写真と生きる | IMA編集長 太田睦子 × 黒田明臣対談「写真のためではない写真」

May. 28. 2018

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アマナによるアートフォトビジネスブランド、IMAプロジェクトが刊行する写真雑誌「IMA」のエディトリアルディレクターである太田睦子氏と、ヒーコ黒田明臣氏による対談をお送りします。

太田睦子×黒田明臣 対談「写真のためではない写真」

黒田

今回の対談は、株式会社アマナイメージズに所属されている松野さん・平井さんとお話させて頂いている際に、「IMA」のエディトリアルディレクターである太田さんとお話したら面白いんじゃないかという話題があがりまして、「それは願ってもないお話です」とお願いしたところ実現していただきましたという経緯です。色々とお話したい事が沢山あります(笑)よろしくお願いします。

太田

よろしくお願いします。

黒田

自分が本格的に写真を学びはじめたのは2014年ぐらいからなのですが、その時からIMAは定期的に読ませていただいています。写真系の専門誌は色々あると思うんですけど、国内外の現代写真家の方々にフィーチャーしている写真雑誌って、なかなかIMA以外では見当たらなくて。貴重な情報源の一つでした。

太田

それは嬉しいです。ありがとうございます

プロジェクトとしての「IMA」

黒田

まず、最初にプロジェクトとしての「IMA」についてお伺いしたいです。自分がIMAに触れたきっかけって、先程お話したとおり雑誌からなのですね。単純に装丁も綺麗だし、表紙に関しても写真誌というよりはアートマガジンのような印象を受けまして。つまり、雑誌としてのIMAしか知らなかったんです。

しかしIMA ONLINEを拝見していると、「IMAプロジェクト」という形で、スクール系のコンテンツであったりとか、写真集制作など様々な活動を展開していますよね。同じコンセプトの元で展開されているんだと思うのですが、そのあたりについてお伺いできればと思ってます。

太田

正確に言うと、雑誌より少し先に「IMA ONLINE」を始めているんです。その後2012年の3月にゼロ号として「IMA Vol.0 2012 spring/summer LIVING WITH PHOTOGRAPHY 特集 写真集の現在」を無料配布(当時)しました。

私がそれまでのキャリアで雑誌に携わってきた経験では、普通は雑誌のダミー版と言われるゼロ号は、特集などのいくつかの記事はあっても、ほとんどのページは白なんですよ。

創刊前にどういうイメージの雑誌になるのかが伝わればいいので。しかし、その時に弊社社長が、「せっかく作るんだから雑誌の中は完全版を作ろうよ」と言い出しまして。「ん?それがどれだけ大変なことか分かってるのかな?」と、内心びっくりしたことは今でも覚えています(笑)

アマナが出版社ではないという事もあってできた、業界常識に左右されない素直な発想だったんですよね。

黒田

ゼロ号で全て作るとなると、それは結構なリソースが要りますね。

太田

そうなんです。しかも、それを言われたのが12月で、来年の3月には刊行するというスケジュールだったので。とはいえ、一応それぐらいのボリューム感であれば実現可能と判断して編集スタッフにも参加してもらいながら作りあげました。

普通ゼロ号はクライアントとか書店などの流通に見せて歩く事になるんですけど、そこもやっぱり普通の出版社とは違う考えでした。いわゆるプロモーションとして「無料で配布しよう」と。ポスター作ったり交通広告とか出さない代わりに、本誌を無償で実際に読者の方に見て頂こうということになったんですね。例えばTSUTAYAさんなどの書店にお願いをして、配布して頂いたりもしました。「配布されたの持ってます」と言ってくださる方には結構今でもお会いすることがあったりします。ゼロ号は何部配ったんだろう。

黒田

それ気になりますね〜。

太田

結構な部数を配ったんですよね。確か。何百とかじゃなくて、何千部という数を配ったんですよ。

黒田

はい。そうなんです。それで知ってくださったりとかした人も多く、配布の効果はリアルに実感できる手応えがありましたね。実際に創刊した時にも、「ああ、あの雑誌か」みたいな感じで買ってくださる方も多かったですし。そういう形でIMAの雑誌はスタートしました。

実際の創刊は8月で、4月ぐらいに先んじてIMA ONLINEを立ち上げてました。

ただ、IMA ONLINEはまた雑誌とは全然違うスタンスでした。どちらもコンセプトとしては「LIVING WITH PHOTOGRAPHY」という、もっと日本人の生活の中に写真をというテーマではあるんですけどね。

黒田

そうなんですね。そのテーマは、この連載のタイトルである「写真と生きる」にも通ずるモノがあるように思います。

IMA「ゼロ号」への想い

IMA Vol.0 2012 spring/summer LIVING WITH PHOTOGRAPHY 特集 写真集の現在
黒田

太田さんはIMAの雑誌を作る前から、アートとか写真を取り扱った雑誌をやられていたんですか?

