青山裕企 | MY PERSPECTIVE

Jun. 09. 2021

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Yuki Aoyama

Photographer

写真家(Mr.Portrait)。ペンギン・ショートヘア・飼い猫が大好きな“究極の晴れ男”。
1978年名古屋市生まれ。筑波大学人間学類心理学専攻卒業後、2005年に独立。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。
「スクールガール・コンプレックス」「ソラリーマン」「少女礼讃」など“日本社会における記号的な存在”をモチーフにしながら、自分自身の思春期観や父親・少女像などを反映させた作品を制作している。

7つのキーワード

被写体

私は、人に興味があります。自分にも他人にも興味があるので、その思いを投影して自分の思春期の頃の女性に対する満たされない思いを作品にし、ひとりのかけがえのない少女を撮り続けていたり、サラリーマンであった亡き父親のイメージを追いかけ続けていたりします。

そういったことから、女子学生・サラリーマン・少女を被写体として作品を制作しています。人見知りで自分に自信や情熱がなかった私は、二十歳の時にカメラと出会い、人と向き合えるようになりました。まず“人を撮る”ことが、私の写真のすべてなのです。人を撮るために、写真を続けていると言えます。

作品の表現においては「記号性と個性」を意識しています。女子学生もサラリーマンも、制服やスーツを着ることで記号性が強まります。顔を隠すとさらに記号性は強まるし、一方でジャンプしてもらうと個性が露わになります。

基本的に人は「少女という存在」に対して理想的なイメージを押し付けるでしょう。もちろん私もその一人です。一方で、少女は自分が少女であることを自覚的に振る舞いながら、ひとりの人としてのあふれる個性を表現するのです。その表現を感じられることがとても尊く、興味は枯れることなく、私にとって人生をかけて取り組んでいるテーマと言えます。そんな自分をMr.Portraitと自称しています。

機材

以前はフイルムカメラ(35mm・中判・大判)を使用していました。ソラリーマンはPENTAX67Ⅱ、スクールガール・コンプレックスはMAMIYA C330Sで撮影していました。

ですが、今は完全にデジタルカメラに移行しています。ここ数年は、PENTAX645ZとSONY RX1RM2をメインに使用。最近は、FUJIFILM GFX100S、X-PRO3なども使用しています。

理由

フイルムでもデジタルでも、作品は中判カメラをメインに使用しています。理由としては、写真展などで大きなプリントを作ることが多いため、高画素であることが重要だからです。レンズはメーカー問わず、単焦点で35〜50mm(35mm判換算)を使用しています。広角や望遠は、作品でも仕事でもほとんど使用しません。肉眼的で、見たままの世界、リアルな描写を前提とした、レンズ選びをしています。

光は基本的に自然光で撮影をしています。太陽は最高かつ最強の光源です。ライティングを使用する場合も、自然光の再現をベースに考えます。自然光にこだわる理由は、その名の通り「自然な光は自然な雰囲気を作り出す」からです。仕事でレフ板など使ったりもしますが、作品制作では極力使わないようにしています。見たままの世界をリアルに描写するためには、作られた不自然な光は必要ないからです。

理想

もし写真を撮ることに出会えていなかったら、何もない自分だったと思っています。大げさな話ではなく、写真を撮ることが好きになり、撮り続けながら生きていく覚悟を決めて、人生は大きく変わりました。二十四歳の時に写真家になると決めてからは、一瞬たりとも辞めたいと思ったことはありません。

自分のことを才能があるとは全く思っていませんが「自分には写真を撮ることしかないから、自分なりに出来ることを全力で続けよう」とだけ考え、ここまで来ました。

どうしてそんなに思えたのか、それは、こんなに愉しい趣味を私は他に知らないからです。カメラを持っているだけで、見える世界はカラフルに輝き出します。雑草に生命力を感じ、雲の形にファンタジーを見出し、出会う人への興味は尽きることなく、撮ることで自分の心は震え、相手の心も高まり、撮った写真を共有し、分かち合い、それらをいつでも見返すことができます。写真はただの過去ではなく、いつだって今とつながることができるものです。趣味が仕事になった今も、この気持ちを大切に、好きを好きなままでいられるように、写真を撮り続けています。

