが魅力ではありますが、意図的にブラしたくない場合はしっかり構えて撮るようにしましょう。
写ルンですはほぼパンフォーカスなので、切り取りや構図を意識することがコツです。曇りの日で光と影を使えない場合も有効なテクニックです。
失敗例①:屋外でも曇りや日陰の暗いところではこの様にアンダーになってしまいます。暗いかなと思ったらフラッシュを焚く癖を付けましょう。
失敗例②:晴天の昼間ですが、手ブレしてしまった例。SS:1/140秒はしっかり構えて撮らないと想像以上に手ブレが発生します。
屋内編:露出を失敗しないために
屋内で写ルンですを使うコツは必ずフラッシュを焚くことに尽きます。
フラッシュを炊かない場合、晴れた屋内でもほぼアンダー、場合によっては全く写らないことも多々あります。これが写ルンですの失敗写真で最も多いシチュエーションです。
どうしてもノンフラッシュで撮りたい場合は、自然光がたくさん入る窓際の直射日光が当たるところで使いましょう。特に夜の屋内でのフラッシュなし撮影は厳禁です。このシチュエーションでフラッシュを焚かずに使うと適正露出から5段程度アンダーになってしまうので、フラッシュなしではほぼ写らないと思った方が良いでしょう。
屋内や夜の屋外でフラッシュを焚いた際の写真は独特です。ザ・フラッシュと言う写りになりますが、ファッションやストリートフォトなどでは敢えてこのザ・フラッシュが好まれるケースもあります。
薄暗い場所でフラッシュを焚きながら、素早くカメラを振ることでブレのある写真を撮ることができます。写ルンですはボディが軽くSSを変更することができないため、成功率は低めですが覚えておいて損はないテクニックです。
失敗例①:屋内撮影の典型的な失敗例、完全な露出不足です。屋内では必ずフラッシュを焚きましょう。
ちょっとしたテクニック編
ここでは写ルンですを使ったちょっとした撮影テクニックを3点紹介します。
1つ目はオールドレンズでもおなじみゴーストを載せるテクニックです。
ファインダーを覗いても写真の様な光の輪を確認することはできませんが、逆光に向けて思い切ってシャッターを切ることでこのような写真を撮ることもできます。
フィルムはある程度白飛びに強いですので、逆光でも気にせずガシガシ好きなシチュエーションでシャッターを切るのも良いアプローチです。効果的なアクセントになったり、写真を邪魔してしまったりとメリットデメリットはありますが、一風変わった写真を撮ることができます。
2つ目は日中シンクロです。
日中シンクロと書くと難しいイメージに捉えられてしまうかもしれませんが、要は日中にフラッシュを使うということだと考えていただければ良いです。日中シンクロの利点は逆光時も被写体を明るく撮れることが挙げられますが、写ルンですにおいては逆光時だけではなく「どこでも確実に被写体を明るく撮れる」ということが最も大きなメリットであると言えます。
ですので、僕は逆光時に関わらず晴れの日でも極力フラッシュを焚くことを心掛けています。27枚しか撮れないですので、どんなシチュエーションでも確実に撮るためには、必須のテクニックになります。
なお、フラッシュを使っても日中手ブレしてしまうのは変わりませんので、そこは気を付けましょう。手ブレも味と言えば味なので、それも写ルンです良さと開き直るのもありです。
3つ目はレンズにハンドクリームなどを塗ってよりソフトに見せるテクニックです。写ルンですはその機構上あまり凝った撮影ができないので、普通の使い方に満足できない方はレンズに何かを塗るといったテクニックを用いるのもいいでしょう。
レンズフィルターさながらの効果を出すことができます。コツは薄く塗ること。あまり厚く塗りすぎるとぼやけすぎてしまうため、さっと塗るくらいにとどめておきましょう。レンズを拭けば元通りですので、27枚すべてに塗るというよりはお試しで1~2枚やってみるのが良いですね。
多様化するレンズ付きフィルム
レンズ付きフィルムシリーズはFUJIFILMだけではないのをご存知でしょうか。名前は写ルンですではないものの、今もフィルム製品に力を注ぐKodakやLomographyからも様々なレンズ付きフィルム製品が出ています。
Kodak/FunSaver
まずはKodakのレンズ付きフィルムシリーズのFunSaverです。
写ルンですとの違いは入っているフィルムの感度がISO800ということです。より明るく撮れ、暗いところ(曇り)に強いということが挙げられます。
スペック面でもF9及びSS1/120と各社同製品の中では若干明るいのが特徴です。コダックのフィルムを使えば暖色よりの温かみのある発色を表現することができます。F値の関係からか最短撮影は1.2mと若干の違いがあるものの、晴れの日中の使用感はほぼ一緒です。
写ルンですがISO400製品しかなくなってしまった今、フィルムの好みや天候で機種を選択できるというのはユーザにとってはありがたいことです。
メーカーによって色が変わる。好みのものを選ぼう。
Lomography/Simple Use Film Camera
フィルムユーザーであればご存知、LomoのSimple Useです。
これは写ルンですやFunSaverのLomography版と考えていただければ問題ありません。違うのは次の2点です。
- フラッシュにカラーフィルターがついており、独特な表現が可能
- フィルムを入れ替えることができ、本体の再利用が可能(ただしフィルムの入れ替え後の撮影は保証対象外)
どちらも写ルンですとFunSaverにはないメリットですね。
本体が再利用できるということは予備のフィルムを持っていくことで、旅などの長期利用にも耐えられとても実用的です。カラーフィルターもフラッシュに色付けをするなど、多様なアプローチが可能です。
入っているフィルムもLomoのカラーネガフィルムをはじめ、モノクロや色が紫になるフィルムなど様々な本体バリエーションが用意されているので、是非試してみることをお勧めします。
スペック上F9及びSS1/120となっており、FanSaver同等ほぼ変わらない使用感と思っていただいてよいでしょう。
FUJIFILM/水に強い写ルンです New Waterproof
いわゆる水中写ルンですの事ですが、残念ながら2019年に廃番になってしまっています。2021年7月現在、Amazonなどでも在庫は存在するので、探せば色々なところで購入することが可能です。やはり何といってもWaterproof=防水の強みを活かした水辺での撮影をするのに持ってこいです。
主に海などでの使用が良いですが、晴れの日のプールなどは濁りの無いより美しい水中撮影が可能ですので、作品撮りにも好相性です。
ISO800のフィルムが入っているため、水中だけでなく、日中利用することも可能です。水中写ルンですはなくなってしまいましたが、他社から同型品がリリースされていますので、そちらを使うことで同様の撮影ができるでしょう。
最後に
さていかがだったでしょうか。今でもまだまだ人気の衰えることのない写ルンですシリーズは今年で35年となります。デジタルカメラが進化した今でこそ、新たなポジションを確立し、若い世代にも絶大な人気を誇っています。
先述の通りフィルムデータの受け取りも進化を遂げているので、ストレスなくその楽しみ方を享受できるはずです。是非、今年はフィルムで夏を切り撮ってみてください。きっと今までと違った思い出となるに違いありません。
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