太田

そもそもアマナでやる以前から、「アート雑誌を作りたい」と思っていたんです。前職であるエスクァイア時代にアート担当だった流れで、写真特集を何度か担当していまして。。ビジネスパートナーである上坂真人と一緒にアマナにアート雑誌を出したいと持ち込んだ時に、社長から「アマナは写真の会社なので、アートの中でも写真に特化したものにしてほしい」と言われてIMAが始まりました。

エスクァイアで働いている時に4、5回写真特集の担当をしたので、IMAを担当する事になった時にはこんな形で繋がるんだなあと感慨深く思いましたね。それでその過去の経験を反芻しながらゼロ号を作りました。

黒田

なるほど、経験が生きているんですね

太田

その時のアマナの考え方としては、日本のアート系の写真家は中々それだけでは食べていけない。アマナは40年近くコマーシャル写真の業界でやってきて、創業者が写真家出身だということもあり、写真に対する思い入れを持っているからこそ、「この状況を変えたい」という思いを抱いたんですね。日本には良い写真家がいっぱい居るのに、世界で存分に活躍できていないというのはおかしい、アート系の写真家たちがきちんと食べていける状況を作りたいという思いが根底にあります。

黒田

それは写真家からして本当に有難い事ですね(笑)

太田

アマナでは、IMAが始まる1年と少し前に「アマナコレクション」を始めてまして。若手を中心にアート写真を購入していくという、これは事業というよりはある種の芸術・文化のメセナ活動ですけれども。
今年8年目ですが、約800点ほどのコレクションになっています。さらに、プラチナプリントのアマナサルトもスタートしていた背景もあって。アート写真にまつわる様々な活動をスタートし始めていた時期だったんですけど、写真メディアはこんなに早くやる計画があったかどうかはわかりませんが、タイミングよくスタートすることになったわけです。

そもそも世界のカメラブランドの9割以上が日本企業ですし、カメラ愛好家のハイアマチュアの方もすごく多いんです。とはいえ、鑑賞する人はすごく少なくて、写真を買う人もごくわずか。CP+とかも大盛況じゃないですか。でも、若手の写真家展なんてなかなか観客が動員できないわけで。

そういう環境を変えていきたいという思いがあります。写真を撮る人のためのカメラ雑誌はいっぱいあるから、写真を見る人のための雑誌を作ろうと、それでスタートしたのがIMAなんです。LIVING WITH PHOTOGRAPHYというのは、創刊以来ずっと掲げてるポリシーなんですが、同時に「写真をゆっくり読む雑誌」というコピーも付けていました。

黒田

あ、それ見たことあります。

太田

はい。写真を読み解いてその面白さを知っていただくような雑誌を作ろうと思ってるんです。

実はIMAを創刊する、その少し前に遡るんですが、オランダにFOAMという写真雑誌があるんですね。その雑誌が日本にローンチしたいというので、その日本版の編集をしないかというオファーがありまして、私がフリーだったときに手伝ったことがあったんですよ。彼らも日本は写真好きな人が多いから、こういう雑誌いいんじゃないかと思ってローンチしようとしたわけです。

日本語訳の小冊子をインサートするだけでしたが、その編集を1人でやりまして、その過程でFOAMを何冊も読み込んだんですね。そしたらそれがすごく面白くていい雑誌なんですよ。こういうの日本で作りたいなって思ったんですけど、でもアートフェアでは思ったほど売れずに、日本では時期尚早といった感じになってしまった経緯がありました。

あの頃はFOAMみたいな雑誌が日本にあったらいいなぁと思ってたんですけど、結果的に自分で作ることになったというのも因果ですね。

黒田

なるほど。それはまさに点が繋がった瞬間ですね。導かれているような感じすらします(笑)

太田

そうですね。エスクァイアでも写真特集の担当をしていました。FOAMをやるということも偶然の流れで、その後アマナで写真雑誌を立ち上げることになったわけですから、過去15年ぐらいの間の活動すべてが、ゆるやかに「今」に向かっていたという感覚ですね…。

黒田

本当そうですね。今お話お伺いしてる中で、いろいろ気になっていたところが勝手に解決した部分もあるんですけれど。想像していた成り立ちやポリシーがお話から伝わってくるので、ものすごい納得感があります。「LIVING WITH PHOTOGRAPHY」というテーマからも分かるように、撮る人ではなく写真を読む人向けの雑誌だなあというのはすごい感じていて。まさにでしたね。

その点はあとでもまたお伺いしたいんですけども。

イベントの必要性

太田

当時、ビジネスパートナーの上坂も自分も、今のこの時代に、紙の雑誌だけでなく、オンラインと紙と、もう1つ、絶対にリアルに体験できる場所がないとダメだと考えていました。なので、元々雑誌ウェブサイトイベントというのは3本柱でやるつもりでスタートしたんですね。

キャリアのスタートはサントリーだったんですが、7年ぐらい広報、PRの仕事をやっていました。そのときに広報誌の編集の仕事に関わる前には、PRイベントをやったりしたんですね。普通、編集者としてはあまり経験しないことかもしれませんが。

それともう一つ、ちょうどIMAを立ち上げる前の年かな。「ハーブ&ドロシー」というドキュメンタリー映画がありまして。アメリカ人のアートコレクターの老夫婦の話なんですけど、ひょんなことから日本での自主配給をお手伝いすることになりまして。映画の配給とかやったことないし、映画業界にもちっとも詳しいわけじゃないのに、監督の熱意に感化されて、無謀にも。

黒田

えええー!人の良さが極みに達してるじゃないですか!

