私がテーブルフォトを撮る理由。Nana* | 写真家の機材

May. 09. 2019

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Sep. 20. 2024

テーブルフォトといえばこの方!Nana*(@necozalenky)さんに、普段使っているカメラと機材についてインタビュー。フードをメインに撮影をしている、見ているだけで美味しすぎる作品の数々を前に、根掘り葉掘り伺いました!

Nana*

Photographer / Prop Stylist

静物写真を中心に、商品広告撮影の他、フォトセミナー等で講師として活動。NHK文化センター青山教室「AURORA写真塾」講師。陶芸作家の器に一目惚れしたのをきっかけに、器の魅力を伝えるためにテーブルフォトを本格的に始め、2017年に千葉県松戸市に作家ものの器などを扱うライフスタイルセレクトショップ「AURORA」をオープン。

撮影機材

カメラ・レンズ

  • カメラ
    • SONY α7
  • レンズ
    • ZEISS Planar T* F1.4 50mm(メイン)
    • ZEISS Planar T* F2 35mm

他機材

  • 三脚(Manfrotto製品)
  • パーマセルテープ
  • 練り消し
  • レリーズ

愛用の撮影機材について

今のカメラを使用するようになった経緯

早速ですが、普段使用している機材について教えていただけますか?

Nana*

使用しているカメラはSONY α7、古いタイプのものですね。レンズはZEISS Planar T* F1.4 50mmを使用しています。ニコン用のFマウントのレンズです。その前はNikon D5100を使っていて、あとからSONY α7に買い替えました。レンズはお気に入りなのでそのままにして、アダプターを介して使っています。

カメラを変えた理由としては、Nikon D5100はAPS-Cなので、レンズのボケ量が変わってしまうんです。これではZEISS Planar T* F1.4 50mmの良さを最大限活かしきれていないなと思って、フルサイズに買い換えることにしました。

はじめはNikonのフルサイズを買おうと思ったんですけど、その時はまだ、手頃な値段で携帯しやすい軽めのフルサイズが少なく、SONY α7に決めました。あとは、オールドレンズも使ってみたいなって気持ちもありました。テーブルフォトには向いてないんですけどね。外で撮る分には楽しいかなあ、と。

ーずっと同じレンズを使われているのですね!カメラを持ち歩く場合は、軽さも大事ですよね。

愛用レンズの魅力


ーZEISS Planar T* F1.4 50mmを気に入って使い続けているということで、そのレンズの魅力を教えていただけますか?

Nana*

はい。一番よく使っているZEISS Planar T* F1.4 50mmですが、元々テーブルフォト用に買ったレンズではありません。趣味でカメラをやっていた頃は外で撮ることが多く、外での撮影用に購入しました。テーブルフォトに向いているかといわれると、決してそういうわけではないと思います。ただ、このレンズの描写が好きで、偶然のタイミングで撮れるその瞬間を逃したくなくて、いつもこのレンズを付けています。

明るいところよりも、低光量の環境でレンズの良さが発揮されるのを感じます。外であれば、夕方くらい、日が落ちてきたような時間帯。一筋の光だけで写真を撮るような状況で、とても良い仕事をしてくれるレンズです。

Nana*

光と影のある写真が好きなんです。というのも、私は食べ物を撮ることが多くて、そういうものって立体物が多いですよね。目の前にある食べ物の美味しさを表現するのには、より実物に近い、つまり立体感がある写真の方が良いかなと。

私は元々絵を描いたりもしていたのですが、プラナー独特のボケ感って、モネやルノアール、といった印象派によくあるようなブラシストロークの感じがして、そこも好きです。

ーNana*さんの食べ物のお写真は、本当に美味しそうで、見ているとお腹が空いてしまいます。確かに、立体感があると、写真のなかの食べ物を手で掴めそうな感じが出るので、より食欲をそそる気がします!

写真と機材の関係

レンズの選び方

ーテーブルフォトではどういった機材があればベストでしょうか?

Nana*

どう撮りたいのかにもよりますが、カメラ本体よりも、レンズの方がどちらかというと大事かなと思います。テーブルフォトは、その名の通り、テーブルの上のものを撮るので、基本的に食べ物と食器を一緒に撮影することになると思います。目に映る状態に近い、自然な形に写っている方が良いですね。歪みや遠近感がない方が望ましいかなと。

遠近感のことを考えた場合には、ちょっと広角気味の35mmだと、手前に大きいプレート、後ろに大きいグラスを配置した場合に、グラスがやたら小さく写っちゃったりします。そうすると、目で見るとバランスが良いのに、撮ってみると、なんか構図のバランスが悪いなってなったりします。なので、レンズは標準から、中望遠くらいの方が撮りやすいかなと思います。歪みのことを考えるなら中望遠の方が良くて、広角寄りのレンズだと難しいかなと。標準レンズを使いたいなら、レンズ構成と性能表をちゃんとチェックして、歪曲収差の少ないものを選んだ方が良いと思います。

オールドレンズも、ものや状態によるけど基本は向かないかと。いちばん気になるのは歪曲収差ですね。古いほど補正されていないものが多いので。料理を撮る時は、形も大事なんですけど、自然な見え方が大事だと感じます。その方が、料理も美味しそうに見える魅力的な写真になると思います。

三脚の重要性

ーテーブルフォトを撮る際に三脚は使っていますか?