発信

私は撮影することと、撮影した写真を世の中に発信することは、全くイコールではない感覚があります。撮影すること自体に意味があることもあるし、撮影した写真を誰にも見せないけれど価値があるものもあります。そもそも撮影すらしなくても、写真について考えることも大切で、それを言葉で発信することもあります。

世の中に発信して、いいねの数を集めたり競ったりすることも否定はしませんが、それが目的になってしまうと、何のための写真なのか、見失ってしまう可能性もあると思います。私は、自分のための写真であり、大切な人のための写真であるという思いが強いです。世の中というマクロ的な対象に発信する以前に、目に見える範囲のミクロ的な生活の中で発信することのなかに、写真の愉しさや素晴らしさはあるんじゃないかなと考えています。

仕事

仕事のオファーをいただくことって、本当にすごいことで、ありがたいことだと感じます。それは、自分の写真を必要としてくれているということに他なりません。ですが、最近は、仕事の規模やお金とかよりも私の写真を必要としてくれているのかを基準に考えています。

今までに、吉高由里子さん・指原莉乃さん・生駒里奈さん・オリエンタルラジオさんなど、時代のアイコンとなる女優・アイドル・タレントの写真集の撮影を担当させていただきました。おそらく、自分の才能や実力以上の仕事をいただけていると思っています。

映画監督の経験もさせていただきました。実のところ、これ以上の野心や仕事に対する大きな目標はあまり描いていません。ペンギンが好きすぎるので、ペンギンを撮る仕事はしてみたいのですが、Mr.Portraitに来る類の仕事ではないので、ブランディング・ミスとして諦めています(お待ちはしています)。

さらにありがたいことに、書籍は継続的に作らせてもらっているので、途切れることなく今後も続けていきたいところです。まだまだ作りたいテーマがあるので、作品集についても出し続けていきたいですし、「ポートレート(女の子)の撮り方」や「写真論」などの実用書は、今すぐにでも出したいと考えています(こちらもオファーお待ちしています)。

やってみたい仕事については、抽象的になりますが、会うだけで胸が震える被写体に出会い、その仕事で結果を出して認めてもらい、写真集など形に残る仕事はしたいです(生駒里奈さんの時のように)。思い出すと、駆け出しの頃は、ファンであるaikoさんのCDジャケット写真が撮りたいとか、ショートヘア偏愛の原点である広末涼子さんを撮りたいとか、みずみずしくもミーハーな目標があったりもしました。

未来

今後については、しっかり週二ぐらい休みながら、うちの猫を撫でたり遊んだりしつつ、作品を撮り続けながら、作品集などの書籍を出し続け、必要とされる仕事を続けながら、写真で生きていきたいと思っています。

今、自分は大きく分けて三つの作品があるのですが、五十歳ぐらいまでに、第四の作品を確立させたいです(作品の成熟には時間がかかります)。今までの作品もすべて進化(深化)させていきたいと考えてます。また、ギャラリーと出版レーベルとオンラインコミュニティを運営しているのですが、それも永く続けていきたいと思っています。自分を必要としてくれる人たち、写真を愉しんでいる人たちと、笑い合って生きていければと考えています。

自分があまり夢を高らかに語る感じではなくなっていますが、今後も写真を撮り始めた頃の感動、写真家になると決めた時の覚悟、作品が評価された時の安堵、初めて出版した時の喜び、それらを忘れずに、初心を貫き、まだまだ写真について勉強しながら、もっといい写真が撮れるようになりたいです。

「少女礼讃」写真集はこちら

by Yuki Aoyama

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Jun 09. 2021

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