太田

それが、本当に良い経験だったんです。

例えばパンフレット作るとか、そういう紙ものの編集を手伝うとか、PRを手伝うくらいはできるかなと思ってたんですよね。ただ、映画の配給はそれだけじゃないんですよね。素人4、5人で、試写会イベントから、クラウドファンディングから、取材対応から、スポンサー集めから、カタログ制作から色々をこなしていきました。かなりきつかったんですが、それをやっている中で、今まで自分が仕事をしてきたことの集大成のように感じたんですね。
その映画は結局すごく大ヒットして!初日に映画館の前に行列ができるほどの大成功だったんです。

黒田

なんと!しんどい思いが実った瞬間ですね。集大成素晴らしい。

太田

それまでしばらくずっと編集者で、紙の編集だけやってきたんですけど、そういうイベントを経験したときに、リアルの場の強さを改めて実感しまして。

佐々木芽生監督という方なんですが、トークショーを始め、何から何までものすごいエネルギーで一生懸命やっている姿を目の当たりにして、これからの時代、一つの大きな目標に対しては、様々な活動を複合的に組み合わせてやることが大切なんだなと実感しました。

話を戻しますと、こういった経験から、日本においてすごく小さなアート写真のマーケットに対して雑誌を始めることは、非常に「難しいだろうな」ということを肌身にしみてたんですね。だからこそ、紙とオンラインとイベントを組み合わせて、バランスよくやっていこうと。普通に考えて、しかもこんな贅沢な仕様の雑誌がペイするわけは絶対ないんで(笑)。

黒田

それ本当にそうです(笑)、絶対元取れないんじゃ?と思ってました。

イベント風景

紙へのこだわり、作家の世界観を尊重するということ

太田

しかも、2012年というデジタル化が加速する時期に、紙の雑誌をあえて創刊することは、無謀な挑戦のように受け取られたと思います。

でも写真雑誌である限り、紙にプリントするという行為はすごく重要なことだと考えています。例えば情報誌だったら、もはや紙はいらない、オンラインだけでいいという判断があったかもしれないんですけど、デバイスによって変化してしまったり、質感が均質化した環境で見てもらうのではなく、作家が見てほしい最終形に限りなく近い状態で読者に届けることを大事にしたかったので、紙に絶対のこだわりがあったんです。さらに写真にとって、写真史の観点からも「雑誌」という形態の持つ意味は特別です。
だから、IMAでは、作品によって紙を使い分けるということを創刊以来ずっとやってるんです。たぶん皆さん、紙がちょっと違うなっていうのは理解してくださってると思うんですけど、実は10数種類の異なる用紙を使ってるんですね。

黒田

そんな多いですか。豪勢だな〜とは思ってましたけど、そんなに。

太田

そうなんです。例えば同じ銘柄の紙でも、ホワイトとナチュラルという違いだけでも印象が大きく変わりますし、人はそれを敏感に感じるもので。

黒田

なるほど。読んでいて写真家を非常に大切にされている雑誌だなという印象がありました。いまは自分も写真を撮るので、やっぱり撮ったものを掲載していただくのであれば、紙にもこだわりたいですし。先ほどおっしゃられていたみたいに、デバイスの透過光で見られるということは、その時点でモニターのキャリブレーションであったり色の違いであったりとか安定していないというか。ただ、それが紙であれば、紙の時点で写真作品としてアウトプットになるじゃないですか。読む環境は異なるでしょうけど、そこも含めて作品と言える。そこまで非常に考えられているんだなというのは読んでいて感じる部分でしたね。実際にこういうお話があって、非常に納得です。

太田

雑誌は読み捨てるという感覚もあるとは思うんですけど、なかなか写真集をいっぱい買える人はいないと思うので、家に取っておいていただけるような、雑誌と写真集の中間ぐらいの存在になれたらと考えています。

IMAを1号買えばダイジェストみたいな形で、いろんな作家の表現を20人ぐらいは知ることができて、その世界感も紙で表現されている。写真家が、プリントや写真集でやろうとしてることを、なるべく雑誌も伝えられるようにと考えていて、誌面で作品を紹介するときは、いつも掲載フォトグラファーの写真集も必ず入手して、そこで使ってる紙とか色味に限りなく近づけるようにしてます。出来る範囲ですが。

黒田

作家の世界観をできるだけ解釈した上でということですね。

太田

はい。どうしてこの作家がこの写真集でこういう紙選んでるのか。ADと一緒になるべく汲み取っていくようにしてます。

黒田

なるほど。「そこまでやられているんだ」と感じると同時に、それも納得というアウトプットですよね。10数種類使われてるという時点で、それなりの哲学があるのだなとは想像していました。作家さんの世界観についても、ある種IMAが解釈をしていくことで、新たなアートじゃないですけど世界観を構築しているともいえるのかなとも感じます。