Nana*

使います。基本は三脚を立てて撮影します。

テーブルって水平じゃないですか。ちょっと傾いただけでも違和感が出てしまって、そっちに目がいってしまう。写真はテーブルに対して水平の方が、見ていてすっきりしたイメージになる。まず水平を保てるという点で、三脚は重要な機材だと考えています。

構図を決める時も、三脚があることで自分でカメラを構えなくていいので、液晶画面に映っている状態で、配置を変更できます。画面はそのままに、自分の手を動かして微調整をするのは、カメラを持っている状態だと出来ません。手持ちは自由度が高い分、微調整が難しい。例えば、被写体の配置を変えた後、もう一度カメラを構え直すと、同じ位置に立っているつもりでも多少アングルが変わってしまいます。

テーブルフォトを撮っているけど、構図や配置が上手くいかないと悩んでしまう方には、三脚を使ってみることをお勧めします。液晶画面をキャンバスだと思って、被写体の配置を変えるようにしていくと、自分が撮る写真を客観的に見ることが出来て構図の失敗が少なくなりますよ。

ー確かに、手の自由度が高いのは大事ですね。テーブルフォトの場合、ポートレートと違って被写体に動いてもらうわけにはいかない。ものの位置を微調整出来る環境を整えるために、三脚を使っているわけですね。

アクセサリーアームは使わない


ーテーブルを真俯瞰で撮ることも多いと思うのですが、アクセサリーアーム(三脚や一脚に取り付けるアクセサリー)は使用されますか?

Nana*

ほとんど使いません。真俯瞰の構図でも、基本的には普通の三脚で撮っています。

撮り方としては、三脚を立ててカメラを下に向けて、床の上に板を置き、その上に被写体を配置します。センターポールは伸ばしすぎると脚が写ってしまうので、ポールの長さにも気を配ります。どうしてもポールの先が写る場合には、裏技を使って解決します。

カメラに若干角度をつけて、ちょっとだけ斜めにするんです。そうすると、ポールの先が写らなくなる。ただ、それでは真俯瞰にならないので、三脚の脚が前2本、後ろ1本だとしたら、後ろの脚の方に本など少し厚みのあるものをかませます。こうすると、三脚だけでも真俯瞰の構図が作れます。

「良い機材がないと良い写真が撮れない」は間違い

ー良い機材がないと良い写真が撮れないと思いますか?

Nana*

私は写真教室などで教える立場でもあるので「良い機材がないと良い写真が撮れない」という風には思って欲しくないなと考えているんですね。そういう風に思ってしまっている方って、けっこう多いかなと思うんですけど、大事なのはまずそこではなくて。機材以外のところ、基本的な光の使い方とかの方がとても大事だと思います。それをちゃんとマスターしてからの機材かなと。

ー工夫次第で、特別な機材がなくても写真が撮れるということですね。写真を撮る楽しさを伝える側として、難しい、入りづらい世界だとは思ってほしくないですよね。

撮影について

光の入り方を考える

ーNana*さんのテーブルフォトは、被写体がとても立体的に見えますが、光の演出の仕方で工夫している点はありますか?

Nana*

私は基本的にすべて自然光で撮影していて、光の入り方にはとても気をつけて撮っています。料理があったら、その料理の、どの部分に視線を誘導するか、そういうことを意識しています。

テーブルフォトの場合、被写体は小さいので、ものに対して光の入る面積が大きくなりがちです。大きな窓だと、サイド光で撮っているつもりでも、実は上の方からも手前の方からも光が入っているので、完全なサイド光(斜めから入る光)とはいえない状態になっていることがあります。

撮影の時は、カーテンを使ったり、布を使ったりして光の当て方を微調整していきます。上だけ遮ったり、手前だけ遮ったり。やわらかい感じにしたかったらカーテンは全開でも良いかもしれません。コントラストを強くしたい、この部分だけ色を強く出したい、より立体感を出したい、そういった場合は、光の入る範囲を狭めると良いですね。

ー光の調整をすることによって、印象や食べ物の色味を思い通りのイメージに近づけているんですね。Nana*さんのテーブルフォトの撮り方から学べるものが沢山あります。

料理は作ったらすぐ撮るのが基本

ーNana*さんの写真に写っているお料理やお菓子はいつも美味しそうですが、これはご自分で作られているんですか?