太田

実際に見て触って「この紙とこの紙は違いますよね」と明確に認識しながら読む人はいないと思うんですけど、
人間の感覚は鋭いので、なんとなくこっちのページはちょっとレトロっぽい雰囲気が伝わってくるなとか、ここはすごくコンテンポラリーな感じがするなというのは、紙からも情報として絶対伝わっているはずなんです。だからそこを疎かにせず、人間の感覚を見くびらずに丁寧にやりたいなと常々考えています。質感のザラっとした感じだとか、光沢があってテカっとしている感じとか。そういう感覚は五感を通して記憶に残っていくと思うので。

アート写真とは

太田

いわゆるアート写真、作品として制作されているものは、商業誌で撮られる写真と違って、かなりの長い時間をかけて、数年や数十年という単位で作家が創り上げているのも多いわけです。IMAではそういう作品を紹介させていただくので、旬に流されずやっていこうという意識もあります。
ですからなるべく陳腐化しないような内容で、いわゆる情報的なものはオンラインでやればいいと思っているので、極力誌面にはいつ読んでも古びない内容で、あとになって見た時にと写真史の一時代をきちんと記録していたことになるような、そういう雑誌にしたいなと思っています。

黒田

なるほどなるほど(笑)、お聞きしたかったことを先に言われてしまいました(笑)。

太田

ああそうですか。すいません(笑)

黒田

いえいえ、まさに感じていたことなので、嬉しいです。こうなのかなと思っていた部分がビンゴで返ってくるので。びっくりしました。こういうことは多いんですけど。

実は、まさに2つ思っていたことがあって。1つは紙をはじめとするこだわりの部分です。写真って批評家の方とかエディターの方もそうだと思うんですけど、写真として特集する以上は言語化しないといけない領域があるとも思っていて。それはメディアという媒体としてある以上、必要ですよね。それを美術館のステートメントであったりとか、作家さんの作るステートメントかのように、すごい真摯に言語化されているなあというイメージがある一方で、IMAを拝見していて言語化されていない部分を非常に尊重されているなと肌感覚で感じる部分がありました。

それは紙のこだわりもそうですし。まさに五感で感じている部分を非常に大事にされていると感じた点が理由です。

もう1つ。読んでいて、先ほど写真集と雑誌の間みたいなお話がありましたけど。陳腐化しないですよね。自分が読んでいて1番感じたのは、これはたぶん10年後に家に置いてあったら、ある種の写真史になるのではないかなというのを非常に感じていました。特にコンテンポラリーな写真家の方を、国内外問わず特集されている印象があるんですけど、それを例えば20年後に見て、当時特集されていた誰々が巨匠になりましたという段階で、IMAのスタイルで特集されている記事を見返すと歴史書のような感覚を覚えるのではないか?と思うんですね。それが先ほどおっしゃられていたような、写真家が残そうとしているものを同じように残そうとしているというところにも繋がっているのかなと非常に感じています。「やっぱりそういう意識なんだ、良かった」というのがフォトグラファーとしての素直な感想です。

写真のための写真ではない

太田

IMAを始める前と始めてからしばらくは、私も体系的に写真を勉強したわけではなかったので、しばらく東京都写真美術館の図書館に結構通ってですね。何時間もいろんな写真集や資料を閲覧しまくりまして(笑)

それですごく、過去の印刷物から自分が学べることの大きさをあらためて痛感しました。
編集者としてアートの紹介に関わってきて、アートは分からないとか難しいとか言う方も多いんですけど、自分と同時代に生きている作家たちが、同じ世界で何を切り取っているのか。写っているものが真実だという意味ではなく、彼らが何を見て、何を考えているのかということを、写真というメディアを通して追体験すると考えれば、面白いと思うのです。それをきちんとビジュアルと言葉で伝えたいなと思っています。
ただ、写真を論じるとなると、その世界の人たちだけがわかる言葉で内々に向けて語っているような印象も強いんじゃないでしょうか。でも、「私たちには関係ない」と思われるのは残念だなと。

黒田

それ、ありますね。

太田

写真を見慣れない人にとっても、伝わる面白さに変換したい。だから写真の裏にある歴史や背景、作家の意図を丁寧に紐解いていくことを心がけてます。どの写真に写っているものも、いまこの時代を生きている私たちに何かしらの関係があり、関心が持てるはずのものなので、その接点を見出して、伝えたいと思います。

黒田

そうですね。自分なんかは、つい最近まで写真業界の人を外側から眺めている気持ちだったのでよくわかります。写真論であったりとか、自分が写真始めてから比較的早い段階で大先輩の方々と知り合ってお話する機会があったので、いろいろお話聞いていて、難しいなと思ってたんです。

なんかこう皆さん色々考えられているんだなと。そう考えると軽々しく写真撮ってるとか言うのも失礼な気がしてきちゃって。いまは大分考えの整理がついたのでまた違う形で見れるんですけど。

写真に限らず、クリエイションはなんでもそうだと思うんですけど、誰かが作ったものじゃないですか。必ず作り手がいる。写真って非常にイージーであるがゆえに、ただ撮るという点でいえば誰でも撮れるので、比べてしまいがちなのかもしれませんが。素直にアウトプットに対して、何故この人はこのように撮ってまとめたんだろうと思いをはせると、それだけで面白くなるんですよね。

それは別に理解が正しい正しくないとか気にせず、ただ感じたとおりにそれを読む。いろんな意味で読む、見るだけでももう楽しいと思います。

太田

誰が読んでも面白いように、分かりやすい言葉で、あえて写真の評論家ではない人に書いてもらうというのを課していたときがありました。例えば映画監督だったり、脳科学者だったり、小説家やテクノロジーの専門家に書いていただいたり。異ジャンルの人に解き明かしてもらうということには、わりと力を入れて、やってきました。写真のための写真論にならないように。

写真というメディアの強みの一つでもあり、ある意味で軽視されてしまう理由の一つでもあるかもしれませんが、様々なジャンルと繋がれるという特性があります。

ファッション、建築、ドキュメンタリー、食、自然などありとあらゆるジャンルと、写真は繋がっています。だから、雑誌でもイベントのトークの企画でも、それらのジャンルの人たちと写真とのブリッジを架けるということに、特に力を入れてきました。

黒田

それはおもしろいですね!

太田

毎号の特集テーマも、今活躍している写真家の人たちを自然に集めていくと、時代の何に直面しているのか、関心を持っているのかがおぼろげに見えてきます。前回、「立体化する写真」という特集だったんですけど、なぜ複数の写真家たちがそういう表現に向かっているのかと考えると、時代を映す一つの鏡のようになっている。写真や写真家たちを通して、時代や世界や社会に向き合うことになります。

黒田

確かに。先程の歴史の話もそうですが、見ていて感じる部分があります。

これは自分の考えなんですけど、写真という存在自体が非常にメディア的だと思っていて。媒介するものというか。全てが真実とは言わないまでも、どこかにリアルが写っている。様々な異ジャンルで使用されている媒体なんですよね。お話を伺って思い返してみると、つい最近の号でも、映画監督が撮る写真といった特集をやられていますよね。デヴィット・リンチってこんな写真上手いんだ!と驚きました(笑)、映画は多少近い世界ですが、たしかに異ジャンルですね。

実は、自分の中に残っている素人的な感覚からすると、IMAを読んでいても、これは高尚な雑誌なんじゃないかという意識があったんですね。オレなんかが読んでていいのだろうか?って(笑)

しかしそう思いながらも読み続けられたというのは、根本として一般感覚に寄り添ったポリシーの上で制作されていたからなのかなと思いました。それこそ太田さんや皆さんの意思があったからなのかなと、お話を伺っていて思いましたね。写真のための写真じゃないというのがすっと入ってくるキーワードです。

アート写真の流通

黒田

少しトピックは異なりますが、自分がこの世界に入って課題に感じている部分がありまして。国民性が理由なのかどうかわかりませんが、例えば無名の写真家が展示をやるとなった時に、そこそこのメディアで告知されていたとしても集客はあまりよくありません。例えば我々の友人フォトグラファーが展示をするとなっても、来場者の殆どは友人だったりします。

では日本人がアートや写真に関心がないのかというとそういうわけではなく、フェルメール展やりますとなったら、数時間並んだりするわけですよね。これは日本人を象徴している現象だと思っていて。我々は、アートに対する感覚もあるし、好きだと思うんですけど、行動にうつすにはある程度の権威がないといけないのかなと思ってしまいます。

販促のされ方や個々人のアンテナの貼り方など色々課題もあると思うんですけど、IMAのコンセプトとしては、一般の方向けの写真雑誌ということで、このあたりの課題感はどう考えていますか?

太田

IMAプロジェクトでは、海外で展覧会も何度か開催しています。例えばPanasonicの特別協賛による「LUMIX MEETS BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS」という活動は今年で6年目。LUMIXのカメラで、若手の日本人写真家を支援するというプロジェクトです。

黒田

オリンピックの年ですもんね。

太田

これは6人のフォトグラファーをIMA編集部が選んで、パリ、アムステルダム、東京の3都市を展覧会が巡回します。若手の人たちを海外に紹介していくためのプロジェクトです。

日本には、アワードは多数あるんですが、それを獲ってもなかなか出口が見つかりづらいですよね。

黒田

そうですね。キャリアにつながっていくイメージをもてるのは新世紀ぐらいでしょうか。

太田

作家の方が作品を売っていくためには、海外のマーケットの方がが圧倒的に大きいので、海外で展示をすることが重要だと思っているんです。

実際、パリやアムステルダムで展示を行うと、無名にもほどがある、日本人すら知らない若手の写真家が展示しているのに、結構な人数のお客様が見に来てくださるんです。逆に日本では、他の2都市に比べると来場者が少ない。

日本人は無名の人の展覧会にはなかなか来てくれないんです。海外の人たちは知らなくても、熱心に見て、作家に対して質問をしてくれます。その理由を聞いてみると、「見たことないもの、新しいものを見たいんだよね」って言うんですよ。

でも日本は逆で。すでに知っているものを確認に行きたがるというか。アートに接する動機が日本人と欧米人って真逆なんだなぁと痛感しています。でも、そろそろ日本人も新しいものを見たいなというマインドに切り替わってくるんじゃないかなと期待しています。