Nana*

ありがとうございます。自分で作っていますね。撮影用に料理を作る時には、気をつける点がいくつかあります。

生野菜とフルーツは特にフレッシュ感が大事で、カットしたらすぐに撮らないといけないですね。野菜だと、葉物は部屋が暖かいとすぐにしなびてしまうので、冬でも暖房をつけずに寒い状態で撮ることがあります。

他の料理でも、作ったらすぐに撮影するようにしています。変色したり、水分を含んだりして見た目が変わってしまう前に。料理は時間が経つほどに見た目の美味しさが損なわれてしまうので、作ったらすぐ撮るというのが基本です。

ー鮮度が命!作ったらすぐ食べる、食と通ずる点ですね!

思い立ったら、とことん追求する


ーこの写真って、まさかご自分でラテアートされているんですか?

Nana*

はい、器を撮りたいがためにラテアートを覚えました。すぐに出来るようになるものではなく、出来るようになるまで2年ほどかかりましたが。コーヒーで撮影するよりも、ラテアートがあった方が目に留まりやすいかなと思って。こうして器を紹介することで、作家さんも喜んでもらえたら嬉しいなとも思っています。

ー美味しそうなフードフォトを撮るにも、いろんな苦労があるんですね。それにしても、器に目を留めてもらうためにラテアートを独学で覚えるなんて、すごすぎます。

原動力は器への愛情

ーNana*さんの写真を見ていると、全体が落ち着いたフラットな明るさの写真、陰影の濃い写真など、作品によって雰囲気を使い分けているように感じます。これらの雰囲気や撮りたいもののイメージは、どうやって決められていますか?

Nana*

私が撮影するものの9割は、作家さんの作品です。自分でセレクトショップのお店を持っているのですが、器を中心に、木工作品、革小物などを置いているんですね。テーブルフォト自体、そういった作品の魅力を伝えるために始めたことです。料理が引き立つように、というよりも「器基準」で考えていることの方が多いです。どうしたらその器、作品が魅力的に見えるかを、いつも考えて撮っています。撮影時に限らず、作品をよく観察しているんです。そうすると、どういう光が当たった時に、その器が一番綺麗に見えるかとか、そういうことが見えてきます。料理を盛る場合にも、器が引き立つように盛って、撮影する。スタイリングもそれを基準に考えているので、なるべくシンプルに、過度な装飾をしないようにしています。好きなものはみなさん撮るのがうまいと思うんですけど、そういうことかなと。

私のお店では、好きなものしか扱っていません。自信を持ってお伝え出来るものしか扱ってないので、ものに対しての愛着が強くある。それが原動力になっていたりってことはありますし、やっぱり器の魅力を伝えたい、っていうのが大きいです。それに、それを仕事にしている、というのも、撮り方をここまで追求してこれた理由だと感じますね。それから、人に教えるようになったっていうのも大きいです。自分の写真は見本でなきゃいけない、ってプレッシャーが出来ました。

ー根本に、器をはじめとした、作家さんの作品への愛があるんですね。セレクトショップを経営されるだけでなく、よりよい発信の仕方を追求していった、というのがすごいです。

作品ギャラリー

まとめ

  • 立体感のある写真が良い
  • カメラよりレンズの方が重要
  • 歪みや遠近感がない方が望ましい
  • 歪曲収差の少ないものを選んだ方が良い
  • レンズは標準から、中望遠くらいがお勧め
  • 自然な見え方が大事
  • どの部分に視線を誘導するかを意識する
  • 生野菜とフルーツは特にフレッシュ感が大事
  • 冬でも暖房をつけずに寒い状態で撮る
  • 作ったらすぐに撮る
  • シンプルに、過度な装飾をしない

撮影機材一覧

  • 使用カメラ
  • 使用レンズ
    • ZEISS Planar T* F1.4 50mm
    • ZEISS Planar T* F2 35mm
  • 他、撮影機材
    • Manfrotto製品
    • パーマセルテープ
    • 練り消し
    • レリーズ

器への愛情が原動力

インタビューの始めでは、研究熱心で努力家の方という印象でしたが、話を聞いていくうちに、全てが作家さんの作品への愛に繋がっていることを知りました。惚れ込んだ作家さんの作品を魅せるために試行錯誤を積み重ねた結果が、いまのNana*さんの素敵な写真作品になっているのだと感じます。ありがとうございました。

by Nana*

私がテーブルフォトを撮る理由。Nana* | 写真家の機材

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