しかも、欧米ではこの初見の若手作家たちの作品がちゃんと売れるんです。価値もまだ分からない作品を買うって、日本人の感覚だとなかなか怖くてできないじゃないですか。でも、彼らは「価値は自分たちが作る」と思ってるんです。自分がいいって思って買ったんだから、それに対する価値はあとからついてくるんだと。

黒田

まさにそうですね。

太田

この点においては、やっぱりそれは私たちのメディアとしての啓蒙が足りてないなとも思います。
例えば昔は、ワインは高い、味がよく分からない、手に入りづらいと普及するのにかなりの時間を要しました。でも第何次かのワインブームを経て、流通も整い、レストランから居酒屋さんまでも飲める場所が増えて、価格のバリエーションも揃って、雑誌でもワイン特集が組まれてと、情報もすごく増えました。色々な段階を経てようやく一つの物事に対するリテラシーが上がっていく。アートに関してはまだそのステップがいくつも残っているんだと思います。

黒田

なるほど、確かに。すごく勉強になります。インパクトが何かあれば。アートブームじゃないですけど、アート写真ブーム…いくつかはあったんだろうなとは思うんですけども。

まだまだ超えなければいけないステップがいくつかあるんでしょうね。自分自身も買うという感覚があるわけではないので。

先日、世界的にも著名なバレエダンサーの方を撮影する案件があったんですけど、お話を聞いていて興味深い話がありました。その方は10代から海外でご活躍されていて、最終的に歴史的バレエ団のプリンシパルになるんですけど、その立場でありながら、「日本人はどんどん海外に行きたがるけど、確かに海外に行くのは正解なんだけれども、できれば日本に残って日本なりのアート感を模索して欲しい」というようなことを言っていました。日本人は多くのバレリーナを輩出していて、素養はあると。しかし杓子定規に海外へ行くのが正解と考えずに国内で文化を築いていかないとセンスは育たないということだそうです。もちろんいまはヨーロッパのセンスには敵わないけどその海外に流出する限りその構図は変わらないというか。

それを聞いて、これは何事にも言えることなのかなと思いました。我々はけっこう欧米コンプレックスがあると思うので。アート分脈全般においても同じことを言えるかなと感じています。

太田

そうですね。IMAプロジェクトのスタート時期はタイミングが良かったと思うのは、雑誌としてはデジタル化が進んでいってるということが、一見アウェイのようにも見えるんですけど、全然そんなこともなくて。

作家の人たちは、日本のマーケットの中では活躍の場が少ないんですけど、インターネットやSNSの恩恵で海外とのコミュニケーションがスムーズになり、グローバルのマーケットにアクセスできる機会は確実に増えているんです。若手日本人写真家で海外で評価される人たちが増えているのは、デジタル化やインターネットのおかげだと思います。

そういう時期に、すごくいいタイミングで写真の雑誌を始められて、彼らと一緒に成長してきてる実感があります。これが10年早くてもダメだっただろうなと思うし。そういう人たちがどんどん増えていくと状況も変わっていって、逆輸入的に日本でも人気が出てくるかなと思っています。

黒田

日本の方でも海外でギャラリーとかで評価されてたりとかするみたいですね。自分の知り合いでも海外のギャラリーと提携してて、展示されている方もいらっしゃいますし。われわれの耳には普通に生活していると入ってこないところでも、いらっしゃるんですよね。

お話をお伺いしてると思ってる以上にそういうところに進出している人たちがいるんだなという印象です。ほんと知らないことだらけで楽しいです。

インターネットと写真雑誌

黒田

IMAの場合はインターネットをポジティブに使うという要素も先行していたように感じます。最初からウェブメディアをローンチしている点もそうですし、雑誌とウェブのほうで取り扱うコンテンツも住み分けている。紙では残っていいものを残して、ウェブに関してはもう少しニュース的な賞味期限の短い情報を定期的に更新していったり。使い方が従来の価値観にとらわれていないというか、思考停止していないですよね。

ある資源をどうやって効果的に使っていくかといったところを、有効に実現しているようなイメージがあります。それはやっぱり太田さんのPRをはじめとした複合的な経験がIMAプロジェクトという複合的なアウトプットへと、上手いこと繋がってるんでしょうか?

太田

そうです。たぶん私が写真オリエンテッドでも、写真ドリブンでもないからですかね。ほかのことをやってきたというのが大きいと思います。

黒田

写真でずっと来ていたら、もうちょっと視野が狭くなってしまったというか。ある種の専門家になってしまうと、その道でしか考えられないというのはよく言われる話ですが、全くそういった傾向はありませんね。

太田

そうですね。別に写真の業界で失うものもないですし。

黒田

オフラインのイベントもあって。ニュース的なトレンドは親和性の高いインターネットという媒体で押さえつつ。紙として残るもので陳腐化しないアウトプットを出し続ける。ものすごくバランスが良いですね、勉強になります(笑)

太田

すごくコアなアート写真のファンの人たち、カルチャー全般が好きな人たち、写真にも興味がある人たち、さらには全く興味のない人たち。それぞれだけにフォーカスせずに、少しずつ広げていかなきゃと考えてきました。

その一つの現れとして、創刊当時からイベントにはエネルギーを注いできました。トークイベントはもちろん、森山大道さんのシルクスクリーンのワークショップとか、ライアン・マッギンレーの撮影イベントとか、マーティン・パーのレストランイベントとかいわゆる体験型イベントです。誰でもカジュアルに楽しめるイベント。例えばライアンの時は、いわゆるアート写真のコア層だけではなくて、カルチャー分脈のスケーターみたいな男の子たちが来てくれるイベントでした。マーティン・パーは食のイベントとして楽しむ人たちもいて、写真と食の意外な接点を発見をしてもらうようななこともあったり。一見俗っぽく、アートの文脈からすると邪道と思われるようなこともどんどんやっていかないと、壁は壊せないなぁと。

黒田

日本人はアカデミック好きですしね。

太田

もちろんアカデミックな活動もすごく重要なんですけど。同時に、様々に写真を理解するやり方を試さなければ、状況は変わらないですし。

言語化することの大切さを様々なジャンルの方たちにお願いしてきた一方で、やっぱり言語化しきれないからこその写真の素晴らしさをイベントや展示を通して、写真言語でやり取りしている側面もあります。

黒田

なるほど。すべての取り組みに思想がありますよね。もっと写真を見て楽しむ層に届くように我々フォトグラファーも取り組んでいかなければと思います。

アサインメントワークから写真家に還元する

太田

雑誌とイベントとオンラインと写真集のメディア事業をどうやって成立させているかというと、IMAのもう一つの側面に企業との取り組みがありまして、例えばブランドブックの制作だったり、イベントだったりするんですが、アーティストにも参加していただいてます。

アートを媒介にしたクライアントワークをして、自分たちは事業を成立させていってるし、アーティストの方たちにもきちんと利益が循環して作品が作れるようにという仕組みづくりをやっていきたいと思ってます。

黒田

そうなんですね。表に出ているIMAとは違うので意外ですが、筋の良い取り組みですよね。写真家に還元されているわけですし。

太田

アートと企業と結びつける媒介役は、創刊すぐから少しずつやっていたんですが、最初は、日本企業はほとんど関心を示してくださらなかったんですが、海外のハイブランドは本国がアートとの取り組みに熱心な企業が多いので、割とすぐにコラボレーションがスタートしました。

黒田

すごくおもしろいと思います。

太田

この6年7年近くで色々な取り組みをしました。

黒田

そういった取り組みを実行できるコネクションと人的資産があって、企画力もあると。

太田

抜けだらけですけど。ようやくかたちになってきてる感じです。

黒田

それは太田さんの戦略なんですか。

IMA CONCEPT STORE

太田

1番最初にスタートしたときは、イベントと雑誌とウェブという3つでどうにかなると思ってたんです。でも実際にはどうにかならなくてですね(笑)

そんなに甘くはなくて。ただ1つ、いい意味での誤算だったのが、IMA CONCEPT STOREをオープンしたことです。当初、スペースを持つということは考えてなかったんですよ。イベントは借りた場所でやるつもりだったんで。しかし結果的に自社のスペースを持つことになった。

ギャラリーとカフェとブックストアの運営は初めてのことだったんで、苦労しました。イベントを年に200回以上、展覧会もやって、写真集を制作し、本を売ってということを繰り返してきたんですね。本当に難しいチャレンジだったんですけど、現在に繋がる貴重な経験になりました。

太田

やがて、ブランドブックの制作やイベントやパーティの企画、アーティストとの撮影といったクライアントからのお仕事が増えていくようになりました。自分たちがB to Cで発信していることをB toBで企業に評価していただけているようなわけです。この循環は、最初から思い描いていたわけではなかったんですが、一昨年ぐらいからようやく、こういう風に回っていくんだなというのが見えてきました。暗闇の中を手探りしながら、ようやく、です。

黒田

でも結果的にこの形を見出すことができたと。いいものを作っていれば、それがわかる人には強い需要となるんですね。アウトプットを妥協しないという一貫性があったからでしょうね。

太田

いまはメディアとしての発信とクライアントワークが、うまく循環している状況です。

黒田

理想的です!

太田

そうですね。アーティストに還元できていることも少なからずあると思うので。

黒田

あると思います。特集で季刊誌として毎号20人写真家を紹介していますとなったら。アーティストもどんどん循環していきますよね。本誌に留まらずアーティストが写真を生かす道を提供しているわけですから。数ある写真専門誌の中でも特異なレイヤーを担われているのかなと思います。取り扱う写真にも活動範囲にも国境がないですし。

仕込まれていたAR

太田

話は変わりますが、今力を入れているのが、デジタルとの融合なんです。雑誌は2号目からずっとARを組み込んで、2年ぐらいやったんですが、ご存知ないですよね。

黒田

え(笑)、どういうことですか。

太田

雑誌の表紙と中ページに実はARが組み込まれてて、表紙のイメージが動いたり、中のページもアザーカットが見られたり。

黒田

えええー、そうなんですか。

太田

そうなんです。IMA ARARTというアプリがありまして。

黒田

全然知らなかった。

太田

去年、IMA ONLINEでは記事に力を入れたので、PVも伸びました。これからウェブマガジンとして一層注力していくつもりだったんですが、
作家インタビューとか展覧会のお知らせはいいんです。さらに、IMAGRAPHYという作家の人たちのプロフィールもあるんですが、こういうアーカイブ的なものは検索もできるし、ウェブは雑誌以上に親和性が高い。すごく特性を活かしていいと思うんです。
去年は、IMA ONLINEの中でIMAGRAPHYというコーナーも作ったんですよ。

黒田

ありましたね。ギャラリーみたいなやつですよね。

挑戦していくメディア「IMAVISION」

太田

作家の人たちに、1カ月間、平日に1枚ずつ作品をアップしていってもらうという試みなんですね。

黒田

そういう試みだったんですね。雑誌では絶対に無理なペースですね。

太田

そうなんです。

黒田

拝見はしてましたけど。

太田

実はこれによってPVも伸びて、結構見てくださる方がいらっしゃって。作家の方もなかなか自分のサイトに人を呼ぶのって難しいけれども、IMAに訪れてくださった方が、たまたまここから知って自分のサイトに飛んでくれるみたいなケースもあると思うので。作家の方にとってもいいショーケースになっていると言っていただいてます。

そこからさらに飛躍するためにスタートするのが、IMAVISIONです。ムービー作品をデジタルメディアに最適な形で、ゼロから作家と一緒に作っていく取り組みです。ここでデジタルにしかできない新しい表現を作家の人たちが見つけてくれるといいなと思っています。

プリントや写真集で作家が伝えたい作品の世界観やコンセプト、美しさは、雑誌でできる限り表現しようと頑張ってきました。今度は、ウェブサイトを1番最初の発表媒体だと考えたときに作られる作品はどんなものなのかやってみようという試みなんです。

黒田

おお、スクラッチで作品として動画制作している国内メディアは知らないですね。海外だとみなくはないですけど。

太田

たぶん作家の人たちも、ムービーやってみたいなと考えている方もいらっしゃると思うんですけど、展覧会とかでもない限り、なかなか制作の機会や発表の場がないですよね。

でも発表の場がすでに約束されていたら作れるんじゃないかなと思って。今年は特に力を入れたいと思ってます。

黒田

それは作家としては嬉しいお話だと思いますけどね。ゴールがあるっていうのは相当心強いです。

太田

そうですね。さっきのBEYOND同様、出口を考えながらやらないと、作家の人の努力が無駄になってしまうので。

黒田

それでウェブに載るわけですからね。それでしたら残りますし。

太田

若い作家の中に縦位置でヴィヴィットな味の作品を作っている人が少なくないのは、デジタルデバイスの影響も大きいと思うんです。だから、最初の発表媒体によって、生まれる作品も変わるはずだろうと。

黒田

アウトプットが分かることで作品の方向性が変わる。

太田

アウトプットに適した表現というのを作家は考えられるはずなので、新しい領域に一緒にトライしたかったんです。

黒田

いいですね。IMAVISIONに関しては当面動画がメインっていうかたちになるんですか?

太田

そうですね。

黒田

写真とか静止画ではなく。

太田

そうですね。GIFやアニメーションみたいな人もいるかもしれないし、何をその人が表現したいかによりますけど。

黒田

確かに、シネマグラフじゃないですけど。

太田

そこで何ができるのかは、まだ私たちも始めたばかりの未知数なんです。新規のムービー作品と同時に、インタビューなどもムービーを増やしていこうかなと思っています。エディトリアルムービーでアートの世界を見せてくということとアートムービーとの両方を発信していきます。

黒田

確かに。インタビューも親和性高いですね。作品としても、デジタルネイティブ、ウェブネイティブな作品というのはこれまでの歴史を振り返っても変わってくると思います。そういったチャレンジ精神やトライを社会に対して繰り返している点が、いつまでも瑞々しいメディアでいるための秘訣なのかなと勉強になりました(笑)、ヒーコも頑張ります。

本日はお忙しい中、長々とありがとうございました!

太田

いえいえ、こちらこそありがとうございました。

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プロフィール

太田睦子

1968年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、サントリー広報部、『マリ・クレール』編集部を経て、『エスクァイア』『GQ』などでアート、写真、文学、旅、ライフスタイル、食などのジャンルを担当。その後、フリーランス編集者として、雑誌や単行本の編集、アートプロジェクト、美術館のカタログ制作などに携わる。2012年にアート写真雑誌『IMA』を創刊。エディトリアルディレクターとして、雑誌・ウェブサイトIMA online・写真集IMA Photobookの他、東京・天王洲の『IMA gallery』での展覧会を手がける。

クレジット

制作​ 出張写真撮影・デザイン制作 ヒーコ http://xico.photo/
カバー写真​ 黒田明臣
出演​ 太田睦子
Biz Life Style Magazine https://www.biz-s.jp/tokyo-kanagawa/topics/topics_cat/artsculture/

by Akiomi Kuroda

写真と生きる | IMA編集長 太田睦子 × 黒田明臣対談「写真のためではない写真」

May 28. 2018

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